米雇用統計とはどのような指標?注目を集める理由を解説

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米雇用統計とは、アメリカの労働省が同国の雇用情勢を示すために毎月第1金曜日に発表する指標です。内容によって米国市場のみならず、日本市場に影響を与えることがあるため、注視しなければなりません。

本記事では、米雇用統計とはどのような統計か紹介してから、とくに注目される項目について解説します。

米雇用統計とはどのような統計?

米雇用統計(Current Employment Statistics)とは、アメリカの雇用情勢を示した統計指標です。約13万1千の企業および政府機関(約67万の事業所)を対象に実施しています。

アメリカの雇用情勢を示したものであっても、米雇用統計が日本市場に与える影響は決して小さくありません。米雇用統計についてより深く理解できるように、発表日程や注目を集める理由を詳しく解説します。

発表日程は原則毎月第1金曜

米雇用統計は毎月12日を含む1週間が調査対象の期間で、原則として調査から3週間後の翌月第1金曜日に発表されます。発表時間は、夏時間の時は日本時間21時30分、冬時間の時は日本時間22時30分です。

また、アメリカ労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS))が、調査結果を発表します。

注目を集める理由

毎月米国雇用統計の内容が注目される理由として、アメリカで雇用情勢が個人消費に直結する点が挙げられます。アメリカの個人消費は、同国のGDPの約7割を占めているため、雇用状況によって経済が左右されやすいです。

また、アメリカのGDPが世界のGDPの2割超を占めている点も、米雇用統計の内容が国内のみならず、世界中から注目される理由といえるでしょう。

米雇用統計で注目される項目は3つ

米雇用統計には、「非農業部門の雇用者数」「失業率」「平均時給」「金融機関就業者数」「製造業就業者数」「建設業就業者数」など、雇用に関するデータが10項目以上も含まれています。その中で、とくに注目されるのが「非農業部門の雇用者数」「失業率」「平均時給」の3項目です。

発表時に内容をすぐに理解できるように、各項目の概要や計算方法を把握しておきましょう。

1. 非農業部門の雇用者数

米雇用統計における非農業部門の雇用者数とは、農業部門以外の産業分野で、政府や民間企業に雇用されている人数や増減をまとめたものです。一般的に、雇用者数が増えれば個人消費の拡大も期待できるため、重要な指標として注目を集めています。

2022年12月2日の発表によると、同年11月の非農業部門の雇用者数は前月から26万3,000人増で、市場予想(20万人増)を上回る結果でした。

2. 失業率

米雇用統計における失業率とは、アメリカ国内の失業者数を労働人口で割って算出し、割合と増減をまとめたものです。失業者数は16歳以上の働く意志を持つ人たち、労働人口は失業者数と就業者数をあわせた数で算出します。

一般的に、失業率が上昇すれば、個人の消費も低迷しやすいです。2022年12月2日の発表によると、同年11月の失業率は前月から横ばいの3.7%で、市場予想どおりの結果でした。

3. 平均時給

米雇用統計における平均時給とは、農業部門以外の主要産業における、1時間当たり平均賃金と増減をまとめたものです。平均時給をチェックすれば、人件費の推移がわかるため、景気を判断する際に役立ちます。

一般的に、平均時給が上がれば、個人消費の拡大につながりやすいです。2022年12月2日の発表によると、同年11月の平均時給は32.82ドルで、前月比0.6%増の結果でした。

参考:JETRO「米11月雇用者数は26.3万人増、失業率3.7%で横ばい、時給伸び加速」

米雇用統計に関連する市場

米雇用統計の発表内容は、株式市場・金利・外国為替市場など、さまざまな市場や政策に影響を与えます。また、相場の動きに関係するのは実際の値だけでなく、予想値との関連も深いです。

予想値とは、米国雇用統計が発表される前に各項目に対して発表する予想のことです。各社が発表した予想値を平均したものがコンセンサス予想(市場予想)となります。

各市場と米雇用統計の関係を確認していきましょう。

株式

株式市場とは、企業が発行した株式の売買取引が行われる場のことです。企業が資金調達するために株式を発行し、投資家が資金提供する「発行市場」と、投資家同士で発行済みの株式を売買する「流通市場」があります。通常、株式市場というと「流通市場」を指すことが一般的です。

例外もありますが、一般的に米雇用統計の内容が予想以上に良ければ株価が上がりやすいです。一方、予想より雇用統計の内容が悪い場合、株価が下がる可能性があります。

金利

政策金利とは、景気や物価安定などを目的とし、各国が設定する短期金利のことです。日本の政策金利は日本銀行の金融政策決定会合が決定するのに対し、アメリカではFOMC(米連邦公開市場委員会)が設定します。

例外もありますが、一般的に雇用統計が改善され、景気が過熱していると判断されれば政策金利引き上げが行われやすいです。一方、雇用統計が悪化して景気が悪いと判断された際には、政策金利を引き下げる傾向にあります。

なお、政策金利の引き上げは物価の安定化や景気の過熱を抑制することを目的とする「金融引き締め」、引き下げは景気を刺激する効果のある「金融緩和」という金融政策のひとつです。

外国為替

外国為替市場とは、円やドルなど異なる通貨を交換する場のことです。米雇用統計は、とくにアメリカの通貨である、ドルの価値の変動に関係します。

例外もありますが、一般的に雇用統計が改善され、景気が過熱していると判断されれば政策金利が引き上げられ市場金利も上がるため、高い金利のドルが買われやすいです(ドル買い)。一方、雇用統計が悪化して政策金利が引き下げられた場合、一般的に金利の低くなったドルが手放されやすい傾向にあります(ドル売り)。

なお、ドル買いが進むと他国通貨と比較して「ドル高」、ドル売りが進むと「ドル安」の状態です。

米雇用統計発表前後の市場の動き

米雇用統計は世界中から注目を集めるため、発表前後の市場はいつもと異なる動きをしやすいです。米雇用統計発表前後の特徴的な動きとして、以下の2点が挙げられます。

● 発表前は穏やかな動きになりやすい
● 発表直後は乱高下することもある

ここから、それぞれの内容を詳しく解説します。ただし、あくまで傾向であり、例外もある点を理解しつつ、参考にしてください。

発表前は穏やかな動きになりやすい

米雇用統計の発表前は、投資家が内容をうかがい売買を控える傾向にあるため、市場は穏やかな動きになりやすいです。投資家の中には、取引を極端に抑えたり、保有しているポジションを決済して現金化(手仕舞い)したりする人もいます。

ただし、今まで穏やかだったにもかかわらず、発表の数分前から直前にかけて、突如大きく値が動くこともあります。

発表直後は乱高下することもある

米雇用統計発表直後は、短期間で上昇と下落を繰り返すことがあります。予想値と発表内容に乖離があった場合、値動きが激しくなりやすいです。

値動きが激しいことで市場環境によって注文の約定に時間がかかったり、取引そのものが成立しなかったりすることもありえます。発表からしばらく経ってからも、調整が続くため、通常時と比べると値動きが大きくなりやすいです。

米雇用統計前後に取引する際の注意点

市場が通常の動きと異なりやすいため、投資家は米雇用統計前後の取引に注意が必要です。主な注意点として、以下の点が挙げられます。

● リスク管理を図る必要がある
● 市場の動きとの整合性がない場合もある

各注意点を理解しておきましょう。

リスク管理を図る必要がある

米雇用統計前後は、いつも以上にリスク管理を図ることが大切です。とくに米雇用統計発表直後のように乱高下する相場では、大きな利益を狙える反面、大きな損失を抱える可能性もあります。

自分が予想していた内容と米雇用統計が大きく異なることもあるため、発表前後に無理して取引をしない、損切りのラインを決めておくなどの工夫を心がけましょう。

市場の動きとの整合性がない場合もある

米雇用統計と市場の動きは、必ずしも整合性があるとは限らない点も理解しておきましょう。前月に米雇用統計が改善して株価が上昇していたとしても、次は内容がよいにもかかわらず株価下落になる可能性があります。

「米雇用統計の内容が改善するから株価上昇」「米雇用統計の内容が悪化したのでドルが売られる」などと安易に断定しないことが大切です。

米雇用統計とは投資判断に大切な指標のひとつ

米雇用統計とは、アメリカ労働省労働統計局が国内の雇用情勢を示した統計指標です。雇用情勢はアメリカのGDPの約7割を占める個人消費に直結するため、投資判断に大切な指標のひとつとして、毎月注目を集めています。

米雇用統計発表前後は、市場が通常と異なる動きをしやすいため、投資をはじめた人は毎月第1金曜に動向を注視しましょう。また、リスク管理を図ることも大切です。

ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:
監修者の経歴:銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に活かすためにFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。

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