多くの国はウィズコロナ政策へ
インドネシア経済では好悪材料が混在か?
提供元:アイザワ証券
日本を含め、各国でコロナ対応のために実施していた規制が緩和されつつある。完全に収束したわけではなく、国によって対応は異なっているが、様々な国内外の往来規制を緩和するなど、各国はおおむねウィズコロナに転換しつつある。
アジア新興国の中で前向きな方針転換が目立つ国が、インドネシアだ。10月3日に、ジョコ大統領は「インドネシア政府は、まもなくコロナ収束宣言をするだろう」と、収束宣言の発出を示唆した。一時のひどい感染状況からみれば、大きな変化といえよう。
とはいえ、インドネシアの経済状況が決してバラ色というわけではない。10月20日に開催された金融政策委員会では、8月、9月に次いで、3会合連続の利上げが発表された。直近の急ピッチな利上げは、今後インドネシア経済が安定成長を目指していくうえで、足かせとなる可能性がある。また、前月9月のCPIは5.95%と、2015年以来約7年ぶりのインフレ水準となった。インドネシアの経済は構造上、GDPに占める個人消費の占める比重が50%強と他国に比べても高く、直近の利上げ、CPIの上昇は、中長期的にインドネシアが安定成長を目指していくうえで、悪材料になりうると思われる。
このように、不安材料を抱えているインドネシアだが、前向きな話もある。最も大きいのが「首都機能移転計画」だ。この計画は、インドネシアの首都機能を現在のジャカルタから移転させる、という壮大な計画で、2024年には移転を開始、同国の建国100周年目にあたる2045年に移転を完了させることを見込んでいる。最初に計画が発表されてから国内外でコロナ問題が拡がったため、当初計画よりスケジュールがやや遅れているが、具体的なインフラ投資案や投資見積額が発表されるなど、プロジェクトは確実に進みつつある。
移転先として予定されているのが、カリマンタン島東部に位置する「ヌサンタラ」で、今後、周辺地域で新しい都市機能や都市インフラの整備などによって、旺盛なインフラ需要が期待される。特に、この「ヌサンタラ」周辺は現時点ではほとんど未開の地で、今後の開拓余地がかなり大きい、という点も評価できる。
なお、22年6月には、中東UAEが同プロジェクトへ投資する用意がある、と発表した。一旦出資を表明したあと出資見送りを表明したソフトバンクなどの例もあるが、大口投資家からの関心は高い。今後、世界経済がコロナ前の水準まで回復してくると予想されるなかで、さらに世界からの投資が増えてくると予想される。
また、首都機能移転計画のほかに、インドネシアで注目度が高まりつつあるのが、今年11月にインドネシアで実施が予定されているG20サミットだ。ここ数年開催されているG20などの結末をみるかぎり、大きな成果が出るとは考えにくいが、主要な政治イベントとして注目される。
このたびの会合の議長国であるインドネシアでは、会合に向けて準備が着々と進められている。そのひとつが、会合でのEVの活用で、直近は、会合で使用するオフィシャルカーとして、トヨタから143台のEVが納車された。インドネシアはEVの利用によって、脱炭素の取り組みを世界にアピールしていく方針だ。G20での世界へのアピールを機に、今後、インドネシア国内でもEVシフトの流れが本格化してくると予想される。EVの効果は現時点では未知数だが、インドネシアの経済成長を後押しするプラスアルファ効果が期待できそうだ。
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