グロース株とバリュー株の違いとは?指標を使った見分け方も紹介
グロース株は今後の成長が期待される銘柄で、バリュー株は業績や企業価値と比べて相対的に割安な銘柄を指します。株式投資にあたってそれぞれの特徴を理解することが大切です。
本記事では、グロース株とバリュー株の違いや見分け方について詳しく解説します。
グロース株とバリュー株の違いとは
グロース株やバリュー株は、株式の銘柄を企業の業績などで分類したものです。グロース株とバリュー株の主な違いとして、成長性や割安性が挙げられます。
ここでは、グロース株とバリュー株の定義を確認していきましょう。
グロース株(成長株)とは
グロース株とは、将来大きく株価が上昇すると期待されている株式銘柄のことです。そのため、成長株と呼ばれることもあります。
投資家からの期待が大きいため、理論上の企業価値よりも株価が高い点がグロース株の特徴です。会社規模や業種で一括りにはできませんが、一般的に新興企業やテック企業などがグロース株に該当する傾向にあります。また、需要の高い商品やサービスを取り扱う企業も、グロース株に該当する可能性が高いです。
なお、グロース株に注目して投資することをグロース株投資と呼びます。
バリュー株(割安株)とは
バリュー株とは、対象企業の株価が企業価値や経済状況と比較して割安と市場から評価されている株式銘柄のことです。そのため、割安株と呼ばれることもあります。
一般的に、知名度が低かったり、注目を集めていなかったりすることで株価が低い状態にある点が特徴です。
なお、バリュー株に注目した投資をバリュー株投資と呼びます。
グロース株のメリット
グロース株に投資する主なメリットは、以下の2点です。
1. 大きな利益を期待できる
2.短期的な値上がりが期待できる
ここでは、それぞれのメリットを確認しておきましょう。
メリット1 大きな利益を期待できる
グロース株は今後さらなる成長を期待できる銘柄のため、大きなキャピタルゲインを得られる可能性がある点はメリットです。一般的に、業績が伸びれば「買いたい」人(需要)も増えるため、株価の上昇を期待できます。
なお、キャピタルゲインとは保有資産の価値が取得時より高まったタイミングで売却することで、得られる利益のことです。キャピタルゲインについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
メリット2 短期的な値上がりが期待できる
企業の成長が早ければ、短期間で株価が値上がりすることを期待できる点もメリットです。短期的に株価が急上昇した銘柄をタイミングよく売却すれば、大きなキャピタルゲインを得られる可能性があります。
短期的な値上がりを期待できる一方で、対象企業の成長が継続している局面では、短期的な値動きを気にせず長期投資にも使える点もメリットです。
グロース株のデメリット
グロース株に投資するデメリットは、以下の2点です。
1.割高株を購入することになる
2.大きな配当金は期待できない
それぞれ確認していきましょう。
デメリット1 割高株を購入することになる
一般的に、グロース株は投資家からの人気や注目を集めるため、株価が割高になる傾向がある点はデメリットです。割高な株を購入すると、予想したように対象企業が成長しない場合に株価が大きく下がり、含み損を抱える可能性があります。
また、一般的に株価が乱高下しやすいため、投資初心者は一喜一憂しないように注意が必要です。
デメリット2 大きな配当金は期待できない
グロース株投資では、大きな配当金を期待できない点もデメリットです。一般的に、配当金が出にくい理由として、成長のために利益を研究開発費などに投じている点が挙げられます。
なお、株式の売買益をキャピタルゲインと呼ぶのに対し、配当金を受け取ることをインカムゲインと呼びます。つまり、グロース株は、キャピタルゲインを期待できる一方で、インカムゲインは期待しにくい銘柄です。
バリュー株のメリット
バリュー株に投資するメリットとして、以下の点が挙げられます。
1.株価の下落率が相対的に低い
2.配当利回りが高い傾向にある
各メリットの内容を確認していきましょう。
メリット1 株価の下落率が相対的に低い
バリュー株は基本的に割安で購入できる銘柄で、株価の下落率が相対的に低い点がメリットです。もともと株価が低いため、急降下しないか気を揉む必要もありません。
なお、金融や投資などの世界で価格の変動率をボラティリティと呼びます。一般的に、バリュー株はグロース株よりもボラティリティが低く、比較的低リスクで運用できる点もメリットです。
メリット2 配当利回りが高い傾向にある
一般的に、バリュー株の株価は受け取る配当金と比較して割安な傾向にあるため、高い配当利回りを期待できる点もメリットです。配当利回りとは、株価に対する年間の配当金割合を示した指標で、以下の計算式で求められます。
配当利回り(%)=1株あたり年間配当金額 ÷ 1株購入価額 × 100 |
1株あたりの年間配当金額が同じ銘柄を比較する場合、分母である1株購入価額が安いバリュー株の方が他の銘柄よりも配当利回りは高くなることが、上記の式からわかるでしょう。
バリュー株のデメリット
バリュー株に投資するデメリットは、以下のとおりです。
1.大きな利益は期待できない
2.割安であるのに相応の理由がある
それぞれ詳しく解説します。
デメリット1 大きな利益は期待できない
グロース株と異なり成長が期待されている株ではないため、大きな利益を期待できない点が、バリュー株のデメリットです。一般的に、ある程度の利益を確保するまでに時間を要するため、短期的な投資にはなじみません。
また、バリュー株から期待されるインカムゲインをこれからも同額得られるとは限らない点に注意が必要です。
デメリット2 割安であるのに相応の理由がある
バリュー株投資をはじめた際に割安と考えていても、実は訳ありで安いだけの可能性がある点もデメリットです。訳ありの理由として、以下の点が挙げられます。
・業績が悪化している
・今後の成長が期待できない
・コーポレートガバナンス(企業統治)に問題を抱えている
・財務体質に課題を抱えている
バリュー株投資では、対象銘柄が上記の理由で割安になっていないかチェックしなければなりません。
指標を使ったグロース株・バリュー株の見分け方
2023年3月31日時点で、3,874社が日本取引所グループに上場しています。その中からグロース株やバリュー株を見分けるには、各指標をチェックすることがポイントです。
ここではPBR・PER・ROE・売上高や利益の伸び率といった指標の概要や、グロース株・バリュー株の見分け方を解説します。
PBRをチェック
PBR(株価純資産倍率)とは、株価が1株あたり純資産の何倍かを示す指標です。PBRから株価が割高か割安かを判断できます。
算出式は以下のとおりです。
PBR(倍) = 株価 ÷ 1株あたり純資産 |
一般的に、PBRが1倍超であれば割高、1倍未満であれば割安とされています。そのため、1倍超であればグロース株、1倍未満であればバリュー株の可能性ありと判断するとよいでしょう。
PERをチェック
PER(株価収益率)とは、株価が1株あたり当期純利益の何倍かを示す指標です。PERからも、株価が割高か割安かを判断できます。
算出式は以下のとおりです。
PER(倍) = 株価 ÷ 1株あたり当期純利益 |
一般的に、PERが15倍超であれば割高、15倍未満であれば割安とされています。つまり、15倍超であればグロース株、15倍未満であればバリュー株の可能性があるでしょう。
ROEをチェック
ROE(自己資本利益率)とは、会社が自己資本をどれだけ有効活用しているか示した指標です。ROEから企業の経営の効率性を確認できます。
算出式は以下のとおりです。
ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 |
一般的に、ROEが10〜15%超の企業は効率的に利益を出していると判断できます。そのため、ROEが15%(10%)超の銘柄はグロース株の可能性があるでしょう。
売上高や利益の伸び率をチェック
企業の売上や利益の伸び率(成長率)からも、グロース株を判断できます。伸び率の計算式は以下のとおりです(売上高の場合)。
伸び率(売上高) = (当期の売上高ー前期の売上高) ÷ 前期の売上高 |
一般的に、売上高の伸び率が10%を超の企業は成長率が高いと判断できるためその銘柄はグロース株の可能性があるでしょう。
株式投資でグロース株やバリュー株に注目しよう
グロース株とは、将来大きく株価が上昇すると期待されている株式銘柄です。短期的な値上がりを期待できる点が主なメリットとして挙げられます。
バリュー株とは、対象企業の株価が企業価値や経済状況と比較して割安と市場から評価されている株式銘柄です。配当利回りが高い傾向にある点が主なメリットとして挙げられます。
ただし、グロース株やバリュー株にもデメリットがある点に注意が必要です。それぞれの特徴を理解した上で、グロース株投資やバリュー株投資を検討しましょう。
参考:企業年金連合「グロース運用(成長株投資)」
参考:企業年金連合「バリュー運用(割安株投資)」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職