賃貸、カフェ、シェアオフィス…使い方は“住む”だけじゃない

副業ビジネスに活用!?「空き家」リノベ事例7選

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年々増加している空き家。2018年に総務省統計局が行った「平成30年住宅・土地統計調査」における空き家は848万9000戸で、2013年に行われた同調査から29万3000戸増えていた。そして、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%。戸数・空き家率ともに、今後も増えることが予想されている。

実際に空き家を所有しながらも、その使い道を決められず、持て余している人もいるだろう。最近は、住居としてだけでなく、ビジネスに活用する事例も出てきているようだ。オフィスや店舗として貸し出せば、維持費を上回る収入を得られるかもしれない。

空き家が増えている現状と活用事例について、空き家活用サービス「アキサポ」を運営しているジェクトワンの地域コミュニティ事業部部長・清水貴仁さんに聞いた。

放置している空き家を「貸す」という選択肢

「日本で空き家が増えている理由はいろいろ考えられますが、そのひとつは日々新築が供給されていること。都市部でも地方でも、古い家屋が撤去されるより新築が建てられる件数の方が多いのです。また、介護施設の充実化に伴い、施設に入った方の子どもが家を引き継がず、空き家になってしまうという社会的背景も関係していると考えられます」(清水さん・以下同)

実家の建物を親から引き継いだものの、処分するにも費用がかかるため、どうするべきか悩んでいる人も多いようだ。

「住むか手離すかという判断になってしまいがちですが、人に貸したり店舗にしたりといった活用法もあります。判断できずに放置して維持費や税金を支払うのであれば、何かしらの形で有効活用した方がいいのではないかと思います」

ただ、仕事をしながら、空き家のリノベーションや賃貸契約をするのは大変だろう。「アキサポ」を利用すれば、建物をそのままジェクトワンに貸し出し、リノベーションや活用は任せられる。契約期間が過ぎた後は、そのまま所有者自身が運営することも可能だ。

「空き家を活用しようにもお金がない、やり方がわからないという人も多いので、『アキサポ』に限らず、不動産のプロに任せるのもひとつの手だと思います。お金と同じで、プロに預けることで価値が向上して戻ってくる可能性が高まるからです」

活用法は1つじゃない! 空き家リノベ事例

実際に「アキサポ」でリノベーションを行った空き家の事例を教えてもらった。

●長屋住居をカフェ&バルにリノベ/東京都文京区

画像提供/ジェクトワン

3棟連なる長屋の真ん中の住居からの引っ越しを機に所有者が売却を検討したが、なかなか売れず、店舗として使えるようにリノベーションして貸し出すことを決意。お店を構えることを目指していた男性とマッチングし、カフェ&バルに生まれ変わった。

「この地域では『気軽に立ち寄れる飲食店が少ない』という声が多く聞かれたので、飲食店としての活用を考え、この形のリノベーションになりました。カフェ&バルは2016年から5年以上にわたって繁盛しました。新天地で店を出すために借主の男性が出ていった後も、すぐに新たな借り手がつき、別の飲食店として開業する予定です」

●廃倉庫を大型バイクガレージにリノベ/東京都大田区

画像提供/ジェクトワン

シャッターがないために風雨が吹き込み、不法投棄物も散乱していた廃倉庫。バイクユーザーの多い第一京浜に近い立地に着目して大型バイクガレージに一新すると、車が入りづらい細い道に面していることが、かえって「盗難の心配がなく、安心して利用できる」と評判になり、常に満車の人気ガレージに。

「老朽化した倉庫だったので、内側をキレイにするだけでなく入り口もリノベーションし、ワクワクするような特別感のある外観にしました。建物がキレイになったことで人通りが増え、地域の方々からも『安心して生活できる』と評価していただきました」

●旧社宅をクリエイター向けオフィスにリノベ/東京都渋谷区

Photo:Akira NAKAMURA
画像提供/ジェクトワン

東京電力関連会社の築52年の社宅が、使われなくなってから10年以上経過。1・2階は変電所として利用されており売買できないことから、3・4階の旧社宅部分をオフィススペースにリノベーション。渋谷という立地からクリエイター向けオフィスとして貸し出し、入居者が部屋を改造できるようにした。

「建物の一部を活用した事例です。このケースは一部が使えないという理由でしたが、費用などの関係ですべてをリノベーションしたり活用したりするのは難しいという場合でも、一部だけであればできる可能性が出てきますよね」

●社宅を飲食店×シェアハウスにリノベ/東京都世田谷区

画像提供/ジェクトワン

20年以上放置され老朽化していた社宅をリノベーションし、1階をダイニングバー、2・3階をシェアハウスとして生まれ変わらせた飲食店連動型コンセプトシェアハウス。1階には入居するクリエイターの作品展示やイベントが開催できるスペースが設けられ、居住者とともに地域の人々に活用されている。

「階数で分けて活用方法を変えたケースです。大きな建物の場合、すべてを店舗にするとリスクが大きいので、2階以上を賃貸運用にすることでリスクを軽減できます。空き家活用は、地域特性に合わせたリノベーションが重要になってきます」

●空き店舗をシェアキッチンにリノベ/東京都豊島区

画像提供/ジェクトワン

20年近くテナントが入っていなかった空きビルに業務用キッチンを新たに入れ、イートインスペースつきのシェアキッチンとしてオープン。2つの業務用キッチンを仕切ることで、同時間帯に複数の事業者を受け入れられるつくりになっている。

「場所もシェアする時代なので、シェアキッチンのニーズもあるのではないかと考えました。つくったものをイートインスペースで販売する方やネット通販用の商品をつくる方、キッチンカーの仕込みをする方など、使い方はさまざまです。もともとの建物のつくりを生かしながら、時代に合わせた活用法だと思います」

●京町家を1棟貸しの宿泊施設にリノベ/京都府京都市

画像提供/ジェクトワン

築115年を超える空き家を、京都の街並みに合うように内装のみ改修し、1棟貸しの宿泊施設「ANJIN Gion Shirakawa」としてオープン。

「昔ながらの伝統やこだわりを大切にしつつ、新たなものとしてよみがえらせた事例です。ただつくり変えればいいわけではなく、景観や歴史、文化も尊重しながら空き家を活用できると、地域の方々にも受け入れてもらいやすくなるのではないかと感じています」

●元実家をシェアカフェにリノベ/東京都世田谷区

画像提供/ジェクトワン

母親が亡くなってから3年間以上放置されていた実家を改修しようとしたものの、耐震補強が足りなかったために区の助成金が下りず、「アキサポ」を活用した事例。曜日代わりのシェアカフェ「ナワシロスタンド」としてオープンし、地域コミュニティの場として賑わっている。

「所有者さんが『実家の面した商店街が寂れて悲しいから、人が集まる場所にしたい』という思いを抱えていたので、シェアカフェという形にし、イベントなどを開催できるようにしました。活用方法を考える際には、所有者さんの意向も大切にしています」

空き家を放置せず「動かす」ことが重要

「空き家の活用を考えるだけでも、新たな一歩になる」と、清水さんは話す。

「『アキサポ』に相談してくださった所有者さんのすべてが、空き家の活用に動き出すわけではありません。ただ、活用を考えることが、空き家に住む、空き家を処分する、自分で直して活用するといった何かしらのアクションのきっかけになることがほとんどです。空き家がそのまま放置されることが問題なので、どんな形でも一歩動き出すことは重要だと感じています」

また、空き家を活用することで金銭的な負担が軽減するだけでなく、心理的不安の解消にもつながるとのこと。

「空き家活用というと、収益にばかり目が行ってしまうと思いますが、いざ活用を始めるとメリットはそれだけではないことに気づくと思います。そのひとつが、放置していた空き家に対する罪悪感のようなものが払しょくされること。空き家は保有しているだけで金銭的・時間的・心理的負担がかかるものなので、放置するのではなく動かすことで、気持ちも晴れやかになると思います」

金銭的なメリットだけではなく、心理的にもプラスの効果を生む空き家の活用。副業として賃貸住宅、店舗、シェアオフィスなどの形で貸すことを検討するのもいいだろう。
(有竹亮介/verb)

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