マネ部的トレンドワード

せんべいとチョコを発売

コオロギが地球を救う? 無印良品の昆虫食が生まれたストーリー

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これからの市場を盛り上げそうなトレンドについて深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。フードテック編3回目の本記事では、無印良品が展開する「昆虫食」を特集する。

フードテックの1つとして、にわかに脚光を浴びているのが昆虫食だ。昆虫食とは、最新の加工技術を使って、これまでほぼ口にしなかった昆虫を食べること。なぜそんなことを行うのかといえば、昆虫は良質なタンパク源であり、未来の食料危機や環境課題の解決につながると考えられているからだ。

世界で昆虫食の開発が進んでいるが、日本でいち早く商品化を実現したのが無印良品だ。同社は「コオロギせんべい」と「コオロギチョコ」を発売。ニュースでも数多く報道された。

同社の昆虫食はどのようなもので、なぜ商品化に至ったのか。良品計画 食品部 菓子・飲料担当の関根千晶氏に話を聞いた。

反響がよく欠品も。コオロギを使った2つの商品とは

まずは無印良品が展開する昆虫食商品を見てみよう。最初に出たのが「コオロギせんべい」で、2020年5月に発売された。

「食用コオロギをパウダー状にしてせんべいに練り込み、焼き上げています。コオロギパウダーはエビのような風味があり、焼くとさらに香ばしさが増すのが特徴。私たちにとって最初の昆虫食の商品であり、そこに込めたメッセージをきちんと伝えたかったので、あえて他の味を入れず、コオロギ中心のシンプルな配合にしました」

関根氏が口にした「この商品に込めたメッセージ」は後述するとして、無印良品から出たもう1つの昆虫食が「コオロギチョコ」だ。こちらは2021年12月に発売された。同じくコオロギパウダー主体で、タンパク質の豊富さが特徴となっている。

「コオロギチョコ1本あたり、約15gのタンパク質が含まれています。市場に出ているプロテインバーに引けを取らないタンパクの量になっていますね」

まだ食用コオロギの飼育には限度があり、2つの商品は店舗限定・数量限定販売となっている。しかし、食べた人からの反響はよく、欠品するケースも少なくない。現在まさに販売店舗を拡大している最中だという。

この商品によって無印良品が伝えたかったメッセージ

それにしても、なぜ無印良品は昆虫食に取り組んだのだろうか。関根氏は「無印良品というブランド自体が、つねに社会課題を頭に置いた商品開発をしてきました」と切り出す。

「たとえば、あえて形の不揃いな椎茸をパックした『われしいたけ』などは、食品ロスへのメッセージですし、包装を極力抑えた商品など、それぞれコンセプトを設定してきました。今回の昆虫食は、今後人口が増え、タンパク質危機や畜産による環境問題が不安視される中で、そのタンパク質を手軽に摂れて課題解決につながる昆虫食を商品化しようとしたもの。それによって世の中にメッセージを伝えたいと作りました」

先ほど、コオロギせんべいの紹介で「この商品のメッセージをきちんと伝えたいから、あえてシンプルな味にした」という話があったが、その“メッセージ”こそ、まさに上述のものだ。

なお、無印良品が昆虫食を考えたきっかけは、フィンランドへの出店を計画していたときのこと。出店のために同地を訪れた際、いくつかお土産をもらった。その中に、当時フィンランドで話題になっていたコオロギ食品が含まれていたという。これが契機となりプロジェクトがスタート。2018~2019年頃だ。

「最初は海外輸入も検討しましたが、原料となるコオロギがどこで生まれどこを経由してきたかというトレーサビリティが不明瞭になるのは避けたいと考え、国内でコオロギを調達する方向で考えました。その中で、徳島大学発のグリラスというベンチャー企業が食用コオロギの飼育を研究していると知り、共同開発することになったのです」

無印良品が使っているコオロギパウダーは、すべてグリラスが飼育した食用コオロギ。2社の出合いこそ、商品化を実現したポイントだった。

眼の白いコオロギを使った、最先端の飼育法


グリラスでは、独自の手法で食用コオロギを飼育している。コオロギを食べるといっても、自然に生息しているコオロギを使うわけではない。自然界のコオロギはさまざまなものを摂取している可能性があり、食品としての安全担保が難しい。そこで、エサや温度を管理して育てたコオロギをパウダーにする。

飼育しているのは、フタホシコオロギという沖縄諸島に生息する亜熱帯性のコオロギ。さらに、その中でも「アルビノ系統」という眼が白いコオロギのみを飼育。こうすることで、仮に外から一般的なコオロギ(眼が黒い個体)が紛れても判別できるという。

ところで、昆虫の中でもなぜコオロギなのだろうか。理由として、まずコオロギはタンパク質が多く、たとえば100gあたりのタンパク質量で見ても、鶏・豚・牛が20g台前半に対し、コオロギは60gほどになるという(※)
※無印良品サイトより。コオロギはパウダー、鶏はむね肉、豚はもも肉、牛はもも肉で算出。コオロギの数値は日本食品分析センターで分析。牛・豚・鶏の数値は文部科学省 食品成分データベースより算出。

さらに、育てる上での環境負荷が低いことも、コオロギを選ぶ理由にあるようだ。

「コオロギは雑食のため、さまざまな餌を与えられます。残った食品を食べるなど、より環境に好影響を与えられる可能性があるでしょう。そのほか、飼育に必要なエサや水も一般的な家畜と比べて少なく、また成長が早いのもポイントで、約35日で成虫になるので効率よく生産できます」

こういった情報はホームページにまとめられているほか、売り場でも、スペースや環境の許す限り、コオロギの可能性や背景にある食料危機の情報を掲示している。

読者の中には、店内で「コオロギは地球を救う?」というフレーズを見た人もいるかもしれない。そこまでやるのは、やはりこの商品の核がメッセージを伝えることにあるからだ。

「今後もこれらの商品が未来の課題を考えるきっかけになればいいですね。商品を売るだけでなく、コンセプトやそこに込めた意味を伝えていければと思います」

国内でもひときわ早く、明確な形で昆虫食の商品を世に出した無印良品。その素早い展開の裏には、無印良品というブランドが大切にしてきた“世の中にメッセージを投げかける姿勢”がある。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2022年11月現在の情報です

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