マネ部的トレンドワード

毎日の測量を可能に

2ヘクタールを150秒で処理。コマツの「ワオ!」を探求する姿勢から生まれたドローン測量

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市場で注目を浴びているトレンドを深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。ロボティクス・ドローン編4回目の本記事では、小松製作所(以下、コマツ)などが2021年に発足したEARTHBRAINの提供する「ドローン測量」を取り上げる。

建設・土木現場の測量作業は、かつて2人1組で人の手により多くの時間を使って計測し、その後のデータ処理も一定の時間をかけざるを得なかった。これらをドローンが行い、データ処理を2ヘクタールあたりわずか150秒で完了するのがEARTHBRAINのドローン測量だ。一体どんな技術なのか。EARTHBRAIN代表取締役会長であり、コマツ執行役員スマートコンストラクション推進本部長の四家千佳史氏に聞いた。

コマツの「出島」が進化させた、超高速のドローン測量

建設業の人手不足が深刻になる中、コマツはDXによる建設現場の変革に取り組んできた。2015年から提供開始した「スマートコンストラクション」はその代表的ソリューションで、建設現場の情報をICTでつなぎ、安全性と生産性の向上を実現するサービスが作られている。

スマートコンストラクションの開発をさらに加速させようと、同開発部門を分社する形で生まれたのが、2021年発足のEARTHBRAINだ。「コマツは“モノづくり”を得意としてきた企業ですが、スマートコンストラクションは現場の方の体験を変える“コトづくり”の事業と言えます。その開発スピードを上げるには、出島のように部門を外に出し、デジタル技術を活用したサービス開発に特化した組織を作りたいと考えました」と、四家氏は語る。

さらに、スマートコンストラクションの世界観を実現するには「コマツ以外のさまざまな技術が必要」との考えから、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ、ソニーセミコンダクタソリューションズ、野村総合研究所も出資するジョイントベンチャーとなった。

このEARTHBRAINが展開しているのが「ドローン測量」のサービスだ。改めて測量とは、建設工事などを行う前に、その土地の広さや高低差を計測すること。建設工事は、取り除く土と搬入する土の量を最小限に抑えながら図面通りの地形にすることが望ましい。そのために土地の現状データを取る必要がある。

「ドローン測量を行う前は、作業員2人1組で専用の測量機を使い、およそ20mごとに計測していました。しかしそれでは、地点と地点の間、20m間の細かな地形の変化はデータ化されません。結果、土地を平面にするために必要な土量や作業にどうしても誤差が生まれたのです。これは現場の問題ではなく、当時の技術ではそれが限界でした」

これを変えたのがドローン測量だ。上空から何百万の地点で撮影を行い、その地形をデジタル上の三次元(3D)データに変える。計測できない“余白”は限りなく減り、必要な土量・作業がより正確にわかる。この技術はすでに2015年に開発されており、コマツは日本でもいち早く取り入れたという。
「とはいえ、ドローン撮影の後に画像データを処理し、三次元データにするまでに1日はかかっていました。しかし、現在私たちはこの処理を高速化し、およそ2ヘクタールなら150秒での処理を可能にしています」

現場での高速処理を実現する、円型の装置

上述の「高速処理」について深掘りしたい。ドローン測量では、上空から地形を撮影した後、大量の画像データをドローンからサーバーへ送り、ソフトウェアで三次元化へ向けた処理を行う。EARTHBRAINの技術ではこの一連の流れをすべて現場で行える。カギになるのが「Smart Construction Edge2」という、円型の機械だ。

ドローン測量を行う際、この機械も現場に配置し、撮影したばかりの画像データを高速処理。「土地にある建物や建機など、測量する上で不要なものもAIが画像から自動除去します」という。

また、ドローン測量ではGPS情報も活用するが、GPSは時間帯や環境ごとに誤差が発生する。その誤差情報もこの機械が収集しており、データ化の際に反映・修正していく。

「この機械により、毎日でも測量できるようになりました。私たちがやりたかったのは、工事をする方々が1日の仕事量を把握できるようにすること。そのためには土地の変化を簡単かつ正確に、短時間でデータ化することが必要だったのです」

かつて同社ではこれらのサービスを「EverydayDrone(エブリデイドローン)」と名付けていた。その背景には、毎日のようにドローンを飛ばして測量できるという意味がある。

Smart Construction Edge2は、ボタン1つのシンプルなデザインで、操作も極力簡単にしたという。建設現場はさまざまな技術が導入されながら、思うように解決につながらなかった事例もあり、「技術を信頼していない方も多い」と四家氏。だからこそ、なるべく現場の負担にならないよう、簡単な操作、シンプルなデザインにこだわった。

「私たちが意識してきたのは、現状を起点にものを考えないことです。コマツの社長がよく言うのは、『お客さまから“ワオ!”という驚きの声をもらえ』ということ。現状が起点ではお客さまは驚きません。今回も、毎日の地形の変化を把握できたら現場の方はきっと喜ぶよねと。そのために何をすれば良いかを突き詰めていきました」

この実現のために最適だったのがドローン測量。「ドローンはあくまで手段であり、目的はお客さまの課題解決なのです」と話す。

こう語る四家氏は、コマツの中で異色のキャリアの持ち主でもある。元々は1997年、福島県郡山市で建設機械のレンタル会社を3名で立ち上げ、2008年には社員700名まで成長した。同年、コマツが同社を傘下にし、以降、四家氏はコマツの一員となり、2015年からスマートコンストラクションの舵取りを行ってきた。

「建設現場のデジタル化はハードルが高く、失敗も数え切れません。心が折れそうになることもあります。そんなときに決めているのは、お客さまのところへ行って話すこと。自分たちのやろうとしていることが、本当にお客さまのためになると確認できれば、心は折れません」

こうした思いを胸に進めてきたスマートコンストラクションの道のり。現場の課題解決を突き詰め、驚くような技術を実現していくのが本望ならば、同社のドローン測量は、間違いなくその象徴的な事例だろう。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2023年4月現在の情報です

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。

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