プラチナ鉱山供給

提供元:ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(World Platinum Investment Council, WPIC)

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はじめに

プラチナを採掘し生産できる鉱山は地理的に非常に偏っており、世界のプラチナの70%以上は南アフリカの比較的狭い地域で生産されている。このエリアの生産は2006年の164.8トンをピークに減っており、2022年は133.7トンと予測されている。世界的に見ても鉱山からの精錬プラチナの生産は減少傾向にあり、2006年は211.5トンだったが、2022年は155.5トンとされる。

ゴールドやシルバーの鉱山供給と比べてみると、原料としてのプラチナ供給がいかに少ないかが明らかだ。2021年のそれぞれの鉱山生産は、シルバーが2万5595.3トン、ゴールドが 3576.5トン、プラチナは僅か 186.6トンとなっている。プラチナの供給には鉱山以外にも自動車触媒と宝飾品からリサイクルされたものが毎年62.2トンほどあるが、ここでは鉱山からのプラチナ供給を取り巻く環境と生産を支える要因を検討していく。

【プラチナの鉱山供給とリサイクル供給】

資料:WPICリサーチ、メタルズフォーカス、Statistica

【プラチナの供給】

資料: 2000年から2012年はジョンソン・マッセイ、2013年から2018年はSFA(オックスフォード)、2019年から2023年(予測)はメタルズフォーカス、2024年から2027年はWPICリサーチ

プラチナはどこから?

地殻に存在する量が極めて少ないプラチナはゴールドの30倍の希少性があると言われ、92ある天然元素の中の原子番号72番目の元素だ。この希少なプラチナを採算性のある鉱山採掘によって生産できるのは世界でたった4カ所。その中で埋蔵量と生産量で抜きん出ているのが南アフリカで、世界の年間鉱山供給の75%を賄う。その他の生産はロシアが11%、ジンバブエが8%、北米が4%、これ以外に中国、コロンビア、フィンランドなどでごく小規模の生産活動が行われている。供給地域が限定されているがために、地政学的な動向、天候、地域特有の問題など、様々なリスクがそのエリアの鉱山産業に影響を及ぼす。

世界のプラチナ市場の全体像

資料: WPIC プラチナ四半期 2022年第3四半期、メタルズフォーカス

世界のプラチナ生産の中心は、南アフリカのブッシュフェルト複合岩体と呼ばれる地域で、プラチナを含む経済的に価値のある鉱物の80%がここに埋蔵されている。

【ブッシュフェルトの PGM 採掘】

資料: 南アフリカ鉱山協議会

プラチナはその希少性に加え、採掘作業そのものが容易ではない。世界で採掘される鉱物の70%以上が地表に近い場所で採掘されているのに比べ、プラチナが埋蔵されている地域の地理的条件によりプラチナの採掘は地下深い場所で行われる。唯一の例外は南アフリカのモガラクエナで、この世界最大の露天掘りプラチナ鉱山からは、世界の年間供給の約8%にあたるプラチナが生産されている。

プラチナは単独で存在することが非常に稀な元素で、プラチナの他にパラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムからなる白金族元素、ニッケルや銅、クロムなどのベースメタル、あるいはゴールドやシルバーなど、その他の鉱物とともに鉱床を形成している。

つまりプラチナ鉱山ではプラチナを1グラム採掘・精錬・販売するにも、その他の鉱物が混在した原料を生産することになり、様々な鉱物の混在率は鉱山によって大きく異なっている。それぞれの鉱物はそれぞれ対応する世界市場で値が付けられ、鉱山会社の全体の販売利益を形成する。それぞれの鉱物の生産量で販売利益を割って得られるのが、鉱山レベルのバスケット価格だ。

採掘される鉱石の構成によってプラチナは主産物、副産物どちらにも分類される。たとえば南アフリカとジンバブエではプラチナは主産物、ロシアではプラチナは主にニッケルの副産物、北米ではパラジウムとニッケルの副産物として扱われている。鉱石によって異なる様々な鉱物の割合は「プリルスプリット」と言われる。

鉱山生産者の利益は採掘された鉱石の量とその鉱床の品位の両方によって決まる。品位が高いほど多くの鉱物を含み、その鉱石に含まれる鉱物のコモディティーとしての価格が利益を左右する。PGM 生産者の利益は、今まで約 60% がプラチナだったため、プラチナ価格が利益に大きな影響を及ぼしてきたが、2018年以降はパラジウムとロジウムの価格が上昇し、これらの鉱物生産が利益の約70% を占めるようになってきている。

プラチナの生産は採掘、選鉱、製錬、精製など複雑な物理的、及び化学反応を利用した加工プロセスを経る。

【PGM 生産】

資料: WPIC リサーチ、南アフリカにおける典型的な選鉱

プラチナ鉱山供給

鉱山活動には莫大な初期投資が必要である。鉱床の発見・探査を経て、鉱山開発、そして採掘と精錬加工。こういった活動に対する投資判断を下すためには、将来得られる鉱物の販売利益から鉱山運営に関連する経費(運営コスト、新規投資、税金、財務コストなど)を引いた数字が初期投資に対する良好なリターンを示していなければならない。(鉱山会社の多くは内部収益率として15%をベンチマークとして採用している。)PGMの埋蔵が発見されてから生産に至るまで10年以上かかることも珍しくなく、プラチナの鉱山供給に影響を与える要因としては下記のようなものが考えられる。

1. 埋蔵量 – その鉱物がどれだけ鉱床に存在するのか

2. 鉱物の経済性 – 現在のコモディティー価格を考慮に、その鉱物をどれだけ、いくらで採掘できるのか

3. 将来性 – 10年先の計画を立てるために必要となる、将来の需要に対する明るい見通しと安定した規制及び財務的環境

4. 事業参入及び撤退への障害 – 新規事業の開始及び停止、あるいは中断はどの程度容易あるいは困難か

5. 鉱山権益 – 社会的・環境への配慮を含む複雑な権益

プラチナ鉱山供給の展望

プラチナの鉱山供給は2005年までは年間 6 moz(186.6トン)の安定した供給が予測されており着実に増えていた。しかし、今後は供給が増える可能性がないわけではないが、インパクトのある鉱山開発プロジェクトは数少なく、決定されている計画のほとんどが、資源が枯渇した古い鉱山からの移行プロジェクトである。

この背景には南アフリカの不安定な環境だけではなく、プラチナ鉱山会社の投資家が生産環境よりも株主利益を重視する姿勢であることを反映している。南アフリカの鉱山会社が直面している問題は社会的・経済的環境の悪化による社会不安の増加、そして 国営電力会社である ESKOMの問題からくる電力不足などがある。

プラチナについて動画で学びたい方は以下ページもご参照ください。
https://www.jpx.co.jp/ose-toshijuku/tag/31.html

(ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル)
(World Platinum Investment Council, WPIC)

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