円安・円高って何?これを読めばよりニュースを理解できる

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円安であるか、円高であるかが、家計や企業活動に大きな影響を及ぼすことがあります。それぞれにどのような変化が生じるかを理解しておくことが大切です。

本記事では、円安・円高になる仕組みや、投資との関係性について解説します。

円安・円高とは円の他通貨に対する相対的価値

円安・円高とは、円の他通貨に対する相対的価値のことです。円1単位で交換できる他通貨の単位数が相対的に少なければ「円安」、相対的に多ければ「円高」といえます。

ここでは、今まで1ドル=100円のレートだったものが、1ドル=125円になった場合と、1ドル=80円の場合で考えてみましょう。円安・円高は円を中心に考えたもののため、今回は1ドル=何円ではなく、10,000円が何ドルかで計算します。

1ドル=125円の場合、10,000円は80ドル相当(10,000÷125)です。1ドル=100円の時(10,000円が100ドル)と比べ、円1(万)単位で交換できるドル(他通貨)の単位数が少なくなるため、今までより「円安」といえます。

一方、1ドル=80円の場合は、10,000円は125ドル相当(10,000÷80)です。1ドル=100円の時(10,000円が100ドル)と比べて、円1(万)単位で交換できるドル(他通貨)の単位数が多くなるため、今までより「円高」といえます。

円安と円高の違いについて、ここからさらに詳しく確認していきましょう。

どちらがよいかは断言できない

円安・円高はさまざまな方面に影響を及ぼしますが、どちらの方がよいかは断言できません。その時の経済状況や、自分が置かれている立場などによっても考え方が異なります。

「円安のほうがよい」「円高のほうがよい」と理解するのではなく、それぞれの特徴を理解し、周囲にどのような影響を及ぼすのかを考えることが大切です。

円安と円高の間に明確な基準はない

メディアやSNSなどで盛んに「円安」「円高」といった言葉が用いられますが、実は円安と円高の間に明確な基準はありません。対象となる期間と比較してどうなっているかによって、「円安」か「円高」か判断します。

例えば、1ドル=100円の状態は、2003年1月4日9時(1ドル=131.74円)と比較すると円高です。しかし、同様に1ドル=100円の場合でも、10年後の2013年1月4日9時(1ドル=76.74円)と比べると円安といえます。

参考:日本銀行「外国為替市況(日次)」

円安・円高になる仕組み

円と他通貨の需要と供給の関係性で為替相場が動くため、円の価値が変動して円安や円高になります。そこで、為替や為替相場が変動する理由について詳しくみていきましょう。

そもそも(外国)為替とは

そもそも為替とは、現金の輸送を伴わずに「お金」をやり取りすることです。為替には、内国為替と外国為替(外為)があります。

内国為替とは、日常生活でも馴染みのある「銀行振り込み」や「口座振替」などのことです。一方、外国為替とは、現金を直接輸送せずに異なる通貨を交換することを指します。

また、通貨を交換するための市場が「外国為替市場」です。そして1ドル=100円のような、通貨の交換比率を「外国為替相場(為替レート)」と呼びます。

為替相場が変動する理由

外国為替相場が変動する理由は、その時々で対象の通貨を買いたがる人(需要)や売りたがる人(供給)のバランスが変わるからです。基本的に、欲しがる人が多い通貨の価値は上がり、欲しがる人が少ない通貨の価値は下がります。

為替変動を招く要因のひとつが、金利差です。例外もありますが、一般的に金利が高くなった国の通貨は価値が上昇、金利が低くなった国の通貨は価値が下落する傾向にあります。

そのほか、貿易収支や各国の情勢なども為替変動につながる要因です。

日本の為替レートの歴史

第二次世界大戦後、日本では為替レートを特定の水準に固定する「固定相場制」を採用します。当時のレートは、1ドル=360円でした。

1971年12月以降はスミソニアン体制で1ドル=308円になります。1973年2月からは完全変動相場制に移行し、現在のように市場の需給に応じて自由に為替レートが決まる制度になりました。

次からは、円安や円高になると具体的にどうなるか確認していきましょう。

円安になるとどうなる?

円安は、企業や家計によい影響を与えることも、悪い影響を与えることもあります。円安で具体的にどのような状況につながるのか、確認していきましょう。

輸出企業の国際競争力が高まる

円安になると、海外で日本企業が輸出した品の価格が下がるため、売れ行きがよくなりやすく、輸出企業の国際競争力が高まる傾向にあます。1ドル=100円が1ドル=125円の円安になったケースを考えてみましょう。

コストを考慮せず単純計算で考えると、輸出企業は10,000円の商品をアメリカに輸出する場合、1ドル=100円の時は100ドルで販売します。一方、1ドル=125円の時は、10,000円の商品を80ドルで販売できるでしょう。(※)

海外旅行の費用や輸入品価格が上昇する

円安になると、他国通貨を手に入れるためにより多くの円を使わなければならないため、海外旅行費用や輸入品価格は上昇します。同じく、1ドル=100円が1ドル=125円の円安になったケースを考えてみましょう。(※)

アメリカ旅行のお土産に10ドルのお菓子を購入する場合、1ドル=100円の時は円換算で1,000円相当を支払います。一方、1ドル=125円の時に10ドルのお土産を購入しようとすると、1,250円相当を支払わなければなりません。(※)

※わかりやすく説明するために、為替変動だけを考慮した理論上の価格です。実際の価格とは異なる場合があります。

円高になるとどうなる?

円高も同様に、企業や家計によい影響を与えることも、悪い影響を与えることもあります。円高になるとどうなるか、確認していきましょう。

輸入品を安く購入できる

円高になると、他国通貨を手に入れるために使う円を少なくできるため、今までより輸入品や海外でのお土産を安く購入できます。1ドル=100円が1ドル=80円の円高になったケースを考えてみましょう。

1ドル=100円の時に500ドルの海外スマートフォンを購入しようとすると、5万円相当を支払わなければなりません。一方、1ドル=80円になると、4万円相当で購入できるようになります。(※)

海外での競争力が弱くなる

円高になると、海外で日本企業が輸出した品の価格が上がるため、現地の商品と比べて売れにくくなり、輸出企業の国際競争力が弱まる傾向にあります。こちらも、1ドル=100円が1ドル=80円の円高になったケースを考えてみましょう。

日本企業が8,000円の商品をアメリカに輸出する場合、1ドル=100円の時は80ドルで販売できます。しかし、1ドル=80円になると、8,000円の商品を100ドルで販売せざるをえません。(※)

※わかりやすく説明するために、為替変動だけを考慮した理論上の価格です。実際の価格とは異なる場合があります。

円安・円高と投資の関係は?

円安や円高になると、金融・投資商品にも影響が生じます。今回は、外貨預金や株式投資と円安・円高の関係を考えてみましょう。

外貨預金の場合

外貨預金をしていた場合、「円安」になると含み益が出る一方で、「円高」になると含み損を抱えてしまいます。1ドル=100円から1ドル=125円の円安になった場合と、1ドル=80円の円高になった場合で考えてみましょう。

1ドル=100円の時に10万円分外貨(米ドル)預金すると、残高は1,000ドルです。これが為替変動を経て1ドル=125円の「円安」になると、10万円分預けたにもかかわらず、12万5千円相当(1,000ドル×125円)の残高になるため、残高は1,000ドルのまま2万5千円相当の含み益が出ます。

一方、1ドル=80円の「円高」になると、8万円相当(1,000ドル×80円)の残高になるため、2万円相当の含み損が発生してしまいます。

株式投資の場合

海外株式を保有している場合、対象株式の外貨建ての評価額自体に変化がなくても「円安」になれば円ベースで含み益、「円高」になれば含み損が出ます。理由は、外貨預金の場合と同じです。

また、国内株式を保有している場合は、一般的に「円安」になれば輸出企業は業績がよくなるため、株価の上昇が期待できます。一方、輸入企業は輸入コストが上がるため、株価は下落する可能性があるでしょう。

同じく、国内株式を保有している場合で「円高」になると、一般的に輸入コスト削減につながるため、輸入企業は業績が向上して株価の上昇が期待できます。それに対し、輸出企業は国際競争力が低下するため、株価は下落する可能性があるでしょう。

円安か円高かで投資にも影響が出る

円安・円高とは、円の他通貨に対する相対的価値のことです。たとえば1ドル=100円から1ドル125円になれば「円安」、1ドル80円になれば「円高」といえます。

円安や円高になると、企業の業績や家計だけでなく投資商品にも影響を及ぼすことがあります。投資をはじめた方は、企業の業績だけでなく円安や円高といった外国為替相場もチェックすることが大切です。

参考:日本銀行「公表資料・広報活動 円高、円安とは何ですか?」
参考:一般社団法人 全国銀行協会「円高、円安がわかる!為替相場のしくみと影響」

ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:
銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に活かすためにFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。

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