NISAのロールオーバーとは?2024年以降の制度変更も解説

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NISAのロールオーバーとは、保有する金融商品の非課税期間が終了した際に、翌年の非課税投資枠に移管することです。必要な手続きを踏まない場合、課税口座に移されます。

本記事では、NISAのロールオーバーとは何かを詳しく解説した上で、2024年以降の新制度についても説明します。

NISAのロールオーバーとは

NISAのロールオーバーとは、NISAの非課税期間が終了した際に、NISAやジュニアNISAの口座で保有している対象の金融商品を翌年の非課税投資枠に移管することです。ロールオーバーの制度があることにより、投資家は非課税期間(投資した年から数えて5年目の年末まで)が終了してからも、引き続き非課税で運用できます。

ロールオーバーについて深く理解するために、NISAそのものの概要や制度変更について、確認しておきましょう。

そもそもNISAとは

NISA(Nippon Individual Savings Account)とは、NISA口座において毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税となる制度です。本来、株式や投資信託などの金融商品に投資して利益を得ると約20%の税金を課せられますが、NISA制度を利用すれば税金がかからなくなります。

NISAは、成年が利用できる一般NISA・つみたてNISA、未成年者(0〜17歳)を対象としたジュニアNISAの3種類です。一般NISAは上場株式・ETF(上場投資信託)・公募株式投資信託・REIT(不動産投資信託)などに投資可能であるのに対し、つみたてNISAで投資可能な商品は、金融庁が選んだ長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に限定されます。

一般NISAやジュニアNISAの非課税期間は5年間で、つみたてNISAは20年間です。また、今回説明するロールオーバーの対象となるのは、一般NISAとジュニアNISAのみである点に注意しましょう。

2024年より制度が変更

2024年以降、一般NISAの非課税対象や非課税投資枠が見直され、新しいNISA制度が始まります。新NISAの制度内容は2022年9月末日現在でまだ変更の余地があるため、最新情報については、随時金融庁の以下サイトを確認するようにしてください。

金融庁「新しいNISAの概要」

NISAでロールオーバーするには手続きが必要

非課税期間が満了する際に、所定の手続きを踏まなければロールオーバーできません。ロールオーバーする方法や、要件を解説します。

NISAでロールオーバーする方法

一般NISAで金融商品を購入した年から5年目の年末に近づいたら、翌年の非課税投資枠を利用して非課税保有を続ける(ロールオーバーする)ことを、対象商品を購入した時の金融機関へ伝えます。具体的には、非課税口座内上場株式等移管依頼書(ロールオーバー依頼書)を提出するか、対象金融機関のサイト上での登録が必要です。

ロールオーバーする際、非課税期間満了時の時価が新たな取得価格になります。取得価格分、翌年の非課税投資枠が少なくなる点に注意しましょう。

NISAのロールオーバー要件

NISAのロールオーバー要件は、主に以下2点です。

1.対象の金融商品を購入した時と同じ金融機関で開設した、NISA口座の延長であること
2. 定められた期限内で手続きしていること

期間満了が近づくと、取引金融機関から連絡が来ることが一般的です。期日を過ぎないように、連絡があり次第迅速に手続きしましょう。ただし、取引金融機関によって、連絡が来ない可能性もあるため、自分自身で期日管理しておくことも大切です。

なお、手続き方法や期限は金融機関によって異なるため、不明点は直接取引金融機関にお問合せください。

ロールオーバーを選択するメリットは3つ

ロールオーバーを選択する主なメリットは、以下の3つです。

1. 利益が出て非課税枠を超えても非課税で運用できる
2.慌てて売却する必要がない
3. 最大10年間まで非課税で運用できる

それぞれ確認していきましょう。

1.利益が出て非課税枠を超えても非課税で運用できる

NISA口座で運用している金融商品の利益が発生し、非課税枠を超えている場合でもそのまま運用可能な点がメリットです。移管できる金額に上限がないため、運用成果によって非課税枠(120万円)を超えた場合も非課税で運用できる可能性があります。

具体例を挙げると、120万円で購入していた金融商品の評価額がロールオーバー時に150万円になり非課税枠を超えていても、翌年に非課税枠でそのまま運用可能です。

2.慌てて売却する必要がない

期間終了に伴い、慌てて売却する必要がない点もメリットです。「損失を抱えている」、「まだ値上がりしそう」などの理由から、まだ売却したくないという方も安心できるでしょう。

投資では、目標を達成したとき、現金が必要になったとき、今後の値上がりが期待できないときなど、売り時を考える上で大切なポイントがいくつも存在します。非課税期間満了だけにとらわれず、幅広い視野から売却時期を検討してください。

3.最大10年間まで非課税で運用できる

ロールオーバーすることで、NISA口座でさらに5年間運用できるようになるため、最大10年間非課税で運用できる点もメリットです。

結果的に非課税での長期保有が可能となり、価格変動リスクやコスト負担の軽減、複利効果の発揮などを期待できます。複利効果とは、運用で得た利益を再投資してさらなる利益を生むことです。

ロールオーバーを選択する際の注意点は3つ

NISAのロールオーバーを選択する際、気をつけなければならない点も存在します。主な注意点は、以下の3つです。

1.翌年の新規買付分に影響する
2.ロールオーバーできないケースがある
3.手続きに手間がかかる

各注意点を確認していきましょう。

1.翌年の新規買付分に影響する

ロールオーバーした金額分は、翌年のNISA非課税枠から減らされるため、新規に投資できる金額に影響が出る点に注意が必要です。また、非課税枠を考慮するにあたって、期間満了時の時価が取得価格として計算されることも失念しないようにしましょう。

例えば、当初の取得価格が90万円でも、非課税期間が満了した時の評価額が120万円まで上がっていれば、120万円が新たな取得価格となり、翌年の非課税枠がすべて埋まってしまうため、その年は新たに非課税口座での投資ができません。

2.ロールオーバーできないケースがあるトップ安の局面で売買する方法

要件を満たしていなければ、ロールオーバーできないケースがある点にも注意しましょう。ロールオーバーの対象は一般NISAとジュニアNISAです。つみたてNISAではロールオーバーできません。

金融商品を購入した時と同じ金融機関でなければロールオーバーできない点もポイントです。ただし、金融機関変更の手続きを行うことで、対応できるケースもあります。

3.手続きに手間がかかる

ロールオーバー手続きには一定の手間がかかる点も注意しなければなりません。後回しにして期日に間に合わないとロールオーバーできなくなります。

ロールオーバーできない場合、特定口座を開設している場合は特定口座、特定口座を開設していない場合は一般口座へ払出されます。手続きそのものは、それほど複雑なものではないため、ロールオーバーを検討している方は早めに対応しておきましょう。

ロールオーバーしない場合どうなる?

NISAのロールオーバーを必ずしなければならないわけではありません。非課税期間終了後の3つの選択肢や、ロールオーバーを選択しないほうがよいケースについて解説します。

非課税期間終了後の選択肢は3つ

非課税期間終了の際の選択肢をまとめると、以下の3つです。

1.ロールオーバーする
2. 課税口座(特定口座・一般口座)へ移管する
3.対象商品を売却(解約)する

課税口座(特定口座・一般口座)に移管して対象の商品を保有し続ける場合は、以降利益に対して課税されます。

なお、特定口座内での取引は金融機関が顧客の代わりに上場株式などの譲渡損益や配当金を計算してくれるのに対し、一般口座は顧客自身で計算しなければなりません。

ロールオーバーしない方がよいケースとは

今後NISA口座を利用して新たに購入したい商品がある方は、ロールオーバーしないほうがよいこともあります。翌年の非課税枠を使うので、非課税期間満了時点における対象商品の時価次第で、新たにNISA口座で投資できなくなる可能性があるためです。

また、現在NISA口座で保有している商品の価格上昇をほとんど期待できない場合も、ロールオーバーせず解約する選択肢を検討したほうがよいでしょう。

NISA口座で保有している商品の非課税期間終了が近づいたらロールオーバーを検討

非課税期間の終了に伴い、NISAで保有している金融商品を翌年の非課税投資枠に移管することをロールオーバーと呼びます。主なメリットは、引き続き5年間非課税で運用できる点です。

期日を過ぎると、ロールオーバーできずに課税口座に移管されてしまいます。手続きはそれほど複雑ではないため、先延ばしにしないようにしましょう。

ただし、翌年の新規買付分に影響が出るため、慎重に検討した上で自分が取るべき選択肢を決断することも大切です。

参考:金融庁「一般NISAのポイント」
参考:日本証券業協会「非課税期間終了時におけるお手続きのお知らせ」

ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:
銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に活かすためにFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。

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