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~停滞の先に見据える日経平均株価の史上最高値更新~

海外投資家が期待する日本の「3つの変化」

提供元:岡三証券

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2023年の世界の株式市場では、日本株が好パフォーマンスとなり「主役」となっています。そして、その上昇の牽引役は海外投資家です。

一般的に、海外投資家が日本株に投資をする際、ヘッジファンドなどの短期勢は先物を、年金などの中長期勢は現物株を選好すると言われます。つまり、今の日本株市場には「腰の据わった中長期資金」が流入している可能性が高いとみられます。

そして過去を振り返ると、中長期勢が日本株を積極的に買う際のキーワードは「変化」でした。2005年以降の郵政解散をはじめとする構造改革、2012年以降のアベノミクスは日本の「変化」を海外投資家に期待させました。

では、今の日本株市場に海外投資家はどの様な「変化」を期待しているのでしょうか?筆者は(1)日本企業の変化、(2)日本経済の変化、(3)市場の変化という「3つの変化」が重要なポイントであると考えています。

変わり始めた日本企業のマインドセット

まず1点目は、日本企業の変化です。2023年の春闘では大企業を中心に積極的なベースアップ(ベア)が決定されました。経団連によると、大企業(原則として従業員500人以上)の平均賃上げ率は約3.9%に達し、前年の約2.4%を大きく上回りました(第1回集計時点)。物価高の影響はあるものの、優秀な人材を囲い込むために賃上げの動きは必須であるとみられます。

岸田首相は「新しい資本主義」を謳い、2022年6月には「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~(骨太の方針2022)」を閣議決定しました。その中では、「人への投資と分配」が掲げられました。昨今、日本企業は手元に貯め込んでいた余剰資金を賃上げだけでなく、リスキリング(学び直し)に関わる投資に振り向けるなど、従来のマインドセットが変わりつつあると言えるでしょう。

日本経済は「内需主導」への転換期

2点目は、日本経済の変化です。2023年1-3月期実質GDP(国内総生産)の内訳を見ると、内需の寄与度がプラス0.7%であった半面、外需はマイナス0.3%となりました。とくに、企業の積極的な賃上げによる消費の堅調、設備投資の拡大などが内需を押し上げています。

かねてから日本は「輸出で稼ぐ国」というイメージが強い投資家が多いのではないでしょうか。ただ、輸出は海外の経済動向や為替市場の変動による影響を色濃く受ける面があります。「内需主導」による強い経済に転換することができれば、いよいよデフレからの完全脱却が現実味を帯びるでしょう。

東証の低PBRの改善要請に熱視線

3点目は、日本株市場の変化です。とりわけ、低PBR(株価純資産倍率)企業に対して東証や金融庁が改善を要請したことが大きな話題となっています。日米欧の主要企業のPBR分布を見ると、PBR1倍割れ企業は欧州が約24%、米国が約5%程度であるのに対して、日本は約4割に達しています(2022年7月時点)。すでに各企業は自社株買いなど、低PBRの是正に向けた取り組みを積極的に公表しています。

PBR1倍割れ企業の海外比較(主要企業)

出所:日本取引所グループ 作成:岡三証券 2022年7月時点

他方、PBRはPER(株価収益率)とROE(自己資本利益率)の掛け算となります。つまり、PBRを引き上げるためには、PERもしくはROEを引き上げる必要があります。PERは株価のバリュエーションに関わる指標であるため、あくまでマーケットで決まります。

一方、ROEは企業がいかに効率的に稼いでいるかを示す指標であり、自助努力によって改善が可能です。ROEを引き上げるために、企業は「稼ぐ力」を高める必要があり、この本質的な取り組みに投資家は熱視線を送っていると言えるでしょう。

海外投資家は依然として半信半疑、自信が確信に変わるかが焦点

これらの「3つの変化」に対する期待を背景に、海外投資家の日本株を見る目が変わってきています。とはいえ、その期待が裏切られた過去が多いのも事実です。今後は、官民を挙げて変化の「芽」を花開かせていく必要があるでしょう。海外投資家の自信が確信に変わる日が来れば、日経平均は長年の停滞局面を脱し、いよいよ1989年末に付けた史上最高値(38,915円)が視野に入るかもしれません。

(岡三証券株式会社 投資情報部長 小川佳紀)

著者/ライター
小川 佳紀
2005年に岡三証券入社。
2009年~2014年にかけて、投資情報会社にて日本株式のマーケットアナリス
ト業務に携わる。
2014年に岡三証券 投資戦略部日本株式戦略グループに配属。
2020年10月より投資戦略部⾧、チーフマーケットストラテジスト。
テレビやラジオをはじめ様々なメディアに出演、新聞等でコメント。
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