定期的に発生する「車検代」はしっかり吟味すれば抑えられる…?

購入前に知っておきたい車とお金のハナシ~維持費用編~

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職場までの道のりを1人でのびのび過ごせたり、家族でのレジャーやおでかけもワイワイ楽しく移動できたり、自動車を持つメリットはたくさんある。一方で、自動車を持つことによって、ローン以外にも費用が発生するのも事実。

車を所有することで、どのような費用がかかるのか、中古車情報メディア「カーセンサー」統括編集長の西村泰宏さんに教えてもらった。

確実に発生する「税金」と「保険料」

「一般的にかかる費用としては、以下のようなものが考えられます。税金や保険料、車検代、ガソリン代は、自動車を所有し、公道を走れる状態にするためには、必須の費用といえるでしょう」(西村さん・以下同)

●自動車の維持費用の例
・自動車税(軽自動車税)
・自動車重量税
・自賠責保険料
・任意保険料
・車検代(メンテナンス代)
・ガソリン代
・駐車場代

発生する税金は、「自動車税(軽自動車税)」「自動車重量税」の2つ。それぞれ支払うタイミングが異なる。

●自動車税/軽自動車税
自動車の所有者に対して、毎年4月1日に課される税金。税額は、排気量や初回新規登録の時期によって異なる。たとえ車検が切れて走行できない自動車であっても、車両登録を行い、ナンバープレートが発行されていると課される。

●自動車重量税
車検の際に課される税金。自動車の重さに応じて税額が異なる。車種によっては「エコカー減税」が適用され、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)などは免税、ガソリン車でも排出ガス性能が高ければ25%軽減、50%軽減となる。

「税金は必ず支払わなければいけないものです。排気量や新規登録の時期、重量などによって明確に税額が設定されているので、支出を抑えるといったことはできません」

●自賠責保険
自動車事故の被害者救済を目的として加入が義務づけられている保険で、補償範囲は対人事故の損害賠償のみ。多くの場合、車検の際に保険料を支払うことになる。

●任意保険
民間の保険会社が提供している自動車保険。対人事故に加え物損事故の損害賠償や自身のケガの治療費なども補償範囲となる。補償内容によって、保険料が異なる。

「自賠責保険はマストで入らなければいけない保険ですが、それだけでは補償が足りないので、任意保険にも加入することをおすすめします。補償内容によって保険料を調整できますが、万が一の事故が心配だと感じるようであれば、手厚い補償をつけておいたほうが安心でしょう」

「整備内容」と「部品」で変わる車検代

税金、保険料以外に、必ず発生する費用が「車検代」だ。車検とは、自動車が保安基準に適合する状態か、点検や整備を行うもの。基本的に2年に1回(※)受けることとなる。

※新車の場合は、新規登録から3年後。それ以降は2年に1回。車によっては毎年必要な場合も。

「よく『車検やメンテナンスの費用はどうしたら抑えられますか?』という質問をいただきます。確かに、車検は車種や車検をお願いする場所によって金額が変わるものです。そもそも価格が高い自動車は整備に必要な部品も高い可能性があるので、車検代も上がりやすいといえます。中古車で安く買った自動車であっても、もともとの価格が高いものだと部品も高くなります。一般的に車検は10万円前後になることが多いのですが、価格の高い自動車だと40万~50万円となることもあるでしょう」

車種以外に、車検代を左右する要因として挙げられた「車検をお願いする場所」は、大きく2つのポイントがあるという。

「ポイントのひとつは、予防整備を行うか、確実に壊れるであろう部分だけ整備するか。予防整備とは、不具合が起こる前に部品交換や修理を行うことで、例えば10万km走ると寿命が来る部品を、7万km走った時点で交換するといったことです。もうひとつの確実に壊れるであろう部分の整備とは、次回の車検までに寿命を迎える部分だけを交換・修理すること。後者のほうが整備する部分が少なくなるため、車検代を抑えられます」

もうひとつのポイントは、交換や修理に使用する部品にあるという。

「部品は、メーカーが製造した純正のものを使うケースと、サードパーティー製のものも含めた互換性のあるものを使うケースがあります。基本的に、純正品を使うほうが高くなり、互換性のあるものを使うほうが安くなります」

2つのポイントを掛け合わせて、金額や整備のレベルを考えていくといいそう。

「車検代は安ければいいというものではなく、その車の持ち主の考え方で変わってきます。車検代が高くなっても純正品で予防整備をしっかりしてほしいと思う人もいれば、互換性のある部品で必要なところだけ整備して費用を抑えたいという人もいるでしょう。希望に応じて、車検をお願いする場所が変わってくるといえます」

西村さんによると、カーディーラーと街の整備工場で、次のような違いが見られることが多いそう。

●カーディーラーの車検
確実性の高い整備を目指して、純正品を使い、予防整備まで行うところが多い。車検代は高くなりやすいが、納期が遅れることはほぼない。

●街の整備工場の車検
互換性のある部品を積極的に用いて、必要な部分だけ整備する柔軟性がある。車検代は抑えやすいが、稀に納期がずれることがある。

「上記の違いから、カーディーラーの車検のほうが高額になる可能性が高いといえます。ただし、法外な金額になるようなことはなく、あくまで整備にかかった費用です。また、車検に出す際に、整備の内容を相談することもできるので、無理に過剰な整備をされるということもないでしょう」

車検の見積もりを出してもらい、項目を確認し、わからないことがあれば、その時点でディーラーや整備工場に聞いてみるといいようだ。

「理解できるまで、きちんと聞くことが大切です。確実に必要な整備と、急がなくてもいい整備があるはずなので、それぞれの項目がどちらに当てはまるかも聞いてみましょう。急がなくてもいい整備をどうするか考えていくと、車検の費用は変わってきます。例えば、後部座席のドアの開きが良くない場合、1人で乗ることが多く後ろのドアはほとんど使わない人であれば整備は不要と捉えるかもしれませんが、家族がいて頻繁に後ろのドアを使う人であれば整備は必要でしょう。項目をひとつずつ確認し、判断していけるとベストです」

全部任せるのではなく、きちっと内容を理解したうえで相談することで、適正な金額にしていけそうだ。

「駐車場代」は住んでいる地域の相場に比例

ガソリン代や駐車場代は、どの程度かかるだろうか。

「ガソリン代は、自動車に乗る頻度や距離によって変わる部分ですが、燃費のいい自動車にすることで抑えられます。EVの場合、ガソリン代はかかりませんが、電気代がかかることをお忘れなく」

駐車場も、住んでいる地域によって異なるもの。駐車場は、住民票の住所の2km以内でなければいけないという決まりもあるため、「3つ先の駅の駐車場が安いからそこに車を置こう」ということはできない。

「駐車スペース付きの戸建てであれば駐車場代はかかりませんが、そうでなければ借りる必要があります。ただし、駐車場は、賃貸物件のようにリアルタイムで空き状況がわかるウェブサービスはほとんどないので、近所を歩いて探すことになります。地域の情報に詳しい不動産屋さんに聞いてみると、『あそこが空いてる』『あのマンションは外部の人にも駐車場を開放してるよ』と教えてくれることがあります」

駐車場を探す際には、料金以外にも気を付けるべきところがあるという。

「自動車のサイズや重さに気を付けましょう。自動車は年々大きくなっているので、最新の車や輸入車だと駐車場のサイズに合わないことがあります。また、EVはバッテリーが重いため、重量の規定がある立体駐車場などでは注意が必要です」

自動車をレジャーと捉えて“ポジティブマインド”に

維持費用というと、どうしてもネガティブな響きになってしまい、安く抑えることを考えてしまうが、西村さんは「ポジティブに捉えると負担と感じにくくなる」と、話してくれた。

「自動車は日々の交通手段である一方、レジャーやおでかけをより一層楽しいものにするツールでもあります。せっかく乗るなら楽しいほうがいいですよね。そう考えることで、いわゆる維持費用も“楽しい時間を過ごすための娯楽費”のようなカテゴリーになり、ポジティブな消費と捉えられると思います。もちろん必要以上にお金をかけなくていいものですが、負担と捉えすぎず、時間を有意義に使うための費用と考えてみましょう」

自動車を持つことで継続的に費用がかかってくるが、楽しみを買ったと思えば、ポジティブに捉えられるだろう。また、車検や駐車場などは、納得のいく費用感か、吟味することも大切といえそうだ。
(取材・文/有竹亮介(verb))

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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