適用されているのに知らない人多数!

住民税の調整控除ってなに?

提供元:Mocha(モカ)

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住民税には、住民税から一定額を差し引く(控除する)「調整控除」というものがあります。金額はそれほど大きくないのですが、年間の所得が2500万円以下のすべての方に適用される控除です。今回は、住民税の調整控除について確認していきましょう。

住民税の調整控除とは

源泉徴収票や住民税の税額決定通知書には、所得控除の欄があります。実は所得税と個人住民税では、配偶者控除や扶養控除といった人に対する控除(人的控除)には金額の差があります。

住民税の調整控除は、人的控除の差に基づく負担増を減額する措置のことです。

2007年1月より所得税から個人住民税に税源移譲(納税者が国に納める税を減らし、都道府県や市区町村に納める地方税を増やすことで、国から地方へ税源を移すこと)を行う際に、住民税の所得割の税率が変更されました。しかし、所得税と個人住民税では人的控除額が異なるため、変更後の税率をそのまま適用すると、所得税と住民税を合わせた税額が税源移譲前より増加する場合があります。

そこで、個人住民税の所得割から一定額を控除することで、税負担が増えないように調整しています。これが住民税の調整控除です。ただし、2021年度(令和3年度)課税分以降は、合計所得金額が2500万円を超える場合には、住民税の調整控除の適用はありません。

住民税の調整控除が導入された背景

税源移譲は、どうして行われたのでしょうか。

少子高齢化が進んでいる日本は、将来の働き手が減り、税収が少なくなることが予想されます。国にできることにも限界があるため、「地方にできることは地方に」という理念の下、活力のある地域社会を効果的・効率的に創っていくために、2007年に「三位一体の改革」が行われました。

三位一体の改革とは

・国から地方への補助金・負担金を廃止・縮減
・地方への税源移譲
・地方交付税の見直し

この3つを一体として行う改革をいいます。

この改革は、国のお金に頼るばかりではなく、地方公共団体が行うことについては、自ら決定し、自ら責任を持つ体制を確立して、地方分権を一層推進しようとめざしたものでした。これによって、国税から地方税へ約3兆円税源が移っています。

調整控除の対象と控除される金額

それでは、調整控除の対象となるものを確認しましょう。調整控除は、所得控除のうち人的控除について行われます。人的控除には、基礎控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除があります。

人的控除は、所得税と個人住民税では差があります。たとえば、基礎控除では合計所得金額が2400万円以下の場合、所得税では48万円、個人住民税では43万円で、5万円控除額が違います。そのほかにも、各控除で所得税と個人住民税の間に次のような差額があります。

●所得税と個人住民税の人的控除額の差額

筆者作成

調整控除の算出方法は、個人住民税の課税所得金額が200万円以下か200万円を超えているかで計算方法に違いがあります。

●個人住民税の課税所得金額が200万円以下の人

1. 所得税と個人住民税の人的控除額の差の合計額
2. 個人住民税の課税所得金額

上記の1と2のいずれか小さい額×5%

●個人住民税の課税所得金額が200万円超の人(2500万円以下の場合)

{所得税と個人住民税の人的控除額の差の合計額 -(個人住民税の課税所得金額 - 200万円)}× 5%

ただし、この計算額が2500円未満の場合は2500円になります。

たとえば、課税所得金額が300万円で、共働きで配偶者控除・配偶者特別控除がなく、高校生の子どもがいる場合を考えてみましょう。基礎控除5万円、扶養控除(一般)5万円の合計10万円が人的控除の差額になりますので、

{10万円 -(300万円-200万円)}×5%=-4万5000円

計算結果が2500円未満のときは、2500円となるので、調整控除額は2500円です。

まとめ

個人住民税の税額の計算は、均等割と所得割の合計により算出されます。住民税の所得割からは、調整控除額以外にも税額控除額、税額調整額などを差し引くことになります。均等割には、東日本大震災復興基本法により令和5年度まで1000円が加算されていますし、お住まいの自治体独自の税金が加算されていることもあります。

個人事業主やフリーランスのように、自分で確定申告をして税金を納める場合以外には、給料から税金が天引きされて納税は終わりという人も多いでしょう。税金のことを学ぶ機会も少なく、縁遠いと感じている人でも、税金の理解を深めておくと社会の動きを理解、予測することにつながります。住民税がどのようなしくみで課税されているかを知るだけでも、節税のポイントが見えてくるのではないでしょうか。

[執筆:ファイナンシャルプランナー 池田幸代]

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