待機期間がなくなるかも
失業給付をもらうまでの期間「2か月→7日」に 短縮されるとどうなるのか
提供元:Mocha(モカ)
雇用保険の基本手当は、「失業給付※」などとも呼ばれ、会社を退職した方が、安心して再就職に向け活動できることを目的として支給される雇用保険の給付のひとつです。
※正式には雇用保険の「基本手当」ですが、本文中では分かりやすい表現として「失業給付」と表記いたします。
2023年2月に開かれた政府の会議で、この失業給付をもらうまでの期間を短縮する検討がされていることが明らかになりました。自己都合で退職した方が、手続きを始めてから実際に失業給付を受け取るまで2か月超かかるところを7日に短縮するという内容です。
そこで今回は、このような見直しの背景について解説するとともに失業給付をもらうまでの期間が短縮されるとどのような影響があるかについても一緒に考えていきたいと思います。
失業給付がもらえる条件とは?
雇用保険は毎月保険料を納付することで、失業した際や育児のために休業した際に給付を受けられる公的保険制度です。その中でも失業給付は働く意思と能力がありながら失業の状態にあり、仕事を探している人が安定した生活を送るために支払われます。
失業給付がもらえる条件を満たした方は、離職後、ハローワークで所定の手続きをすることで、失業給付をもらうことができます。失業給付をもらうための最低限の条件は、次の2つです。
条件1:雇用保険の被保険者として、離職日から遡って2年の間に最低12か月以上働いた期間があること
条件2:ハローワークにて求職の申し込みを行ない、再就職の意思・能力があるのに就職できない状態であること
条件1は、一般的な自己都合退職の場合の条件となります。会社都合退職の場合や、「特定理由離職者」の場合は、離職日から遡って1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あれば対象となります。
また条件2で注意をしたいのは「職に就いていない=失業」ではないということです。求職活動を行なっている状態でなければ、失業給付をもらうことはできません。そのため、既に次の就職先が決まっていたり、求職活動はせずに休養をしたりするといった場合には「失業している状態にある」と認められず、失業保険の給付対象外となります。
失業給付はいくらもらえる?
1日あたりの失業給付の給付金額は、退職前の給与日額のおよそ50~80%(60歳〜64歳は45〜80%)です。具体的な金額は、退職前6か月間の給料の総額(残業代は含む。賞与は除く)と退職時の年齢によって決まります。また、受給期間は、本人の年齢や雇用保険を支払っていた期間などによって変わります。
例えば、退職前の給料が月給30万円で10年勤めた会社を33歳で退職したAさんの場合、Aさんがもらえる失業給付は、以下の通りとなります。
●Aさんの失業給付の給付額・期間
失業給付を受けられる離職の区分は、転職やキャリアアップなどの「自己都合離職」と倒産や解雇などの「会社都合離職」とがあり、「支給されるまでの期間」については、「自己都合離職」と「会社都合離職」とで大きく異なることが分かります。
例えば、転職やキャリアアップなどの「自己都合離職」を理由とした場合には、7日間に加え、原則、2か月間の「給付制限」が設けられ、その後でないと受け取れない決まりになっています。一方で、「会社都合離職」の場合はハローワークで手続きをして、受給資格の決定を受けてから7日間の待機期間を経れば、受け取ることができ比較的早く受け取りを開始することができます。
なぜこうした差が設けられているのかというと、自己都合退職の場合は、意図的に就職と離職と繰り返すことで、失業給付を繰り返し受給することが可能になってしまうからです。受給制限を設けることでそうした受給を防いでいるのです。
このほか「給付日数(最大)」にも差があり、Aさんの場合離職理由が「自己都合離職」の場合は120日なのに対し、「会社都合離職」だった場合は210日となっており、「総支給額(最大)」もかなりの開きがあることが分かります。
失業給付の短縮化で成長分野への転職が進む?
現在は、退職理由によって、失業給付を受給するための条件が大きく異なっていますが、2023年2月に開かれた「新しい資本主義実現会議」では、自己都合で退職した場合の失業保険の給付(受け取り)仕組みを見直すことを検討していることが分かりました。
自己都合退職の失業給付の見直しが検討される背景には、政府側の「構造的な賃上げの実現には労働移動の円滑化が必要」だという考え方があるようです。つまり、停滞している経済を活性化するため、成長分野や人手不足の業界への人材のスムーズな移動、つまり労働者側の転職を促す狙いがあるとみられます。
将来的に失業給付の短縮化が実現すれば、申請から給付(受け取り)まで2か月近くを要している期間が、会社都合離職と同じ「7日」に短縮される可能性もあります。そうなった場合、給付時期が前倒しになることで、生活面の費用の心配がなくなり、働き手がより転職を視野に入れて行動するようになることが考えられます。
例えば、働き手側が転職するために新たな技能の習得(リスキリング)に意欲的になったり、企業側も優秀な人材を引き留めるために働き手の賃上げを進めるようになったりするかもしれません。
今のところ、見直しの具体的な時期や内容は明らかにされていませんが、自分自身のキャリアプランを考える上でも今後の制度改正の動向を注視しておきたいところです。
[執筆:ファイナンシャルプランナー KIWI]
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