住宅と土地を無償譲渡!? 引っ越し代の半分を自治体が負担!?

地方に引っ越す前に知っておきたい! 自治体の「移住支援」をチェック

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都市部から地方への移住は、新天地での生活に向けてのワクワクと同時に、住まいの購入費や引っ越し代などの金銭的な負担がのしかかってくるもの。

しかし、お金が理由で移住を諦めてしまうのはもったいない。実は、国や自治体がさまざまな移住支援を行っているのだ。ファイナンシャルプランナーの原絢子さんに、注目の移住支援を教えてもらった。

家族での移住で最大100万円支給される「移住支援金」

「まずチェックしておきたいのが、国と各自治体が共同で進めている『移住支援金』。東京一極集中の改善や地方創生を目的に、移住者に対して支給される交付金で、2019年度に始まり、2024年度で終了する予定になっています。ただ、状況によっては、延長される可能性も高いのではないかと考えられます」(原さん・以下同)

●移住支援金
東京23区に在住または東京圏(※1)から東京23区に通勤している人が、東京圏外(※2)に移住した際に、都道府県や市町村が交付金を支給する制度。交付金は、世帯あたり100万円以内(単身の場合は60万円以内)で自治体が設定する額となる。

※1 東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県。
※2 東京圏内の条件不利地域を含む。条件不利地域とは、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」「山村振興法」「離島振興法」「半島振興法」「小笠原諸島振興開発特別措置法」の対象地域を有する市町村(政令指定都市を除く)。一都三県の条件不利地域の市町村は以下のとおり。
・東京都:檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ケ島村、小笠原村
・埼玉県:秩父市、飯能市、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村、神川町
・千葉県:館山市、旭市、勝浦市、鴨川市、富津市、南房総市、匝瑳市、香取市、山武市、いすみ市、東庄町、
九十九里町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町
・神奈川県:山北町、真鶴町、清川村

「2023年4月1日から大きく変わった点があります。以前は18歳未満の子ども1人につき最大30万円が加算されたのですが、4月以降は1人につき最大100万円に拡充されました。子育て世帯の移住を後押ししたいのだと考えられます。ただし、自治体によっては30万円のままのところもありますし、子どもが1人いたら100万円は出すものの2人目以降はゼロとしているところもあります。移住先のルールを確認しましょう」

自治体にもよるが、子どもがいる家庭にとっては大きなサポートになるだろう。しかし、交付金を受け取るハードルはやや高く、次の3つの要件すべてに該当しなければいけないようだ。

●移住支援金の要件
(1)東京23区の在住者または東京圏から東京23区に通勤している者
移住直前の10年間で通算5年以上かつ直近1年以上、東京23区に在住または通勤していないといけない。

(2)東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域への移住者
移住支援金の申請後5年以上、継続して移住先市町村に居住する意思があること。

(3)地域の中小企業等への就業やテレワークによる移住前の業務の継続、地域での社会的起業などを実施する者
以下のいずれかに当てはまる必要がある。
・地域で中小企業等に就業
・テレワークによる業務継続
・地方創生起業支援事業を活用(地域での起業)
・市町村ごとの独自要件

「3つ目の要件が特に高いハードルですが、コロナ禍を経てテレワークが追加されたことで、申請しやすくなりました。『市町村ごとの独自要件』は自治体によってさまざまですが、例えば『移住先に対してふるさと納税を5年間している』『自治体主催の移住イベントに参加したことがある』といった要件があります」

ちなみに、「東京圏以外の道府県への移住者」とあるが、東京圏以外のすべての自治体で実施されているわけではない。

「過疎化や少子高齢化で悩んでいる自治体による取り組みなので、もともと移住先として人気な沖縄県や長野県軽井沢町などは『移住支援金』を実施していません。大阪府や兵庫県などの都市部でも実施していないところがあるので、要注意です」

支援を受けるには、自身の移住が要件に当てはまるか、確認することが重要だが、この要件はあくまで国が定めた大枠であることを認識しておいたほうがいいという。

「要件は各自治体によって異なるので、希望する移住先があったら、事前に問い合わせて確認することをおすすめします。また、『移住支援金』は基本的に移住後3カ月以上1年以内に申請するものとされており、移住する時点で交付金を受け取れるわけではありません。引越しや移住先での住まいを用意する資金はあらかじめ準備する必要があることも、覚えておきましょう」

地方での起業で最大200万円支給される「起業支援金」

国と自治体が共同で進めている交付金には、「起業支援金」というものもある。

●起業支援金
地域の課題解決に資する社会的事業を新たに起業、または事業継承・第二創業する人を対象に、都道府県が伴走支援と起業等に必要な経費の2分の1に相当する額(最大200万円)の交付を行う制度。

「重要なのは『地域の課題解決に資する社会的事業』という部分。とにかく起業すればいいというわけではなく、移住先で課題となっていることを解決するような事業を行う場合に限って受けられる支援です。例えば、子育て支援や買い物支援、特産品を利用した商品開発などが挙げられます」

この制度の要件は、次のように定められている。

●起業支援金の要件
(1)新たに起業する場合
・東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域において社会的事業の起業を行うこと
・国の交付決定日以降、補助事業期間完了日までに、個人開業届または法人の設立を行うこと
・起業地の都道府県に居住していること、または居住する予定であること

(2)事業継承または第二創業する場合
・東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域において、Society5.0関連業種等の付加価値の高い分野で、社会的事業を事業承継または第二創業により実施すること
・国の交付決定日以降、補助事業期間完了日までに、事業承継または第二創業を行うこと
・本事業を行う都道府県内に居住していること、または居住する予定であること

「『移住支援金』と同様に、要件や公募期間は自治体によって異なる場合があります。また、申請から審査、交付決定、実際に交付金が受け取れるまで、それなりの時間がかかります。開業資金がもらえる制度ではないので、起業のためのお金は自分で準備しましょう」

「移住支援金」も「起業支援金」も、それを目的にするのではなく、要件に合えば活用するという認識で移住を考えていくといいとのこと。

「交付金目当てで移住しようとすると、理想のライフプランに合わずに無理しなければならない可能性が出てきます。移住や起業の目的を優先して、もし国や自治体から受け取れるものがあれば申請するというステップで考えていきましょう」

住まいを無償譲渡!? 各自治体の移住支援あれこれ

「移住支援金」「起業支援金」以外にも、各自治体が独自に行っている支援があるようだ。原さんに注目の自治体を教えてもらった。

●宮崎県「移住支援金事業」
国が定めた「移住支援金」の要件は「東京23区に在住または通勤している人」だが、宮崎県では対象者を大幅に広げ、「東京圏・名古屋圏・大阪圏ならびに福岡県からの移住者」としている。

「東京圏だけではなく、名古屋圏・大阪圏ならびに福岡県と対象を拡大しているところから、移住者を広く受け入れようという宮崎県の姿勢がうかがえる要件です」

●茨城県境町「定住促進戸建住宅」
町外からの移住者(世帯主が45歳以下で、中学生以下の子どもがいるまたは妊娠している人がいる世帯)が、境町に建設される新築戸建賃貸住宅に20年住み続けた場合、その土地と建物を無償譲渡する制度。

「大人気の制度で、募集が始まるとすぐに申し込みがいっぱいになってしまったのですが、今後も実施される予定があるようなので、移住を考えている人はチェックしてみるといいと思います。賃料も月5万~7万円くらいと、かなり抑えられています。境町にはほかにも、移住2年目から5年目まで町民税相当額の最大50%が交付される制度や、子育て世帯・新婚世帯の定住者に奨励金50万円を交付する制度など、さまざまな移住支援があるので、気になる人はチェックしてみましょう」

●北海道雄武町「移住宅地の無償貸与及び無償譲渡」
町外から移住する人を対象に、土地を無償で貸与し、一定期間内に住宅を建築した場合にその土地を無償で譲渡する制度。(登録免許税などの譲渡にかかる費用は申込者負担)

「土地の無償譲渡から10年以内に転居、または第三者への貸付・譲渡などを行うと違約金が発生するという条件はありますが、土地が無償で受け取れるのは大きいですよね。対象者も『町外の人』と広いので、北海道内での移住でも利用できる可能性があります」

●埼玉県深谷市「“深谷の暮らし”支援策」
県外からの移住者を対象に、次のような支援金を交付する制度。
・新幹線・鉄道定期券の実費額の3分の1(上限月2万円、12カ月間)
・テレワーク備品購入費の2分の1(上限10万円)
・引っ越し費用の2分の1(上限10万円)
・世帯人数1人につき1万円相当の地域通貨

「深谷市は『移住支援金』の対象地域に含まれないので、独自の支援制度を用意しています。40歳未満という年齢制限のある制度ではありますが、東京在住だけどテレワーク中心で出社が週1~2回だからちょっと都市部から離れてもいいかな、という人にはぴったりの支援といえるかもしれません」

さまざまな支援制度を紹介してもらったが、すべてに共通する注意点があるという。

「国や自治体の支援や交付金は、基本的に申請しないと受け取れません。また、制度内容も年度ごとに変わることが多いので、希望する移住先が決まったら、事前に問い合わせるようにしましょう。申請の前に事前相談が必要な自治体もあります。多少の手間はありますが、その分、金銭的な負担を軽減できますよ」

もし、希望している移住先があったら、移住支援を行っているか調べてみよう。そして、条件に合うようだったら、申請することを忘れずに。
(有竹亮介/verb)

お話を伺った方
原 絢子
ファイナンシャルプランナー。FPサテライト所属。自身で保険の見直しを行った際にお金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーの資格を取得して活動を開始。移住に関する相談にも対応している。モットーは“自分のお金を他人任せにしない”。
著者サイト:https://fpsatellite.co.jp/
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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