1年間取り組むだけでも大違い
年金は1年間でいくら増やせるのか、4つの方法で金額を試算してみた
提供元:Mocha(モカ)
年金額が少なくて心配という声をよく耳にします。将来の生活を考えると、できれば年金は少しでも多くもらえたらいいですよね。そこで、年金額を増やせる方法を1年間やってみたとき、いくらくらい増額できるかを調べてみました。また、年金収入を増やすために今からできることもご紹介します。
老齢年金の金額はどのように決まるの?
65歳になるともらえる年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。これらの年金額を求める計算式があるのでご紹介します。
●老齢基礎年金の計算式
老齢基礎年金は、20歳から60歳までの保険料納付済期間と免除期間で年金額が決まります。国民年金の免除期間がある場合、免除の割合に応じて年金額に反映されます。また、計算式の基本となる満期の金額は毎年変わります。
○老齢基礎年金の年金額(2023年4月分~2024年3月分の場合)
※満額の年金額は、月額6万6250円 × 12ヶ月= 79万5000円
老齢基礎年金 = 79万5000円 × {保険料納付済月数 +(全額免除月数× 4/8)+(4分の1納付月数 × 5/8)+(半額納付月数 × 6/8)+(4分の3納付月数 × 7/8)} ÷ 480月(加入可能年数40年 × 12ヶ月)
国民年金に40年間加入した場合(保険料納付済月数が480月の場合)は、満額79万5000円をもらえます。(※2023年度の場合)
●老齢厚生年金の計算式
老齢厚生年金は、厚生年金保険に加入し、老齢基礎年金の受給要件を満たした人がもらえる年金です。その年金額は、厚生年金保険の加入期間と標準報酬月額により決まります。
また、2003年3月以前から働いている人は、2つの計算式(AとB)を合計して年金額を求めます。
・2003年3月までの計算式
A = 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 2003年3月以前の加入期間月数
・2003年4月以降の計算式
B = 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 2003年4月以降の加入期間月数
1年間でいくら年金を増やせる?やってみたい4つの方法
老齢年金は、基本的に国民年金や厚生年金の加入期間で決まります。たとえば国民年金の加入可能期間は40年なので、40年に満たない場合は60歳から任意加入して加入期間を延ばせば年金額が増えます。また厚生年金保険は70歳まで加入できるので、働く期間を延ばせば年金額を増やすことも可能です。ほかにも、繰り下げ受給など年金額を増やせる方法はあります。
ではここで、年金額を増やせる4つの方法を1年間やってみたとき、いくら年金額を増やせるのか見てみましょう。
●年金額を増やす方法その1:国民年金に任意加入する
国民年金の加入期間が40年に満たない場合、60歳から65歳までの間、国民年金に任意加入すると年金額を増やせます。
1年間任意加入する場合、年金の増額分は以下の通りです。(※2023年度の場合)
79万5000円 × 12月/480月 = 1万9875円
ちなみに、任意加入できる人は以下の要件に該当する人です。
・日本に住所のある60歳以上65歳未満の人
・老齢基礎年金の繰り上げ受給をしていない人
・20歳以上60歳未満の保険料納付月数が480月未満(40年)の人
・厚生年金保険、共済組合等に加入していない人
1年間任意加入すれば、年金を約2万円増やすことができます。国民年金の加入期間が40年に満たない場合は、任意加入を検討してはいかがでしょうか。
●年金額を増やす方法その2:付加保険料を納める
国民年金の第1号被保険者や任意加入する人は、付加保険料を上乗せして納めると、年金額を増やすことができます。
付加年金とは、通常の保険料に加えて月額400円の付加保険料を納めると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされる制度です。
付加年金額は「200円 × 付加保険料納付月数」となっています。
1年間、付加保険料を納めた場合、もらえる付加年金は以下の通りです。
200円 × 12月 = 2,400円
つまり、付加保険料を2年間もらうと元が取れ、3年目からはお得になります。したがって、できるだけ長く納めるといいでしょう。付加保険料を納めたいときは、役所か年金事務所に「国民年金付加保険料納付申出書」を提出します。
ただし、国民年金保険料の免除を受けている人、国民年金基金に加入している人、iDeCoの掛金を上限の6万8000円まで払い込んでいる人は付加保険料を納めることはできません。
●年金額を増やす方法その3:厚生年金に加入して長く働く
厚生年金に加入して長く働くことで、年金額を増やすことができます。
たとえば、平均標準報酬額20万円の人が退職を1年間延長して働いた場合、増やせる年金は以下の通りです。
20万円 × 5.481/1000 × 12月 = 1万3154円
平均標準報酬額がもっと高ければ、増やせる年金額は多くなります。また、働く期間が長くなれば、その分年金も増やせます。体力的に問題がなく、年金を増やしたいと考えるなら、長く働くことを検討してもよいかもしれません。
●年金額を増やす方法その4:繰り下げ受給する
65歳からもらえる年金を66歳から75歳までの間に繰り下げて受給することで、年金額を増やすことができます。その増額率は1ヶ月につき0.7%です。
もし受給開始年齢を66歳に繰り下げた場合、年金を8.4%増やせます。
たとえば、老齢基礎年金の年額が72万円の人が1年間繰り下げると、年金額は以下のようになります。
72万円 × 1.084 = 78万480円
65歳から年金をもらうよりも、6万480円増やせることになります。この増額は大きいですよね。
年金収入を増やすために今からできること
他にも年金収入を増やせる方法はあります。ここではおすすめの方法を3つご紹介します。どれも今からできることなので、活用してみてくださいね。
●国民年金基金に加入する
自営業者やフリーランスなら、国民年金基金に加入することをおすすめします。日本の公的年金制度は2階建てになっています。しかし、自営業者など国民年金の第1号被保険者には会社員の厚生年金のような2階部分がありません。しかし、国民年金基金に加入すれば老齢基礎年金の上乗せ部分をつくることができます。掛金全額は社会保険料控除の対象になるのでお得です。
●iDeCoに加入する
老後資金の準備に活用できるiDeCoは、年金だけでは不足する生活費の補てんをすることができます。老齢給付金は原則60歳からもらうことができ、ライフプランに合わせて一時金もしくは年金として受け取れます。また、掛金全額が所得控除になり、運用益は非課税です。老齢給付金を受け取るときも税制優遇を受けることができます。
●つみたてNISAで運用する
運用の初心者でも、自分のペースで少額投資ができるのがつみたてNISAです。年間40万円までの投資で得られる運用益が非課税になります。2024年からは新NISAのつみたて投資枠となり、年間120万円まで非課税投資ができるようになります(成長投資枠と合計すると、年間360万円まで非課税投資が可能)。
NISAは銀行の積立定期預金よりもお金を増やしやすいかもしれませんが、日々価格が変動し多少のリスクがあることは頭に入れておきたいです。
まとめ
「任意加入する」「付加保険料を納める」「長く働く」「繰り下げ受給をする」の4つの方法を1年間やってみたとき、年金がいくら増えるのかをご紹介しました。なかでも繰り下げ受給は増額しやすいので利用してみてもよいかもしれません。また、1つの方法だけに限らず、いくつかを組み合わせて試してみるのもよいでしょう。とりあえずは自分にできることを1年間だけでもやってみてはいかがでしょうか。
[執筆:ファイナンシャルプランナー 前佛朋子]
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