“失敗”を振り返りながらお金の使い方を学んでいくツール
初めてのおこづかいから始めたい「おこづかい帳」のススメ
子どもの進学や進級に合わせて、おこづかいをスタートしようと考えているパパやママは多いのではないだろうか。家庭での金融教育の第一歩になる一方で、お金のトラブルにつながる可能性も。
そこで、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんに、おこづかいの考え方と、金融教育をもう一歩進める「おこづかい帳」の使い方を教えてもらった。
おこづかいが「お金の使い方」を学ぶきっかけに
「最近は、子どもの金銭トラブルを避けるため、おこづかいを与えない家庭が増えていますが、私は与えていいと思っています。小学生の間から現金でおこづかいをあげることで、お金の使い方や買い物の仕組みなどを体感できるからです」(氏家さん・以下同)
小学生くらいの子どもの金銭トラブルというと、「コンビニで無駄遣いをしてしまう」「友達にお菓子をおごる・おごられる」といったものが挙げられる。
「親の目の届く範囲での失敗であれば、サポートができます。無駄遣いをしたのであれば、『これからはお金をどう使えばいいかな』と子どもに考えさせ、友達同士でトラブルが起こった際には、『お金のやり取りはやめよう』『遊びに行くときは全員同じ金額を持っていくようにしよう』と、親子や友達の間でルールを決めるなど、問題解決能力の育成につながるでしょう」
おこづかいをあげないことでの弊害も考えられるという。
「小中学生でおこづかいの使い方を学ばないまま高校生以上になると、手にする金額が一気に大きくなります。思春期に入り親子のコミュニケーションが減ってからでは、親がお金のトラブルに気づきにくく、気づいたときには被害が大きくなりがちです。小さい金額から、お金の使い方を学んでいけるといいでしょう」
おこづかいを与えることで、社会人になってからも心掛けるべきお金の基礎も身につけられるそう。
「学生でも社会人でも、収入の範囲で支出をコントロールすることが生活の基本です。さらに、収入の使い道は、『生活に必要なお金』『何かのために貯めておくお金』『自由に使えるお金』の3つに分類されます。子どもにおこづかいをあげて、自由に使わせるなかで、この3つの分類を把握させることが、家庭での金融教育の目指すところといえるかもしれません」
3つの分類は、次のような費用が当てはまると考えられる。
お金の使い方を振り返るためのツール「おこづかい帳」
おこづかいを与えるだけでなく、子どもに「おこづかい帳」を記録させることで、お金の使い方を意識し始め、3つの分類も理解しやすくなるとのこと。
「大人になっても、予算の範囲内でお金を使うという基礎が身についていないために、お金で失敗する人はたくさんいます。そうなってしまわないよう、おこづかい帳をつけることは大切。お金の使い道を考え、欲望をコントロールするきっかけになります。大人でも家計簿をつけると、無駄遣いや衝動買いを記録するときに『やってしまった…』と反省しますよね。それを繰り返すことで、無駄遣いをセーブできるようになります」
子どもに自主的に反省させるのではなく、うまく親がサポートすることも重要だ。
「最初は無駄遣いしてお金がなくなることも多いと思うので、親が『どうしておこづかいが足りなくなっちゃったんだろうね』と、子どもに考えるヒントを与えてあげましょう。このとき、失敗をとがめないことがポイントです。『無駄遣いするならおこづかいあげないよ』と責めてしまうと、子どもはお金を見るのもイヤになってしまうので、親は『おこづかいは自由に使っていいお金』と捉え、寛容な目で見てあげましょう。
子どもによって、まったくお金を使わない子もいれば、あるだけ使ってしまう子も、貯めて貯めて一気に使う子もいます。きょうだいによっても使い方は違いますし、親の常識に当てはまらないこともありますが、そこも寛容に『この子はこんな使い方をするんだ』と受け止めてあげましょう」
おこづかい帳で日々のお金の出入りを記録させることに加え、目標を設定することで、お金の使い方の管理につながっていくという。
「子どもに『お金があったら何に使いたい?』と聞いてみましょう。その答えを目標に据えて、『そのためには、おこづかいの使い方をどうコントロールしていこうか』と計画を立てていくと、子ども自身がお金を管理し始めるはずです。上手な家庭では、小学校低学年の間はおこづかいを1週間100円、自分で買うものもコンビニのお菓子くらいに設定し、中・高学年になったら1カ月単位でおこづかいをあげて、友達と行く映画代なども自分で支払わせるなど、徐々に頻度や範囲を広げていくことで、コントロールの幅を変化させています」
中学生や高校生になったら、おこづかいの金額を上げる分、塾の交通費や洋服代なども子ども自身に支払わせる家庭もあるそう。また、友達とテーマパークに出かけるなど大きなお金が必要になる場合は、ただお金を渡すのではなく、「掃除したら○円」「ごはんをつくったら○円」など、家庭内労働を絡めて稼ぐことを教えていく方法もある。
「おこづかい帳をきっかけに、親子でコミュニケーションを取りながらお金の使い方を考える習慣をつけていくと、子どもは大人になってからも金銭トラブルを回避できるようになるでしょう。ぜひ、家庭の金融教育におこづかい帳を取り入れてほしいですね」
子どもも親も活用しやすいシンプルな『こづかい帳』
最後に、氏家さんおすすめのおこづかい帳を教えてもらった。
「非常に良くできているのが、知るぽると(金融広報中央委員会)がインターネット上で提供している『こづかい帳(おこづかいきろく)』です。無料でダウンロードしてプリントアウトできますし、ホームページから申込めば、冊子にしたものを送ってもらえます」
知るぽると「こづかい帳(おこづかいきろく)」のページへ(リンク)
おすすめの理由を聞くと、「必要な項目だけに絞り込まれていて、シンプルで使いやすいから」とのこと。
「ひと月ごとに目標と月初めの残高を書く欄があり、おこづかいをもらった日・使った日ごとに、使った理由や収入(入ったおかね)、支出(出たおかね)、残高(残ったおかね)を書いていけるようになっています。右端の確認欄は、親が確認した際にサインをするところです。毎日とはいいませんが、週1回くらいは子どもと一緒に確認して、お金の使い方を振り返れるといいでしょう」
この「こづかい帳」には、おこづかいの記録を長く続けるための工夫も施されている。
「月の最後に、シールを貼る欄と親が感想を書く欄が設けられています。子どもがお金を有意義に使えていたか、親の目線で振り返り、感想を書いてあげましょう。これが親子のコミュニケーションにつながるはずです。このときも失敗をとがめるのはNG。子ども目線で見ると、夏休みのラジオ体操と一緒で、シールを貼ってもらうことが継続するモチベーションになったりします」
大人でも活用できる内容になっているため、親も使ってみると、自分のおこづかいの内訳を振り返るいい機会になりそうだ。
「小学校低学年でも使える内容ですし、大人も日々のやりくりを管理するくらいなら、十分に活用できると思います。親子で一緒に記録してみると、案外親のほうが『セールでうっかり服を買っちゃった』となり、子どもに『予算内に収まってる?』なんてつっこまれてしまうかもしれませんね」
おこづかい帳できっちり管理を目指すというよりも、お金の使い方を知るために始めてみるくらいの感覚がいいのかもしれない。そして、親も子どもと一緒に振り返ってみると、お互いに勉強になるだろう。
(取材・文/有竹亮介(verb))