金利引き下げ制度に「ポイント制」導入で理解しやすくなった

2022年制度変更で「フラット35」がさらに使いやすくなったって本当?

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最長35年間、金利が固定される住宅ローン「フラット35」。住宅金融支援機構が運営しているもので、民間金融機関の住宅ローンと比べて審査が通りやすいという特徴がある。

そんな「フラット35」の制度内容が、2022年に変更され、一部の住宅に関してはより低い金利でローンを組めるようになったという。そこで、「フラット35」の制度変更について、家と住宅ローンの専門家・千日太郎さんに教えてもらった。

「2022年4月、10月の2回に分けて『フラット35』の制度変更が行われたことで、さまざまなオプションが併用でき、さらに併用することで金利がより引き下げられることが理解しやすくなったと思います。そのため、購入する住宅の基準を絞りやすくなったともいえます。具体的な変更内容と影響について、紹介していきましょう」(千日さん・以下同)

「長く住み続けられる質の高い住宅」の金利引き下げ

「フラット35」維持保全型が開始
2022年4月適合証明書交付分から、維持保全・維持管理に配慮した住宅や既存住宅の流通に資する住宅を取得する場合、「フラット35」の借入金利を当初5年間、年0.25%引き下げる制度。

「維持保全・維持管理に配慮した住宅とは、耐震性や省エネルギー性、維持管理・更新の容易性、可変性(ライフスタイルの変化に応じて間取りを変更しやすいこと)などの観点から、質の高さが担保されている住宅のこと。次のような住宅が対象になっています」

□「フラット35」維持保全型の対象となる住宅
(1)長期優良住宅(新築・中古住宅)
(2)予備認定マンション(新築マンションのみ)
(3)管理計画認定マンション(中古マンションのみ)
(4)安心R住宅(中古住宅のみ)
(5)インスペクション実施住宅(劣化事象等がないこと、中古住宅のみ)
(6)既存住宅売買瑕疵保険付保住宅(中古住宅のみ)

「国としては、より長く住み続けられる質の高い住宅に住んでほしいという思いがあるので、『フラット35』維持保全型ができたのだと思います。この制度が始まったことで、今後は性能を維持・強化した中古住宅の流通も活発化していくだろうと考えられます」

「子育て世帯」が住宅購入しやすい制度に変更

「フラット35」地域連携型(子育て支援)の金利引下げ期間の拡大
2022年4月資金実行分から、住宅金融支援機構と連携している地方公共団体の子育て支援のための補助事業の利用とあわせた場合に「フラット35」の借入金利を年0.25%引き下げる制度の期間を、当初5年間から当初10年間に延長。

UIJターンや空き家対策、コンパクトシティ形成など地域活性化のための補助事業の利用とあわせる場合は、これまでと同様に当初5年間の借入金利が年0.25%引き下げとなる。

「『フラット35』のホームページでは、対象が『子育て世帯の住宅支援・新婚世帯の住宅支援』となっていますが、子どもの有無や子どもの年齢などの細かな要件は地方公共団体によって異なります。住んでいる地域の補助事業や要件は、『フラット35』地域連携型のページから検索できるようになっています」

「フラット35」地域連携型を連携している地方公共団体
https://www.flat35.com/loan/flat35kosodate/organizations.html

これからの住宅のキーワード「ZEH」

「フラット35」S(ZEH)が開始
2022年10月借入申込受付分からZEH(ゼッチ)等の基準に適合する場合、「フラット35」の借入金利から当初5年間は年0.5%、6年目から10年目までは年0.25%引き下げる制度。

ZEHとは「Net Zero Energy House」の略で、住宅の高断熱化や省エネ設備、太陽光発電設備などの導入によって、年間のエネルギー収支をゼロにすることを目指す住宅のこと。

「ZEHは徐々に聞かれるようになってきたキーワードですし、『フラット35』の金利も引き下げられるので、これから住宅を購入する人は覚えておくといいでしょう。ZEHを建設すると住宅メーカーにも補助金が出るケースがあることから、今後増えていくと予想されます。対象となる住宅を押さえておきましょう」

□「フラット35」S(ZEH)の対象となる住宅
戸建て
・ZEH
・Nearly ZEH
・ZEH Orientedマンション
・ZEH-M
・Nearly ZEH-M
・ZEH-M Ready
・ZEH-M Oriented

金利引き下げの基準が「ポイント制」に変化

「フラット35」の金利引き下げ方法を変更
2022年10月借入申込受付分から、住宅の性能や長く住んでいくための配慮の状況などに応じて、金利の引き下げ幅及び引き下げ期間を変更。

「この変更こそ、今回の制度変更の目玉といえます。これまでも制度の併用によって引き下げ幅や期間が変わることはあったのですが、2022年10月からポイント制になったことで、よりわかりやすくなりました。ポイント制の内容を把握することで、どのような住居を購入すればいいのかという具体的なアクションに移せるようになったと思います」

□「フラット35」金利引き下げ方法

画像提供/住宅金融支援機構

「フラット35」維持保全型だけだと1ポイントとなるため、当初5年間のみ年0.25%の引き下げとなるが、「フラット35」S(ZEH)も併用すると4ポイントとなり、当初10年間が年0.5%の引き下げとなるのだ。「フラット35」維持保全型と「フラット35」地域連携型(子育て支援)を併用すると3ポイントとなるので、当初5年間は年0.5%、6年目から10年目までは年0.25%引き下げとなる。

「ただし、4ポイント以上取っても引き下げ幅や期間は変わらないので、多く併用すればいいわけではありません。住宅性能が高くなれば物件価格も上がるので、無理をしないことが大切です。例えば、『フラット35』地域連携型(子育て支援)を利用すると2ポイント入るので、ZEHは意識しなくてもいいなどの判断につながります。ポイント制によって情報が整理されたので、住宅を選びやすくなったのではないでしょうか」

現在の基準にあわせて「フラット35」Sを見直し

「フラット35」S等の見直し
2022年10月設計検査申請分から、「フラット35」S等の基準が、以下のように見直された。

□基準の強化
・脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させるため、「フラット35」Sの省エネルギー性の基準を強化。
・より高い水準のバリアフリー性能確保を支援するため、中古住宅の「フラット35」S(金利Bプラン)のバリアフリー基準の見直し。

□基準の緩和
・免震建築物は、「フラット35」S(金利Bプラン)から「フラット35」S(金利Aプラン)の対象に見直し。
・中古住宅の「フラット35」S(金利Aプラン)基準(省エネルギー性を除く)を、新築住宅の「フラット35」S(金利Bプラン)の水準に見直し。

「『フラット35』S(ZEH)が新設されたことで、ほかの制度の基準が見直されたのでしょう。また、政策などとのバランスも見て変更された部分もあると思われます。基準に合う住宅かどうかは、住宅メーカーなどに確認すれば問題ないでしょう」

借換融資の返済期間「35年」を「50年」に延長

「フラット35」借換融資を利用する際、長期優良住宅の場合は最長返済期間が延長
2022年10月借入申込受付分から、「フラット35」借換融資を利用する際、対象となる住宅が長期優良住宅の場合は借入期間の上限を延長。

□変更前の上限
(1)80歳-借換融資の申込時の年齢(※)
(2)35年-従前の住宅ローンの経過期間(※)
上記のいずれか短い年数

□変更後の上限
(1)80歳-借換融資の申込時の年齢(※)
(2)50年-従前の住宅ローンの経過期間(※)
上記のいずれか短い年数

※1年未満切り上げ

「今回の変更では、完済年齢の上限は80歳で変わっていませんが、返済期間は35年から50年に延長されているので、20代~30代前半の人に関係のある話といえます。返済期間が長くなれば高い買い物がしやすくなるので、物件価格が高騰していることを受けての変更だと思うのですが、50年ローンとなると完済のイメージがつきづらいですよね。返済がラクになるからといって、飛びつくのは危険です。『フラット35』借換融資を利用する場合は、注意しましょう」

新たな制度のスタートや金利引き下げ方法の変更によって、よりお得に使いやすくなった「フラット35」。住宅を購入する際は、選択肢のひとつとして検討してみよう。
(有竹亮介/verb)

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