【動画】国の借金状況から見る円相場の将来は?
提供元:野村證券(FINTOS!編集部)
日本の債務比率は、先進国の中で断トツに高い
最近、「日本は借金大国だ」「財政赤字を垂れ流している」、極端なケースでは「財政破綻するリスクがある」などの報道が見受けられます。
実際に世界と比較すると日本の借金はどのくらい大きいのでしょうか?国際比較を行う際は各国のGDPに対する借入額の大きさを表す「債務比率」が使われます。単純に債務を合計した「総債務」を使う場合と、金融資産を差し引いた「純債務」を使う場合があります。
この総債務比率を先進主要国で比較したのが(下図1)です。以前に欧州債務危機で問題となったイタリア、或いは2022年9月にトラス前首相の大減税策と国債の増発計画の発表により国債が暴落したイギリスなどと比べても、はるかに日本の債務比率は高く2020年には259.4%と先進国では断トツに高い水準となっています。
かつて英国は、膨大な戦費調達でポンドが対ドルで4分の1以下まで下落
このまま借金が増え続けると今後日本はどうなっていくのでしょうか?過去の先進国の記録を見ると、今の日本と同水準の債務比率を記録した例が1つあります。それは第2次世界大戦中のイギリスです。戦費調達で借金を重ねたために1946年の債務比率は269.8%という歴代最悪の水準を記録しました。その後イギリスでは高いインフレーションが起き、イギリス通貨のポンドは(下図2)の通り、対米ドルで約40年かけて4分の1以下になるまで下落していったのです。
これを仮に日本に当てはめてみるとどうなるでしょうか?(下図3)の通り、ドル円相場もかつて固定為替レート時代の360円から円高のピークであった2011年の1ドル=75円台まで、4倍以上上昇しました。また冒頭に申し上げた通り、現在の総債務比率が高水準である点を踏まえると、20世紀半ばのイギリスの総債務比率と為替の関係を参考とすれば、日本円もこの先2060年頃にかけて360円程度まで下落する可能性も考えられます。
もちろん歴史は全く同じことを繰り返すわけではないでしょう。為替の変動要因は国の債務比率だけではありません。また現在の日本国債はすべて円建てであり、大部分が国内で保有されています。一方、当時のイギリスは、外国、特にアメリカに対して債務を返済していたため、為替に対する影響度が異なるとも考えられます。
しかし今の日本の総債務比率は歴代1位であったイギリスを超えようとしていることも事実であり、このことが日本国債やひいては円への人々の信用を毀損するリスクは否定できません。2022年10月に150円台を記録した急激な円安は、今後の長期的な円安トレンドの始まりを示唆しているのかもしれません。