定年後に増える支出もある

定年後に減る4つの支出、増える2つの支出

提供元:Mocha(モカ)

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定年退職後の生活費は、定年前と比べ6~7割ほどに縮小する傾向にあります。ただ、費目ごとに見ると、減る支出と増える支出があることがわかります。今回は総務省の2022年(令和4年)家計調査をもとに、「減る支出・増える支出」がそれぞれ何かと、増える支出を減らす対策を一緒に考えてみましょう。

定年後に減る4つの支出とは?

2022年(令和4年)の家計調査をもとに、定年前と定年後で減る支出・増える支出をみてみましょう。

●定年前と定年後の「減る支出・増える支出」比較一覧

総務省「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」をもとに筆者作成

上の表をもとに、定年前と定年後で減る支出をみてみましょう。

●定年後に減る支出1:被服及び履物

被服及び履物の費用は、定年前は毎月約1万1000円必要でしたが、定年後は約5000円にまで減ります。定年前は、仕事用のビジネススーツや、それに伴うグッズなどを揃える必要がある方も多いでしょう。毎日使うものなので、質や量にもそれなりに気を使います。しかし退職後は、自分が動きやすいカジュアルウェア、リラックスウェアで過ごすことができます。そのため、被服及び履物の支出が減るというわけです。

●定年後に減る支出2:交通・通信

交通・通信の費用は、定年前は毎月約5万円。しかし、定年後は約2万9000円と、じつに2万円以上も減っています。

たとえば、定年前は通勤時に電車や自動車を使ったり、スマホを2台持ちしたりする場合があるでしょう。しかし退職後はそうしたこともなくなるため、交通・通信の支出が減ります。

●定年後に減る支出3:教育費

定年前に毎月約1万8000円かかっていた教育費は、定年後ゼロになっています。定年前は、子どもにかかる教育費に頭を悩ませる方が多かったのではないでしょうか。退職後は、子どもも自立し、今まで必要だった学費や仕送り、学費の支出がなくなります。

●定年後に減る支出4:非消費支出

非消費支出とは、税金や健康保険料、厚生年金保険料などの社会保障費のことです。定年前と定年後では、収入が大きく減少するため、負担も減ります。

定年後に増える2つの支出

一方、定年前より定年後のほうが増える支出もあります。

●定年後に増える支出1:保健医療

保険医療の費用は、定年前は毎月約1万3000円でしたが、定年後は約1万6000円に増えています。年齢を重ねると、医療費が増えます。肩・腰・膝などの痛みで接骨院に通ったり、成人病の治療で通院・入院したりするためです。

また、厚生労働省の「2020年度(令和2年度)国民医療費の概況」によれば、全国民の医療費合計額の割合は65歳未満の人が38%、65歳以上の人が62%を占めています。やはり高齢になることで、医療費はかかるようになるのです。

将来、介護が必要になれば、さらにお金が必要です。生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査2021年度(令和3年度)」によれば、介護費用は、介護用の住宅改修や介護ベッドの購入などの一時的な費用の目安が平均74万円、毎月の介護費用は平均8万3000円。介護期間の平均となる61.1か月(5年1か月)を合わせて考えると、一人あたり580万円が必要になります。

●定年後に増える支出2:交際費

交際費は、定年前は毎月約1万4000円でしたが、定年後は約2万3000円に増えています。なお、交際費には、他の世帯への贈答品やサービスの支出が含まれています。

子どもが自立して、家庭を持つことになれば、援助金が必要になるでしょう。かわいい孫が誕生すれば、出産のお祝い、初節句、入園、入学などのイベントごとの支出が必要になったり、毎年のお年玉、誕生日のプレゼントなど細々した支出が必要になったりします。

定年後に増える支出対策3選

定年後は、医療費、介護費、子どもの結婚に伴う交際費などが増えます。また、家計費外でも、家のリフォーム費などが必要になってくる可能性があります。後々、「お金がない…」とならないようにするため、早めに必要な金額を割り振っておくようにしましょう。ここでは、定年後に増える支出をどう抑えるのか、その対策を3つ紹介します。

●定年後に増える支出対策1:介護費は別枠で管理する

加齢とともに、身体のあちこちに不調が出てきます。それに伴う医療費がかかるのはあたり前かもしれません。厚生労働省「人口動態統計」(2021年)によると、日本人の死因トップ3は1位が悪性新生物(がん)、2位が心疾患、3位が老衰です。それに対する備えを確保しておきましょう。

例えば、65歳時点で、老後資金が2000万円あるとすれば、少なくとも医療費・介護費枠に「1人あたりに必要な介護費580万円×2人=1160万円」は別枠で確保しておきましょう。後年、介護状態になったときに備えるためにも、旅行・趣味などの楽しく生きるための消費と区別しておくことが大事です。

●定年後に増える支出対策2:健康寿命を延ばす

厚生労働省「令和3年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳。また「令和4年版高齢社会白書」によれば、健康寿命は令和元年時点で男性72.68歳、女性75.38歳です。健康寿命とは、日常生活を制限されず健康に生活できる期間をいいます。

現状、平均寿命と健康寿命に9~12年の乖離がある状態です。そこで、健康への意識をあげて、「ピンピンコロリ」で寿命を終えることを目指しましょう。自治体が行う健康診断を利用し、年に1回は自身の健康状態を確認して、もし、その結果の中で生活習慣病にかかわる指摘があったなら、早々に「食生活」「運動」「生活習慣」などの見直しをしましょう。とくに、適度な運動で「心肺機能の向上」「筋力アップ」「関節の柔軟性」を心がければ、生活習慣病の予防、転倒によるケガ予防、リラックス効果が期待できます。

●定年後に増える支出対策3:子や孫への援助は予算を決める

子どもや孫がかわいくて「援助してあげたい」という気持ちが湧き上がるかもしれません。成長にあわせてのさまざまな準備が楽しみという気持ちもわかります。老後資金に余力があれば上限なしでもよいですが、余力がなければ、上限枠を決めてしまいましょう。

その中で、出産のお祝い、初節句、入園、入学などのイベントの支出をいくらにするか割り振っておくとよいでしょう。お年玉や誕生日プレゼントなども、予算3000円までと決めてしまえば、ムダに悩むことはなくなるでしょう。

まとめ

定年後に減る支出がある一方で、増える支出があることをご紹介しました。

定年後の生活を充実させるためにも、健康寿命を延ばすことは大切です。定年前は時間がなく、「食生活」「運動」「生活習慣」などの見直しが難しかったという方は、定年後からでも遅くありません。ゆとりの時間を健康維持に使い、医療費の節約につなげましょう。また、子や孫への援助の予算を決めて、交際費を必要以上に出さないことも大切です。

[執筆:ファイナンシャルプランナー 舟本美子]

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