インドネシアは、来月のASEANサミットの議長国に
IMFは世界経済見通しを発表
提供元:アイザワ証券
4月11日に、IMF(国際通貨基金)が最新の世界経済見通し[World Economic Outlook]を発表した。1月時点に発表した見通しに比べて、全体に下方修正が目立っており、世界のGDP成長率は、23年:2.8%(前回見通し比(同)-0.1%)、24年:3.0%(同-0.1%)であった。20年初めから続いている新型コロナウイルス禍、世界的金融引締め、インフレ、ロシアウクライナ問題など、これまで相次いできた問題への懸念は以前に比べて小さくなっているが、いずれの問題点も、解決しているとはいえない。
また、23年3月には、シリコンバレー銀行など米国の中堅銀行の破たんが相次ぐなど、米国、世界経済にとって新たな不安材料となっている。加えて、市場関係者がこれまであまり話題にしていなかった原油の問題も出てきた。事の発端は4月2日に行われた、OPECと非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」の会合での決定だ。もともと、このたびの会合が実施される前には、「OPECは今年下期には石油を増産する用意がある」と示唆していたが、結果は予想外の「協調減産」であった。大半の市場関係者が想定していなかった決定で、意外感のある結果だったといえよう。今後、米国の金融動向、原油価格、インフレの動向は、世界各国が経済正常化を進めていくうえで、大きな重石となりそうだ。
なお、このIMFの見通しにおいては、国別の予想も示されており、全体的には下方修正が多いという印象だ。しかし、そのなかで上方修正されている国もあり、そのひとつがインドネシアだ。23年のGDP成長率見通しは5.0%と、前回1月時点での予測:4.8%から+0.2%引き上げられた。
強気見通しの要因のひとつが、資源国としての評価だ。近年世界各国でEVの推進政策が進められているがEVに欠かせない電池の部材には、インドネシアが保有するレアアースが使われるケースが多く、同国がどのような方針を打ち出してくるか、世界的に注目されている。今後の、同国の資源関連政策の行方を見守っていきたい。
おりしも、5月9日からは、インドネシアが議長国となるASEANサミットが開催される。昨年11月のG20サミット、APEC首脳会議などに続いて、国際会議でASEANの国が議長国となったことになる。世界市場の中でASEAN各国の存在感が高まりつつあることをしめす、象徴的な出来事であったといえよう。
同サミットの開催に加えて、2023年は「日本とASEANの友好50周年」にあたる節目の年だ、という点にも注目したい。昨年あたりから、各地で関連イベントが開催されているが、イベント開催を含めここ数年は、ASEANと日本の関係が注目されやすい状況が続くと予想される。ほとんどのASEAN新興国は、日本、日本企業を高く評価している、という点もポイントが高い。今後は、ASEANと日本企業との連携の話が増えてきそうだ。
また、インドネシアが進めている「首都機能移転計画」も注目される。この計画は、インドネシアの首都機能を、現在のジャカルタから移転させる、という壮大な計画で、2024年には移転を開始、同国の建国100周年目にあたる2045年には移転を完了させようとしている。
移転先となっている「ヌサンタラ」の周辺は、現時点ではほぼ未開の地で、新たな都市の開発や周辺のインフラ整備など、開拓の余地はかなり大きい。このプロジェクトを完遂させることで、同国のインフラ整備の進展、中長期的な安定成長が期待できるとみている。
(提供元:アイザワ証券)