ストップ高・ストップ安とはどんな制度?制限値幅についても解説

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ストップ高・ストップ安とは、株価の上昇下落を一定限度内に抑える制度です。前日終値と比較し、基準値段における制限値幅を超えているかが判断基準となります。

本記事では、ストップ高・ストップ安とは何か、どのような目的があるかを解説しています。

ストップ高・ストップ安とは株価制限の制度

株価は大きく上昇・下落することがありますが、急激な変動で投資家に大きな損害や混乱を与えないようにするために、前日終値からの上下落を一定限度内に抑制する「制限値幅制度」があります。

株価が一定の価格いっぱいに上昇した場合、ストップ高と呼ばれます。ストップ高になると、その日はストップ高を超える価格で取引できません。

一方、株価が一定の価格いっぱいまで下落した場合がストップ安と呼ばれます。ストップ安になると、その日はストップ安より低い価格では取引できません。

制限値幅がストップ高(安)に関連

ストップ高・ストップ安に深く関連しているのが、制限値幅(値幅制限)です。東京証券取引所では、一日の売買における値動きの幅を価格水準に応じて一定に制限しています。この値幅が制限値幅です。

基準値段に制限値幅分を加えた価格がストップ高で、制限値幅分を引いた価格がストップ安となります。また、これらの価格を制限値段といいます。

制限値幅を知るためには、基準値段も把握しておかなければなりません。また、ストップ高の上限やストップ安の下限を4倍に拡大することがある点もポイントです。

基準値段や、制限値幅の臨時変更について解説します。

制限値幅には基準値段がある

制限値幅は、前日の終値(1日の相場取引における最終値段)などの基準値段によって決められています。

東京証券取引所の場合、例えば基準値段が700円以上1,000円未満であれば150円、2,000円以上3,000円未満であれば500円、3,000円以上5,000円未満であれば700円が制限値幅とされています。前日の終値が4,000円(3,000円以上5,000円未満)であれば原則として制限値幅が700円となるため、4,700円(4,000円+700円)でストップ高、3,300円(4,000円-700円)でストップ安です。

各基準値段と制限値幅の具体的数値については、以下を参考にしてください。

日本取引所グループ「内国株の売買制度(制限値幅)」

制限値幅は臨時で変更されることがある

制限値幅は基準値段に応じてあらかじめ定められていますが、臨時で変更されることもあります。臨時で変更されるのは、2営業日連続で以下のケースに該当した場合です。

● ストップ高やストップ安になった上、ストップ配分も行われずに売買高が0株である

ストップ配分とは、ストップ高やストップ安になった際に、対象株価における売り株数と買い株数の比率に応じて株価をつける方法です。ストップ配分に関する細かい内容は「ストップ高(安)時における売買成立の仕組み」内で解説します。

2営業日連続でストップ高かストップ安になり、株式の売買が行われなければ制限値幅が拡大されると考えると理解しやすいです。

そのほか、2営業日連続で以下条件に該当する場合も臨時で制限値幅が変更されます。

● 売買高が0株のまま午後の立会終了を迎え、午後立会終了時に限りストップ高(安)で売買が成立し、かつ、ストップ高(安)に買(売)呼値の残数がある

立会(たちあい)とは、証券取引所内における会員証券会社間の売買取引のことです。また、呼値(よびね)は売買時の価格の刻み幅(つまり何円単位で売買が行えるか)を指します。呼値の残数があるというのは、売買は成立したけれども、同じ価格の買い(売り)注文がまだ残っている場合ということです。

東京証券取引所では、紹介したいずれかのケースに該当して制限値幅を拡大する際に、同取引所サイト内の「マーケットニュース」で通知しています。気になる方はチェックしてみてください。

日本取引所グループ「マーケットニュース」

ストップ高・ストップ安の目的

ストップ高やストップ安が設定されている主な目的は、以下の2点です。

● 投資家を保護する
● 過熱感や恐怖感による暴騰・暴落を防ぐ

それぞれ確認しておきましょう。

投資家を保護する

株価の激しい値動き抑制につながるため、投資家の保護がストップ高やストップ安の目的のひとつといえます。制度がなければ、大幅な株価変動に伴い大きな利益を期待できる反面、大きな損失を出してしまうこともあるでしょう。

ただし、ストップ高やストップ安があっても、株式投資に価格変動リスクはつきもののため、状況によって大きな損失を被ることはあります。保有銘柄の情報収集を続ける、余裕資金の範囲内で投資する、売却(損切り)のタイミングを決めておくなどによりリスク軽減を図ることが大切です。

過熱感や恐怖感による暴騰・暴落を防ぐ

人々の過熱感や恐怖感による株価の暴騰・暴落を防ぐことも目的のひとつです。制限がなければ、投資家がパニックになり、値上がり局面で多くの人が慌てて購入することで暴騰し、値下がり局面では慌てて売却することで暴落につながりかねません。

ストップ高・ストップ安があることで、一定額を超える(下回る)価格では取引できなくなるため、パニック抑制につながります。

ストップ高(安)時における売買成立の仕組み

ストップ高やストップ安になると、株価がそれより上がらなくなる(下がらなくなる)ため、売買成立のやり方も変えなければならなくなります。

通常の売買成立のやり方を理解した上で、株価が制限値段に達した場合の方法を確認しておきましょう。

通常は板寄せ方式とザラバ方式

東京証券取引所では、株価が制限値段まで上昇・下落しない限り、「板寄せ方式」や「ザラバ方式」といった個別競争売買により取引が行われます。各方式の意味や、使われる具体的な場面を解説します。

板寄せ方式とは

板寄せ方式とは、売り注文と買い注文のバランスを取り、売買を成立させる方式です。立会開始時、立会終了時、売買中断後の再開時などで用いられます。

板寄せ方式のポイントは、出されている注文をすべて「板」に記載した上で、成行(なりゆき)の売り注文と買い注文を優先し、続いて高い「買い注文」と低い「売り注文」の数を付き合わせて価格を決める点です。決定した価格が、始値(1日の相場取引における最初の値段)や終値などになります。

成行とは、値段を指定せずに注文することです。成行の買い注文と売り注文すべてを約定することが板寄せ方式の条件ですが、板に成行注文しか存在しない場合のように、成行で注文しても取引が成立しないことはあります。

成行の他に指値(さしね)注文という、自分で買う(売る)値段を指定して注文する方法があります。

ザラバ方式とは

ザラバ方式とは、注文の都度個別に取引を成立させていく方式です。板寄せ方式に該当しない場面で、ザラバ方式が用いられます。

ザラバ方式のポイントは、「時間優先の原則」と「価格優先の原則」が両方適用される点です。それに対して板寄せ方式では、時間優先の原則は適用されません。

時間優先の原則とは、先に出された注文が後に出された注文に優先する原則を指します。一方、価格優先の原則とは、まず指値注文よりも成行注文が優先され、次に指値注文では、買い指値は高い値段、売り指値注文は安い値段が優先される原則のことです。

ザラバ方式では、売買立会時間中に絶え間なく注文が行われ、値段が合致次第、売買が成立していきます。

株価が制限値段に達したらストップ配分

株価がストップ高やストップ安の制限値段に達し、当日の終値を決めることになった場合、ストップ配分で売買を成立させます。ストップ配分は、成行注文を制限値段における指値注文とみなし、ストップ高の場合は制限値段に1単位以上の売り注文がある場合、ストップ安の場合は1単位以上の買い注文がある場合に売買を成立させる方式です。

ストップ配分では、制限値段に対して注文を出している証券会社ごとに合計数量を算出し、多い会社から順番に1単位ずつ配分していきます。1単位100株の銘柄で800株をA社(1,500株注文)、B社(1,200株注文)、C社(1,100株注文)、D社(1,000株注文)、E社(200株注文)にストップ配分するケースを想定してみましょう。

まず、100株ずつ数量の多い順に配分するため、AからEまですべて100株が行き渡ります(合計500株)。次に、残り300株を注文数量が多いAからCに100株ずつ配分するため、最終的な配分は、A社(200株割当)、B社(200株割当)、C社(200株割当)、D社(100株割当)、E社(100株割当)です。

なお、各証券会社に割り当てられた後の顧客への配分方法は、各社のルールに基づきます。

ストップ高・ストップ安になったらどうする?

ストップ高・ストップ安になったら、まずは株価に踊らされず、冷静に状況を見ることが大切です。冷静な判断ができるように、ストップ高やストップ安になる理由や、いざなった時に売買する方法を解説します。

ストップ高・ストップ安になる理由

株価がストップ高になる理由として、企業の決算内容が予想以上によい、企業買収の情報が出回るなどが挙げられます。一方、対象企業に対するマイナスイメージを植え付けるニュースが出回る、業績を下方修正するなどはストップ安を招きかねないでしょう。

ただし、株価はさまざまな要素で変動するため、上記に該当するからといって必ずしも予想どおりに動くとは限りません。ストップ高を狙って安易に株式を購入したり、ストップ安を懸念して慌てて売却したりすることのないようにしましょう。

ストップ高・ストップ安の局面で売買する方法

ストップ高(ストップ安)の局面で、購入(売却)する方法のひとつが、成行注文の選択です。購入(売却)の値段を自分で指定して注文する指値より、値段を指定しない成行の方が優先的に注文が成立するため、いくらでもいいから買いたい(売りたい)というときに有効です。

ただし、成行を選択してしまうと、想定と大きくかけ離れた価格で売買が成立するおそれがある点に注意が必要です。

ストップ高の局面において、一般的に株主はさらなる高値を狙い売却しようとせず、購入希望者は増える傾向があることが、売買のしにくさにつながります。また、ストップ安の局面においても、あえて購入しようとする投資家が現れにくい上、売却希望者は増えることが想定されるため、売買しにくくなるでしょう。

ストップ高・ストップ安でも冷静に対応しよう

​​ストップ高・ストップ安とは、株価の上昇や下落を一定限度内に抑える制度です。各基準値段に対して決められた制限値幅いっぱいまで株価が上がった(下がった)際、ストップ高やストップ安になります。

ストップ高やストップ安になった際に慌てて売買して利益を逃したり、損失を抱えたりしないためにも、制度を十分に理解したうえで冷静に対応するようにしましょう。

参考:日本取引所グループ「売買のルール(応用編)」

ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:
銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に活かすためにFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。

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