「絶対儲かる」「損失補填」「先着○名」に要注意!
「投資詐欺」のあるある手口&気付くポイント
近年、投資への関心が高まるとともに耳にする機会が増えている「投資詐欺」。うまい儲け話で勧誘し、お金だけを奪い去っていく犯罪だ。
最近は、さまざまなパターンの「投資詐欺」が存在しているという。そこで、どのような点に気を付けるべきか、金融庁の担当者に聞いた。
SNS、マッチングアプリ、セミナー、落とし穴はいろんなところに
「電話やセミナーなどの昔ながらの勧誘の手法もありますが、最近特に多く聞かれるのは、SNSでのやり取りをきっかけに投資に勧誘され、お金を支払ってしまうというものです。いくつかのパターンをご紹介します」(金融庁担当者・以下同)
●SNS投稿が入口の投資詐欺
SNSで、高級ホテルでの食事やハイブランドのバッグなどの画像に「投資で成功したおかげです! このような生活の理由を知りたい人はDM(ダイレクトメッセージ)やLINEで連絡ください」といったテキストが付けられた投稿を見て、連絡を取ってしまうケース。
DMやLINEで投稿者とやり取りすると、投稿者から「FXは儲かる」「この金融商品がおすすめ」などと勧誘される。
●マッチングアプリでのロマンス投資詐欺
マッチングアプリで知り合った人とやり取りを重ね、恋愛感情や信頼感を抱いたところで、相手から「将来のために投資をしましょう」などと誘われるケース。
●情報商材型の投資詐欺
SNSやセミナーなどで知り合った相手から、「このマニュアルのとおりに実践すれば成功する」「このツールを使えば儲かる」などと、投資マニュアルやFX(バイナリーオプションを含む)の自動売買ツールなどを紹介されるケース。
マニュアル自体はネットで見つかる無料の情報を集めただけのものであったり、ツールを利用しても損するなど、紹介どおりに成功しないものや高額な購入代金(数万~数十万円)に見合わないものが多い。
●リスティング広告やアフィリエイトが入口の投資詐欺
SNS上などで表示される投資関連のリスティング広告(検索キーワードなどに連動して表示される広告)や、個別の金融商品を勧めてリンク先に誘導する投稿(アフィリエイトによるものが多い)をクリックし、移動した先で「この投資がいい!」「この金融商品儲かります!」という煽り文句に感化されて投資したり、情報商材を購入したりしてしまうケース。
●セミナー型投資詐欺
「金融リテラシーを身に付けよう」「FX取引を教えます」など、さまざまな投資関連のテーマで開催されたセミナーに参加した際に、主催者側から「いい金融商品があるから投資してください」「このFX会社を使うといいですよ」と、投資を勧誘されるケース。信用度を高めるため、「このセミナーは金融庁公認」「当社は大手金融機関の系列会社」など、ニセの情報で宣伝しているものもある。
●劇場型投資詐欺
複数の人物が登場し、うまい投資手法や金融商品を信じ込ませてくるもの。例えば、証券会社を名乗る人が「A社の未公開株を購入しませんか?」と電話してきた後に、銀行を名乗る人から「A社の株をお持ちでしたら、高値で買い取ります」と電話が来て、転売で儲かると信じさせられ、実在しないA社の未公開株を買ってしまうというケースがある。
なかには、金融庁の職員などを名乗る人から「A社は上場するので大丈夫ですよ」と言われたり、金融機関を名乗る人から「代わりにA社の株を購入していただけたら、購入代金の1.5倍で買い取ります」と代理購入を持ち掛けられたりするケースもあるという。
このような話に応じてしまうと、後でおかしいと思って返金や解約を求めても応じてもらえないばかりか、担当者などに連絡が取れなくなる、お金が戻ってこなくなるというトラブルにつながるケースが多い。
「投資詐欺」を見極める7つのポイント
投資詐欺にはさまざまな手法があるが、共通しているのは、いかにお金を出させようとしてくるかということ。いくつかのポイントを押さえることで、詐欺を回避することができるという。
ポイント1:「絶対儲かる」「元本保証」「高利回り・高配当」は信じない
前提として、株式やFXなどの投資は、利益を得ることもあれば損をすることもあるもの。そのため、「絶対儲かる」「元本保証」「高利回り・高配当」といった言葉で勧誘してくるものは気を付けたほうがいい。配当も「年数十%」と明らかに高いと判断できるものだけでなく、「月○%」と年換算すると高利回りであるにもかかわらず、あり得るかもと思わせる数値にしているものもある。
「金融商品取引法では、不確実なことを確実であるかのように決め付けて勧誘すること(断定的判断の提供)は禁止されています。そのため、登録されている金融商品取引業者などのまともな会社であれば、法令違反となり得る『絶対儲かる』といった言い回しはしないでしょう」
ポイント2:「損失を補填する」はあり得ない
投資を勧誘してくる人や会社が「損失が出た場合は当社が補填するので、心配しないで大丈夫」と言ってくる場合も、投資詐欺の可能性が高い。
「取引により損失が生じた場合やあらかじめ定めた利益が出なかった場合に、その分を補填することも、金融商品取引法で禁止されている行為です。禁止されているにもかかわらず、『補填します』と言ってくる業者はあやしいといえます」
ポイント3:「いますぐ」「先着○名」に流されない
投資を勧誘してくる際に、「いますぐ」「今日だけの限定」「先着○名」「限定○名」のような言葉で、あたかも自分だけが特別だと思わせ、投資などを急かしてくる人や会社はあやしいと思ったほうがいい。
「急かすことで冷静な判断力を奪い、よくわからないままに勢いで投資させようという狙いがあるといえます。あやしい業者はなんとかお金を出させることが目的ですので、『いますぐ決断を』と言われてもいったん距離を置き、冷静に判断しましょう」
ポイント4:「FX」「バイナリーオプション」「暗号資産」の勧誘に要注意
FXやバイナリーオプションなどの店頭デリバティブ取引、暗号資産の取引に関して、自分が取引を求めていないのに勧誘された場合は、乗らないほうがいい。
「店頭デリバティブ取引や暗号資産取引は、金融商品取引法等で、これらの取引を要請していない顧客に対して勧誘すること(不招請勧誘)が禁止されています。例えば、自分から『FXについて教えてください』とお願いしていないにもかかわらずFXを勧誘された場合は、あやしいといえます」
ポイント5:借金を勧めてくる業者はアウト
「投資するお金がない」と断っても、「借金しても大丈夫です。利益で借金以上のお金が入ってきます」と言い、借金の申込みをさせようとしてくるケースもあるが、これもあやしい話といえる。
「投資は、お金をやりくりしたうえでできた余裕資金を使い、自分のできる範囲内で行うものです。借金してまで無理に行うものではないので、借金を勧めてくる業者はあやしいといえます」
ポイント6:友人・知人の紹介は冷静に判断する
友人、知人から経験のない投資や聞いたことのない会社、情報商材などを紹介されたら注意するべき。その友人や知人も紹介している投資に詳しくない場合や、あやしい業者から「紹介手数料を支払う」と言われて紹介している場合があるため、冷静に判断しよう。
「友人や知人を信じたい気持ちもあるかもしれませんが、友人たちも、あやしい業者に『手数料を払うから投資マニュアルを売ってほしい』『出資してくれる人を紹介してほしい』と頼まれている可能性があります。自分の大切なお金を使う行為なので、たとえ友人からの紹介でも、あやしいと思ったらきっぱり断りましょう」
ポイント7:登録済みの金融商品取引業者かチェック
勧誘してきた人や会社が金融商品取引業者の登録等を受けていなければ、取引は避けるべきだろう。
「金融庁のホームページに、登録業者等のリストを掲載しています。また、無登録で勧誘などを行っている業者で、警告書を発出したところのリストも載せているので、勧誘してきた人や会社が登録されているか、確認しましょう」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html
金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/mutouroku.html
「また、金融庁のホームページでは、このようなあやしい投資話や詐欺的な投資に関する注意喚起も掲載していますので、ご参考にしてください」
金融庁「金融庁からのお願い・注意喚起」https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/chuui.html
「冷静になる」「投資を理解する」がトラブル回避のカギ
上記のポイントを踏まえたうえで、冷静な判断につながる心がけも教えてもらった。
「何より大事なのは、投資勧誘に対してすぐに飛びつかず、いったん冷静になって考えることです。どんなに急かされたとしても、勢いで投資せず、本当にその投資が必要か、考える時間を持ちましょう。そして、理解できない投資は行わないこと。あやしいものに限らず、投資を行う際は運用の仕組みやリスクをしっかり聞き、わからないところがあれば業者に質問して、不明点を払しょくすることが重要です。それでも理解できないものは、控えたほうがいいでしょう」
自分だけで判断できないときは、周りの力を頼ることも大切だという。
「自分だけでは調べられることにも限りがあり、考え方も偏ってしまいやすいので、家族や友人などに相談してみましょう。周囲から『その話は変だよ』と言われて、踏みとどまるということもあるはずです。近くに相談できる人がいなければ、金融庁の金融サービス利用者相談室に相談してください。ご不明な点について、アドバイスできることがあると思います」
金融サービス利用者相談室https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html
詐欺被害に遭ってしまった場合の相談窓口
万が一、投資詐欺の被害に遭ってしまった場合は、次の窓口に相談しよう。
●消費者ホットライン(電話番号:188)
相談者の住んでいるエリアの消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してくれる。
●警察相談専用電話(電話番号:#9110)
犯罪に関する相談を受け付けている。詐欺事件となると警察の取り扱い事案となるため、こちらに相談するのもいいだろう。
●弁護士事務所や弁護士協会の無料相談
近所の弁護士事務所や協会で無料相談を受け付けていたら、そこで相談するのもひとつの方法。お金を取り戻すサポートをしてもらえるかもしれない。各自治体が開催していることもある。
自分の大切なお金を奪われないよう、教えてもらったポイントを意識するとともに、投資の基礎も勉強しておくと良さそうだ。“うまい儲け話”には要注意!
(取材・文/有竹亮介(verb))