株価は景気に先行するのか?遅行するのか?
提供元:野村證券(FINTOS!編集部)
投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました!
Q.株価は景気に先行するのか?遅行するのか?
株価の下落時に「経済指標は悪くなっていないので株価は戻る」という解説をよく耳にします。一方で、「株価は景気を先取りする」という考え方もあります。これら二つの考え方はどのように整合させればよいのでしょうか。
A.株価は経済に限らずあらゆるイベントに対して、先取りも遅行もしない
お答えさせていただく前に、このご質問は株式市場にとって難度の高いテーマで、答える人間のバックグラウンドや信条により、その答えが大きく異なる可能性が高いことをご理解いただきたいと思います。
そのうえで、個人的には、「株価は経済に限らずあらゆるイベントに対して、先取りも遅行もしない」と考えています。そして、株価の上下動は、「事前に市場が想定していた状況(≒コンセンサス)と、結果との間に乖離があった」場合に起きる事象と考えています。
何かが起きて株価が大きく下落した時、「経済指標は悪くなっていないので株価は戻る」というコメントはよく目にします。これも、(1)何か悪いことが起きて瞬間的に期待成長率等が下方屈折、(2)その後時間の経過とともに予想ほど事態は悪化せず期待成長率が上方にシフト、という現象に株価がリアルタイムで反応している、と考えた方が自然だと考えます。
洋の東西を問わず、株価の方向感を占うときに、アナリスト予想の修正をもとに算出されたリビジョン・インデックスが重要視されるのも、業績修正などのイベントは事前に予想することの難易度が高く、株価も同時に反応することが多いためと考えられます。
なお蛇足ですが、「リスクプレミアムとは金利・利益などで説明できない残差」という立場の人は、株価が短期的に下落した際に「不確実性が高まりリスクプレミアムが増大した」という表現をよく使うようです。逆に年金資金など長期運用の観点からは、短い時間軸でリスクプレミアムが大きく変動していると考える人は少数派です。
(野村證券投資情報部 伊藤 高志)