本から開く金融入門

【三宅香帆の本から開く金融入門】

分かった方がいいんだろうけど、勉強せずにいた「決算」に手をつけたいあなたへ 『決算資料からビジネスの仕組みが見えてくる』

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「私も株式投資を始めたい!」

そう思って、証券会社を選び、口座を開設し、さあ「株」を買ってみよう、と思った時……。はて、と気づく。
「みんな、どうやって投資先を選んでるんだろう?」
ネットで調べてみると、自分の好きな製品を扱っている会社を選ぼうだとか、株主優待を見てみようだとか、書いてある。しかしせっかく株式投資を行うのならば、損をしたくはない。好きな製品の会社に投資をしたくとも、ベストなタイミングというものは存在するだろう。
はたして、どうやって自分の投資先を選ぶのか? そして企業がいまどのようなフェーズにいて、今後成長し、株価が上がる可能性があるかどうか、どうやって知るのだろう?
そう首を傾げた時、辿り着く情報源がある。
それが、「決算」だ。

企業の提示する「決算」を読み解くことができれば、特別な情報を手に入れることにお金を払わなくとも、良い投資先を見つけることができる。そして現代の企業がどのような仕組みで動いていて、どのような財政状況にあるのか、今後どう成長する見込みがあるのか、理解することができる。
そんな情報の宝庫が「決算」なのだ。
が、この「決算」、一見ただ数字が並んでいるだけだったり、似たような単語が連なっていたりして、意外と読みづらい。

もちろん数字を読まずに企業が出している簡単な説明だけ読んでもいいのだが……当然ながら、企業だって良いポイントだけ私たちに見せたいわけだ。今期の良かったところと悪かったところの双方について全て分かりやすく説明してくれるわけではない。
「本当のところはどうなんだろう?」と、深く決算を読み解きたいならば、やはり「決算」の数字の推移から、その意味を理解できるようになるのが一番良いのだ。
今回紹介する本は、決算を読んだことのないあなたに、「決算はどう読んだらいいのか?」を教えてくれる一冊だ。
「ああ、決算って、会社でもよく読めって言われるし、分かった方がいいんだろうけど、なんとなく難しくて勉強できてないんだよね……」とため息をついている方もいるかもしれない。しかしそんなあなたにこそ、この本を読んでほしい。「決算」を理解するうえで良い入門書になってくれるからだ。

決算を「具体的に」読む方法を教えてくれる本

決算を「具体的に」読む方法を教えてくれる本

本書が扱うのは、企業が四半期ごとに公表している、決算資料。

決算資料を読み解くスキルを身に着けるには、そもそもどの数字に着目するべきなのか? 何の知識を身に着けたらいいのだろう? と疑問に思う人も多いかもしれない。しかし本書は、「企業の決算資料を読み解きたければ、決算説明用スライドを見るべき」と最初に述べている。
決算説明会用スライドとは何かといえば、企業が投資家向けに作る、決算の内容を分かりやすくまとめたスライドのこと。数字ばかりが並んでいる決算短信とにらめっこするより、企業がせっかく分かりやすくまとめてくれているスライドがあるのだから、こちらを見ましょう! と伝えてくれる。
更に、それでは決算スライドはどこで入手できるのか? 通期、四半期のどちらを読めばいいのか? など、著者は「普段のやり方」を読者に説明する。

このように本書は、「実際に著者がいつもどのようにして決算の資料を読み解いているのか?」をきわめて具体的に、わかりやすく見せてくれているのが、なにより良いポイントになっている。
実際に具体的な企業の決算を解説する章もある。その企業とは、ZOZOTOWNや楽天カード、あるいはマネーフォワードなど、私たちにとって身近な企業ばかり。さらにそれらの企業の決算資料を使って、「この数字の変遷が気になる」「なぜこの数字が出てくるのかを深堀りする」など、きわめて具体的に解説してくれる。そのため本書を読んでいると、まるで隣でできる上司が決算資料を一緒に読み解いてくれているような心地になるのだ。

決算は、ビジネス全般の役に立つ!

さて、決算資料とは、何のために読むのだろう?
もちろん冒頭に述べたように「株式投資のため」もひとつの理由だろう。しかし決算はそれだけに使うものではない。本書の著者は、決算資料はビジネスに関わるさまざまな場面に利用することができる、と言う。

決算スライドによって会社の特徴がくわしくわかると、普段の仕事や生活にも役立ちます。自分の会社の競合や隣接する業界の企業の動向を知ることで業界全体を俯瞰し、自社の相対的な立ち位置が把握できるようになります。クライアントや上司へ提案するときに競合との比較までしてあれば説得力が高まるでしょう。転職活動でも「あの会社は業界内でどんな位置にあるのか」を見ておけば会社選びの指針にもなります。
(『決算資料からビジネスの仕組みが見えてくる』より引用)

さらに就職活動にも役立つ、と著者は述べる。なぜなら企業の成長率を決算資料から理解することができれば、その企業の個性を把握することができるのだ。自分の求めている環境がそこにあるのかどうか、決算資料から分かることもある、というわけだ。
仕事でも、就職活動や転職活動でも、さらには投資においても、有用な「決算」。
なんとなく分かっておいたほうがいいんだろうけれど、実はよく分からないまま今に至ってしまった……そんな後悔を抱えているあなたに、ぜひ今おすすめしたい。決算を読み始める入門書として、最高の一冊なのだ。

著者/ライター
三宅 香帆
京都大学大学院人間・環境学研究科卒。会社員生活を経て、現在は文筆家・書評家として活動中。 著書に『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』などがある。フリーランスになったことをきっかけに、お金の勉強を始めている。
用語解説

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