新しい金融のカタチ

ATMのように、投資をもっと身近に

金融×小売で投資を日常に溶け込ませる。セブン銀行とFinatextが作る新機能

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コンビニをはじめ、いまやどこにでも当たり前にあるATM。かつてこれらを“銀行にあるもの”から、いたる所にあるもの、身近なものにしたのがセブン銀行だった。

そして同社はいま、同じように“投資”を身近にしようと動き出している。象徴となるのが、セブン銀行のアプリ「Myセブン銀行」に追加された新サービス「お買い物投資コレカブ」だ。このサービスには、金融と小売の掛け合わせだからこそできる、初心者が楽しみながら投資する機能が施されている。

お買い物投資コレカブは、金融サービスの開発を行うFinatextホールディングスで証券事業を担う子会社スマートプラスとの共同開発で誕生。この記事では、開発メンバーの話をもとに、本サービスに込められた工夫を明らかにしていく。

好きな企業への応援投資を生む「バーコード検索」

お買い物投資コレカブは、2022年11月にスタートしたサービス。セブン銀行口座を持つユーザーが、Myセブン銀行アプリを通じて株式売買や積立投資ができるものだ。約200銘柄の日本株、約100銘柄の米国株、そしてETF5銘柄を1株数百円単位から購入できる。

このサービスについて「初心者の方が投資を始めやすく、かつ続けやすいものにしています」と話すのは、セブン銀行 バンキング統括部 副調査役の木村剛之氏だ。実際、初心者が楽しみながら投資を行える特徴的な機能が用意されている。

その1つが「バーコード検索」。お店で買った商品のバーコードを読み取ると、関連する銘柄がアプリで表示される。

「普段の暮らしと投資の距離が遠い方は多いと思います。その距離を縮める体験ができればと、この機能が生まれました。自分の好きな商品や、それを作る企業に“応援”する意味で投資する。そんな行動が生まれればと考えています」(木村氏)

バーコード検索で見つけた株式は、アプリ内の「銘柄図鑑」に登録できる。これも初心者が楽しみながら投資を行うための重要な機能。サービス立ち上げから携わってきたセブン銀行 戦略事業部 グループ長の中田裕朗氏は、その意味をこんな風に説明する。

「株式をコレクションする体験を生み出すのが狙いで、サービス名の“コレカブ”も、その意味が由来。こうしていろいろな銘柄を集めていくことで、株式投資の基本である『分散投資』にもつながっていきます」

サービスを共同開発したスマートプラスの代表取締役・小林紀子氏も、これらの機能によって“応援”としての投資文化を広めたいと前を向く。そしてその説明として、自社で行ったこんな調査結果を紹介する。

「昨年、私たちは20代の方に調査を行い、企業を応援する上で有効な手段を聞きました。すると『企業に投資をする』と答えた方が2割強いたんです。1位は『商品を買う』でしたが、その次に投資という選択肢が来ていた。バーコード検索は、まさに応援としての投資につながりますし、若い世代の意向を実現するものだと思っています」

なお、こういった機能でよくありがちなのが、銘柄表示のタイミングで別の証券専門サイトが立ち上がり、そのサイトで情報を見る形。しかしお買い物投資コレカブはそういった画面遷移がなく、「すべてアプリ内で見られるように開発した」と小林氏。もちろんそれは、最適なユーザー体験を考えてのことだ。

投資初心者のチュートリアルを担う「ミッション」機能

このサービスでもう1つ、特徴的な機能がある。「ミッション」だ。ユーザーのサービス利用状況に応じてミッションが提示され、クリアするとクーポンがもらえるチャンスが発生する。

ミッションの例としては、特定の商品のバーコードを読み取るミッション(宝探しミッション)や、初めての取引を行うとクーポンをもらえるミッションなどがある。

実はこの機能、木村氏が初めて投資をするときにつまずいた経験がもとになっているという。

「私が投資を始めたとき、まず悩んだのは『口座開設をした後に何をすればいいか』でした。同じような人は多いはずで、どうにかその悩みを解消したいと。そこで参考になったのが、最近のスマホゲームです。説明書の代わりに最初いろいろなミッションが与えられ、クリアするうちに操作を理解するチュートリアルが用意されています。それを投資に当てはめられないかと、この機能が生まれました」

加えてお買い物投資コレカブでは、投資初心者がスムーズに始められるよう、利用開始時に「はじめて株」ミッションとして、対象銘柄のうち1株分の株式購入代金をプレゼントとして受け取ることができる。

こういった機能のほかにも、さまざまな工夫がある。特に面白いのが「お金の流れ」だ。開発を担当したFinatext サービスディレクターの菅原良介氏が説明する。

「通常の証券サービスでは、株を買う前に証券口座にお金を入金する必要があります。しかし今回は、お客さまの証券口座へ入金する手間をなくしています。先に株を注文して、その後、指定の時間に購入分の金額が自動でセブン銀行口座から証券口座に振り込まれ取引がされます。また、株式の売却時や配当金受取時なども自動で銀行口座に振り込まれます。この“お金の流れ”が特徴であり、通常の証券サービスと違う、証券口座の入出金の面倒を省いた体験になっています」

金融と小売の掛け算で、投資を日常にあるものに

お買い物投資コレカブの開発が始まったのは、2020年5月頃のこと。足掛け2年半をかけてのローンチとなった。

なぜ、セブン銀行は投資領域に踏み出したのか。中田氏は「投資は一度始めると、ユーザーの熱が長く続きます。アプリとの接触も増え、セブン銀行の愛着度も高まるのでは、という考えが1つありました」と話す。

そんな中田氏にとって、今回のように初心者が投資を気軽に楽しめるサービス、もっと言えば投資の裾野を広げるサービスは、もともと自分の作りたいものでもあったという。

「前職では投資関連の企業に勤めていたのですが、そこからセブン銀行に移った理由は、投資を誰でもできるものにしたかったからです。この会社は金融と小売の掛け算によって、ATMを人々の日常の動線に置き、いつでも使える簡単なものにしました。同じように投資も、金融と小売の掛け算で裾野を広げられればと思ったのです」

そういう意味では、バーコード検索の機能はまさに掛け合わせの賜物であり、投資のハードルを下げるための挑戦といえる。

同じように、Finatextグループも金融や投資がもっと暮らしに寄り添う世の中にしようと取り組んできた企業だ。今回のように、同社の証券システムを別分野のアプリに埋め込む技術はその象徴。「両社が同じ方向を向いていたからこそ、このサービスができたのでは」と小林氏は話す

そんな話をした後、それぞれに“これからやりたいこと”を聞くと、中田氏はセブン銀行のパーパスを引き合いに出した。そのパーパスとは「お客さまの『あったらいいな』を超えて、日常の未来を生みだし続ける。」というものだ。

「普段から投資をしているお客さまが“あったらいいな”と思うことを超えて、誰でも日常的に投資に触れられる、そんな未来を作っていきたいですね」

一方、Finatextの菅原氏は「貯蓄から投資へ」という動きがなかなか進まない中で、こんな思いを口にする。

「初心者が投資を始める上での根本的な課題を解決して、貯蓄から投資へという新しいムーブメントを起こさなければいけません。その意味で、このサービスが示した企業への応援投資という考えを根付かせたいですね。いまがそのタイミングだと思います」

セブン銀行のアプリに追加された、お買い物投資コレカブ。このサービスには、投資を日常に溶け込ませたいという人たちの工夫が詰まっている。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2023年1月現在の情報です

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