株式投資の押し目買いとは?戻り売りや移動平均線についても解説
押し目買いとは、価格が上昇傾向にある中で、一時的に下落する際に買付けを行うことを指します。一方、戻り売りは、下落傾向で一時的に上昇する際に売付けを行うことです。
本記事では、押し目買いや戻り売りを進める際のポイントについても解説します。
押し目買いとは
「押し目」は、上昇していた株価が一時的に下がることを指します。そのため「押し目買い」とは、チャートの流れに沿って押し目のタイミングで買うことです。
押し目買いの理解を深められるように、タイミングや目的などについて詳しく解説します。
「押し目買い」はタイミングが大切
押し目買いをするには、価格が上昇傾向にある中で、一時的に価格が下落するタイミングで買付けを行わなければなりません。したがって、取引のタイミングが大切です。
押し目買いのタイミングを見誤ると、購入しても期待していたほど株価が上昇しないことがあります。また、一時的な下落と考えていたにもかかわらず、結果的に下落し続けると損失を抱えることもあるでしょう。
「押し目買い」の目的
押し目買いの目的は、上昇傾向にある株を購入することで、さらなる上昇を期待するものです。一般的に、一度上昇トレンドに入るとそのまま値上がりが続く傾向がありますが、そのとおりになると予想される場合には、押し目買いにより利益を期待できます。
また、上昇トレンドにあるときでも、絶えず株価が上昇していくわけではありません。上昇トレンドでは、上下の値動きを繰り返しながら上昇することが一般的なため、少しでも安い価格で有望株の購入を目指すことも、押し目買いの目的です。
「戻り売り」もある
押し目買いと対照的な言葉として、戻り売りがあります。戻り売りとは、下落トレンドにある中で、一時的に価格が上昇するタイミングで売ることです。下落トレンドにあるときでも、一般的に絶えず下落していくわけではないため、戻り売りで利益を期待できます。
ただし、押し目買いと異なり、戻り売りは主に「空売り」で使われる手法です。空売りとは、自分の手元にない株式を、借り入れるなどの方法により売却することです。
参考:日本取引所グループ「売買の規制 空売り規制の概要」
参考記事:株式投資の 中・上級者へのステップアップ!「信用取引」とは?
押し目買い・戻り売りを進める3つのポイント
「押し目」は、すぐに見極められるものではありません。十分な知識を得た上で、押し目買いや戻り売りを進めるようにしましょう。
押し目買い・戻り売りを進める際のポイントは、主に以下の3つです。
1. チャートをチェックする
2. トレンドラインから判断する
3. 移動平均線をチェックする
自分で押し目買いや戻り売りを進められるように、各ポイントを詳しく解説します。
1.チャートをチェックする
チャートとは、株価の動きをグラフ化したものです。チャートを分析すると、トレンドやパターンが見えてきます。
今まで押し目買いをしたことがない方は、まず1日単位・1週間単位・1カ月単位で興味のある銘柄の動きをチェックしてみましょう。初心者でも、対象の銘柄が今上昇トレンドにあるのか、それとも下落トレンドにあるのかなどの情報が、見えてくることがあります。
なお、株価を対象企業の業績や財務情報などから予測することが「ファンダメンタルズ分析」であるのに対し、チャート分析は過去の値動きから将来を予測する「テクニカル分析」のひとつです。
2.トレンドラインから判断する
トレンドラインとは、ジグザグに動く株価のチャートを、高値か安値同士で結んだ直線のことです。トレンドラインを見れば、現在対象の銘柄が上昇傾向にあるか、下降傾向にあるか見えてきます。
トレンドラインを確認して、右肩上がりであれば上昇傾向、右肩下がりであれば下降傾向と判断することが一般的です。とくに、傾きが大きければ大きいほど、その傾向が強いと判断できます。
3.移動平均線をチェックする
移動平均線は、一定期間における株価の平均値を計算して、その推移を折れ線グラフにしたものです。短い期間で平均したものを「短期移動平均線」、長い期間を「長期移動平均線」、その間の線を「中期移動平均線」と呼びます。
対象の銘柄が上昇傾向にある場合、移動平均線も上昇し、下落傾向にある場合は下落することが一般的です。また、上昇傾向時の株価は移動平均線よりも上、下降傾向時は下にあります。
株価チャートの見方や種類については、以下の記事でも解説しているので参考にしてください。
株価チャートの見方は簡単!ローソク足とトレンドに注目してみよう
移動平均線の基本を理解しよう
移動平均線は、「押し目買い」や「戻り売り」に限らず、投資のさまざまな場面で用いられる指標です。そこで、移動平均線の基本を理解しておくようにしましょう。
移動平均線には種類がある
移動平均線には、単純移動平均線(SMA)・加重移動平均線(WMA)・指数平滑移動平均線(EMA)、といった種類があります。
単純移動平均線は、一定期間の平均した結果を線でつないだシンプルなものです。大まかなトレンドを把握する際に役立ちます。
加重移動平均線は、直近の価格に比重を置いたものです。また、指数平滑移動平均線は、加重移動平均線よりもさらに直近の価格に比重を置きます。
そのため、3種類の中で一番値動きに反応しやすいのは、指数平滑移動平均線です。
ゴールデンクロスとデッドクロスを活用する
移動平均線を使う際は、ゴールデンクロスとデッドクロスに注目しましょう。
ゴールデンクロスとは、短期移動平均線が長期移動平均線に対して、下から上に突き抜けることです。移動平均線をチェックしてゴールデンクロスが出現すると、上昇トレンドに入った可能性があるため、一般的に「買い」のタイミングとされています。
その反対に、デッドクロスとは、短期移動平均線が長期移動平均線に対して、上から下に突き抜けることです。デッドクロスが出現すると下降トレンドに入った可能性があるため、一般的に「売り」のタイミングとされています。
押し目買いの注意点
押し目買いをしても、期待どおりの結果が得られるとは限りません。以下の点に注意しましょう。
・「だまし」が出現することがある
・「高値つかみ」の可能性もある
・予測どおりになるとは限らない
ここでは、それぞれの注意点を解説します。
「だまし」が出現することがある
テクニカル分析における「だまし」とは、指標が「買い」や「売り」のシグナルを出しているにもかかわらず、予想したとおりに動かないことです。「だまし」のタイミングで購入(または売却)すると、期待した利益を得られないばかりか、損失を抱えることにもつながりかねません。
とくに、チェックする期間が短いと「だまし」に惑わされやすいです。また、指数平滑移動平均線は値動きに敏感に反応する分、「だまし」の回数も多くなります。
「高値つかみ」の可能性もある
「高値つかみ」とは、株価がとくに高いタイミングで購入してしまい、その後値下がりが続くことです。上昇トレンドにある銘柄でも、押し目買いした途端に下落トレンドに転じ、「高値つかみ」になる可能性があります。
押し目買いで「高値つかみ」をしてしまうと、本来利益を期待していたにもかかわらず、含み損を抱える結果になりかねないでしょう。
予測どおりになるとは限らない
株式投資では、想定外の事態が生じることもあるため、自分の予想どおりになるとは限りません。また、参考にはなりますが、完璧に予測できるチャートや分析手法はないことも理解しておきましょう。
そのほか、押し目買いをしようとしても「押し目」のタイミングが現れないまま上昇が続き、欲しい株を買いそびれることもあります。
押し目買いに失敗したときに意識すること
株価は予想どおりに動くとは限らないため、押し目買いに失敗することもあります。万が一失敗したときは、以下の点を意識することが大切です。
・「損切り」を検討する
・損失分を急いで取り返そうとしない
それぞれ解説します。
「損切り」を検討する
「損切り」とは、現在含み損を抱えた状態にある保有株式を売却し、損失を確定することです。押し目買いで失敗したら、損切りも検討するようにしましょう。
「予想したタイミングで上昇に転じなかったけれど、もう少しでまた上がるかもしれない」と考えていると、売り時を見失いずっと保有し続けること(塩漬け)になりかねません。
損失分を急いで取り返そうとしない
押し目買いで失敗すると、損失分をすぐに取り返したくなり、再チャレンジしたくなることがあります。しかし、さらに失敗を重ねて損失を抱える可能性があるため、急いで取り返そうとしないことが大切です。
慌てていると、今までできていた判断さえ満足にできなくなることがあります。失敗したときこそ、冷静な行動を心がけましょう。
状況次第で押し目買いと戻り売りも検討する
「押し目買い」は、上昇トレンドで一時的に価格が下落するタイミングで買うことです。また、下落トレンドにおいて、一時的に価格が上昇するタイミングで売る「戻り売り」もあります。
押し目買いや戻り売りを進める際は、トレンドラインや移動平均線などをチェックすることがポイントです。ただし、さまざまな指標を活用しても、予測どおりに値が動くとは限りません。
株式投資をはじめたら、状況を見極めつつ、押し目買いや戻り売りも検討しましょう。
参考:日本取引所グループ「用語集 押し目買い(おしめがい)」
参考:日本証券業協会「押し目買い(おしめがい)」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。