子育て支援、iPS細胞の研究などへの寄付が“節税”につながる
NPO法人への寄付も対象になる?「寄附金控除」のいろは
まだ終わりが見えないコロナ禍において、子どもや家庭を支える活動、医療分野での研究などの重要性はひと際大きなものになっている。しかし、そのような活動や研究を行うNPO法人(特定非営利活動法人)などの資金調達が難しくなっているという。
そのような状況を打開する手段のひとつが寄付。誰でも利用できる方法であり、さらに寄付した人も「寄附金控除」を受けられる。この「寄附金控除」について、ファイナンシャルプランナー兼社会保険労務士の川部紀子さんに教えてもらった。
すべての寄付が「寄附金控除」の対象になるわけではない
「寄附金控除とは、国や地方公共団体、NPO法人をはじめとする特定の団体などに寄付を行った場合に、寄付金額に応じて所得税・住民税が還付される制度のことです。ちなみに、ふるさと納税も寄付金控除の一種です。ただし、寄付金のすべてが寄附金控除の対象になるわけではありません」(川部さん・以下同)
国税庁は寄附金控除の対象になる寄付先として、国や地方公共団体、公益社団法人、独立行政法人、自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団、日本赤十字社、公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、更生保護法人などを挙げている(一部条件あり)。政治活動に関する寄付金の一部も対象となる。
NPO法人に関しては、そのすべてが対象となるわけではなく、所轄庁の認定を受けた認定NPO法人(または特例認定NPO法人)が対象となる。2022年11月8日現在で、1251件あるようだ。そのなかには、子育て支援、災害軽減のための研究、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究を行っているNPO法人も含まれている。認定・特例認定NPO法人は、「内閣府NPOホームページ」で検索が可能だ。
「ちなみに、国税庁や内閣が示している対象は、あくまでも所得税の控除の対象です。住民税(都道府県税・市町村税)に関しては、寄付先の団体によって控除の対象になる場合とならない場合があります。例えば、住んでいる都道府県や市町村が所在地となっている団体に寄付を行うと、住民税の控除の対象になる場合があります。寄付先の団体に確認してから、寄付するようにしましょう」
控除のタイミングが異なる「寄附金控除」「寄附金特別控除」
寄附金控除を受ける際に気をつけたい点は、もうひとつある。「寄附金控除」と「寄附金特別控除」の2種類があることだ。
「『寄附金控除』と『寄附金特別控除』は、税金が控除されるタイミングや最終的な税額が異なります。基本的にどちらの控除を使うかは自由に選べますが、寄付する団体によっては『寄附金控除』しか選べない場合があるので、ここに関しても寄付を行う前に確認しておくといいでしょう」
●寄附金控除
所得(給与所得者であれば収入から給与所得控除額を引いた金額)から基礎控除、扶養控除、生命保険料控除などの各種所得控除とともに寄附金控除額が引かれる。課税所得(所得から各種所得控除を引いた金額)を小さくすることができる。
寄附金控除の額は次の算式で計算される。
その年中に支出した特定寄附金の額の合計額-2000円
※特定寄附金の額の合計額は所得の40%相当額が限度
※特定寄附金とは、国又は地方公共団体、公益団体等といった団体に対して行った寄付金のこと
●寄附金特別控除
課税所得に税率をかけて導き出された所得税・住民税から、寄附金特別控除額が還付される。
寄附金特別控除の額は次の算式で計算される。
・政党等に寄付した場合
(その年中に支出した政党等に対する寄附金の額の合計額-2000円)×30%
・認定NPO法人等または公益社団法人等に寄付した場合
(その年中に支出した認定NPO法人等・公益社団法人等に対する寄附金(一定の要件を満たすもの)の合計額-2000円)×40%
※寄附金の額の合計額は原則として所得の40%相当額が限度
※寄附金特別控除額はその年分の所得の25%相当額が限度
「年収4000万円以上ある人は、『寄附金控除』で課税所得を小さくする方が、節税効果が高くなる傾向にあります。所得税や住民税は累進課税で、課税所得が高いほど税率が上がるからです。一方、年収4000万円に届かない人は、『寄附金特別控除』で還付を受ける方が節税につながりやすいといえます。自身の収入や寄付金額、寄付先の団体に合わせて選びましょう」
寄付金による控除を受けるには確定申告が必須
寄附金控除を受けるには、会社員であっても確定申告を行う必要がある。
確定申告を行う際には、寄付先の団体から届く寄付金受領証明書や領収書、政治活動に関する寄付では「寄附金(税額)控除のための書類」などの添付が必要になる場合があるため、届いたら大切に保管しよう。電子申告(e-Tax)の場合は添付を省略できるが、その後3年間は書類を保存する必要がある。
「確定申告というと難しく感じるかもしれませんが、最近はパソコンやスマートフォンからe-Taxを利用できるので、想像よりも難しくないでしょう。節税につながることなので、面倒に思わずに申告しましょう」
困っている人や世の中をよりよくするための研究をサポートできる寄付。人のためになるだけでなく、自身の節税にもつながる行動だ。積極的に日々の生活に取り入れてみるのもいいかもしれない。
(有竹亮介/verb)
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川部紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。著書に『得する会社員 損する会社員』『今すぐはじめられる NISAとiDeCo』がある。