ユニークな福利厚生や魅力的な制度を導入している企業のご担当者様にインタビュー

SOMPOホールディングスの、魅力的な制度:会社と社員のパーパスを実現する人事制度、「ジョブ型人事制度」の魅力に迫る!

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少子高齢化や働き方改革が進む中、多くの企業にとって優秀な人材を安定的に確保していくことは大きな課題となっているのではないでしょうか。

そんな中、社員の満足度を上げ、求職者にとっても魅力的な企業として選ばれるために、職場環境や福利厚生等の制度を充実させることを重要ミッションの一つとして捉えている企業が多いようです。

そこで、福利厚生等の社内制度の充実といった切り口からユニークな取り組みをしている企業をご紹介!新しい働き方改革に合わせた魅力的な制度導入の背景や現在までの経緯、裏話に至るまで、ご担当者様にセキララに語っていただきました。

今回は、国内損害保険事業、海外保険事業、国内生命保険事業、介護・シニア事業というコア事業に加えて、新たにデジタル等の領域においても事業展開している「SOMPOホールディングス」の魅力的な制度をご紹介します。

聞き手・執筆:ファイナンシャルプランナー 高山 一恵

――では、本日はよろしくお願いします。本日は、ジョブ型人事制度を中心にお話しを伺いたいと思っていますが、その前に御社の経営戦略である「パーパス経営」についてお話を伺いたいと思います。パーパス経営の概要と導入の背景について教えていただけますか。

SOMPOホールディングスは、持株会社として各事業会社の経営管理、その他経営に付随する業務全般をしております。当社グループの主力事業といえば、国内損害保険というイメージが強いと思いますが、国内損害保険事業の他にも海外保険事業、国内生命保険事業、介護・シニア事業、デジタル事業と5つの事業を幅広く展開しています。

SOMPOグループが社会に提供したい価値は何か、そのような存在でありたいか、という想いを込めて2021年4月に「パーパス」を作りました。

当社グループのパーパスは、“「安心・安全・健康のテーマパーク」により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する”というものです。このパーパスを軸として経営戦略を展開しています。

――パーパスは、会社のパーパス以外にも個人のパーパスもあるようですね。

はい。「MYパーパス」と呼んでいます。MYパーパスとは、社員一人ひとりが人生を充実させるために、自分はどんな人間なのか、自分にとっての幸せとは何か、自分が人生において成し遂げたいことは何かといった「自分自身の人生の意義や目的」のことを言います。

会社のパーパスを浸透させ、実践していくためには、従来のようにトップダウンで会社のパーパスを押し付けるアプローチだけでは浸透していかないと考えています。社員一人ひとりの内発的な動機付け、すなわちMYパーパスが非常に重要です。ですから、自分自身のパーパスは一体何なのかをしっかり追求して明確にし、言語化すること。社員一人ひとりがMYパーパスを明確にすることが、一見遠回りに見えるかもしれませんが会社のパーパスと融合するための一番の近道だと考えています。

――多くの企業では、社員の方がなかなかパーパスを自分事化できないという話を聞きますが、社員の方へのパーパス浸透の取り組みについてどのように行なっているのですか?

当グループ社員は、約7万4,000人おりますが、それぞれの社員が「MYパーパス1on1」という上司と部下が1対1で定期的に対話する機会を設けています。上司と部下が自分のキャリアの話以外にも、上司自ら自身のパーパスを共有しながらコミュニケーションを図ることで部下のMYパーパスを明確にするための支援をしています。これは、上司にとっても非常に大変なミッションですので、管理職を対象として「MYパーパス1on1」を実践していくための研修を導入しています。

MYパーパスを考える際には、自身の人格形成に影響を与えた原体験についても振り返っていきます。幼少期には、どのようなことに夢中になって、どのような時間を過ごしたのか、過去をしっかりと振り返ることにより、自分という人間がどんな人間なのかを知る手がかりとなり、結果的に会社のパーパスへとつながっていきます。社員には「まずは自分の人生が一番大事。その人生の目的を達成するために会社という場を大いに利用してほしい」と考えています。

他にも「タウンホールミーティング」という経営層と社員が直接対話する場をもうけ、経営層自らがMYパーパスを開示することもしています。これらを複合して、社員一人ひとりのパーパスを言語化するための支援をしています。

――通常は会社のミッションがあって、それに対して自分がどのように貢献できるかという会社が多いと思うのですが、御社は社員の方のパーパスを第一に考え、会社のパーパスと社員の方のパーパスが重なり合う部分を見つけることが大切なんですね。

もちろん、個人一人ひとりのやりたいことや成し遂げたいことと、必ずしも会社のパーパスがリンクしない場合もあるのではないかと思います。ただ、先ほども申し上げた通り、現在は、国内損害保険事業の他にも幅広く事業を展開していますし、会社のパーパスに即した社会貢献を軸にしたならば、どこかしら重なる部分が出てくるのではないかと思っています。

そして、さらに会社のパーパスとMYパーパスを浸透させていくことにより重なり合う部分を大きくしていくことを目指しています。

会社のパーパスとMYパーパスの重なり合う部分が大きくなることで、当社では、3つの人材コア・バリューを共有する人材集団を作っていきたいと思っています。

3つの人材コア・バリューとは、「ミッション・ドリブン(使命感とやりがいを感じ、当事者意識を持って働く)」、「プロフェッショナリズム(高い専門性と倫理性に基づき、自律的に考え行動し、成果に繋げる)」、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の重要性を理解し、それを新たな価値創造に結び付ける)」です。この3つのコア・バリューを共有する人材集団を実現できれば、経営戦略、事業戦略の実現という最終的なゴールに繋がっていくと考えています。

――会社のパーパスと社員の方のパーパスが重なり合う部分を生かすための人事制度が「ジョブ型人事制度」ということでしょうか。

はい。会社のパーパスとMYパーパスが重なり合った部分というのは、おそらく能力だったり、想いを最大限発揮できる場だったりすると思います。ですから、この重なり合う部分に対して、社員の自律的なキャリア形成を支援すべく「ジョブ型人事制度」を導入しました。

当社のジョブ型人事制度の特徴は、会社主導の人事異動を原則として実施しないということです。会社主導ではなく、自らキャリアを選択し、プロフェッショナルとして成果を出すことを目指しています。

自分がやりたいこと、成し遂げたいことがあるのであれば、それに向かって努力を重ね、そのポジションを自ら選択するということです。つまり、ただ待っているだけではチャンスは来ないということです。

――自分でキャリアを選べるという反面、厳しさもありますね。この仕事がしたいと思った場合、立候補するのでしょうか?

この仕事がしたい、このポジションにつきたいと社員が思った場合のジョブ変更の方法として、立候補制を運用しています。まずは、希望するポストに立候補していただいて、他の立候補している社員よりもそのポストにふさわしい人材であることをその根拠も含めてアピールいただき、最終的に合格となれば異動するという流れになります。また、思考や環境が変われば、やりたい仕事も変わることも尊重しており、1つの仕事に限ることなく、仕事自体の変更も可能です。

希望のポストにつくためには、経験値、意欲、能力などが不足しているとみなされた場合はないと就くことができないので、希望を叶えるために、社員は努力しますし、その結果、会社の生産性も向上すると思います。

――自分でキャリアを形成していきたい方にとっては、本当に素晴らしい制度ですよね。一方でなかなか受け入れられない方も少なくないように思いますが、導入にあたりご苦労などはありませんでしたか?

現状、ジョブ型の人事制度は、SOMPOホールディングスの社員約500人を対象にして設計した人事制度になっています。もし、全く同じ制度を損害保険ジャパン、SOMPOひまわり生命といった各事業会社に同時期に導入するということになっていたらかなり大変だったと思います。

各事業会社によって、環境や社員が置かれている立場、業務内容などが全く違いますから、完全に同じルールを一律で導入しようとは考えていません。基本のコンセプトは伝えつつ、各事業会社の特性も考慮して、順次各社にとって最適な人事制度に変化していけたらと思っています。

そもそも会社のパーパスを理解し、MYパーパスを策定することに苦労している社員も一定数いることは承知しています。ですから継続的に支援を続けていくことが重要です。

通常、このような会社をあげての取り組みの場合、例えばフォーマットを会社が準備して、いつまでにMYパーパスを提出しなさいというような一方的な取り組みになりがちですが、提出は強制していません。

また、MYパーパスとはこうあるべきものといった押し付けもしていません。あくまでも、自分のペースで、自分の内面とじっくりと向き合い、自分自身の真のパーパスを見つけてもらうことが重要だと考えています。ですから、パーパスを策定する・しないが人事評価に影響を与えることはありません。

――ジョブ型の人事制度を導入して3年経過したと思いますが、成果はいかがですか?

ジョブ型の人事制度だけではなく、あくまでも様々な取り組みの結果ですが、浸透度を測定するエンゲージメントスコアは、年々上昇傾向にあります。これを見ると、会社と社員がそれぞれ向かっていきたいと考えているベクトルが合ってきていると感じます。

立候補者数やキャリア採用数でも、具体的な実績が出ています。2023年4月には、ホールディングスの部課長ポストも含めた49の応募対象ポストに対して、126名が立候補、35名が合格しています。会社という観点からすると、立候補した人の中から「この人が一番このポストに適任でしょう」と任命できることで「適所適材」がより鮮明になりました。

人材確保の観点では、3年間で約150名のキャリア社員を採用できました。SOMPOホールディングスの社員数は約500名ですから、全体の3分の1が外部人材に置き換わり、人材の多様化という観点では大きなインパクトだと思います。

キャリア自律を積極的に打ち出したことにより、しっかり専門性を構築したい、キャリアを磨きたいという人にとっては共感を得られたと思っています。

SOMPOホールディングスの執行役、執行役員の1/3はキャリア採用ですから、金融機関系の会社としては、非常に珍しいのではないかと思います。

私自身も人事領域の専門性を磨き続けたいとの思いとSOMPOのパーパス経営の取り組みに共感して、SOMPOホールディングスにキャリア採用で転職してきました。実際に転職してみて、自発的に業務に取り組むことを尊重してもらえ、高いモチベーションで働けていると実感しています。

――着実にジョブ型の人事制度が浸透してきているようですね。では、今後の展望をお聞かせください。

人事戦略を推し進めていく中で、今後取り組んでいくことは3つあります。

1つ目は、会社と個人の重なり合った想いを持っている社員に対して、MYパーパスを実現するための場や、ポジジョンを提供することです。一方で会社の視点で見たときに、より注力したい事業があった場合、注力したい事業に足りない人材や必要なポジションのようなものを今後はよりしっかりと把握しなければならないと思っています。会社が必要としている人材やポジションを洗い出し、社員一人ひとりがやりたいこと、個々のスキルをそれぞれ可視化することによって、お互いのニーズを実現させていくことです。

2つ目は、会社のポスト情報や社員のキャリア志向や、保有しているスキルや経験をもっとデジタルで可視化したいということです。情報の利活用ですね。それにより、こちらから社員のMYパーパス実現にも繋がるポジションを提案することもケースによってはできるようになると考えています。

3つ目は、グループ全体のキャリア形成を進化させていきたいですね。事業会社ごとに特性はあるので、例えばグループ各社も含めて全員転勤はありません、ローテーションは起こりません、という世界はすぐには作れないと思いますが、一人ひとりが求めるキャリアをどうしたら実現できるのかということころは、引き続き検討し加速していきたいと思っています。

――本日は、貴重なお話をありがとうございました。では、最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

現在、試行錯誤をしながら様々な人事戦略やアクションを考えていますが、最終的な目標は経営戦略の実現です。最終的な目標を最短で実現できる人事の仕組みを作り、運営していこうという想いで課題と向き合っています。

社員の幸せももちろんですが、企業としては、営利も当然追求します。経営戦略を実現することで、株主様への還元をはじめとして、社会にも貢献していきたい、このような軸と信念を持ってこれからも取り組んでまいります。

著者/ライター
高山 一恵
(株) Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP®)
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株) エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。「マンガと図解でしっかりわかる はじめてのNISA&iDeCo(成美堂出版)」など多数の書籍を出版。

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