ユニークな福利厚生や魅力的な制度を導入している企業のご担当者様にインタビュー

ソフトバンクの福利厚生制度:情報も予算もゼロベースから作り上げた「健康経営」の魅力に迫る!

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少子高齢化や働き方改革が進む中、多くの企業にとって優秀な人材を安定的に確保していくことは大きな課題となっているのではないでしょうか。

そんな中、社員の満足度を上げ、求職者にとっても魅力的な企業として選ばれるために、職場環境や福利厚生等の制度を充実させることを重要ミッションの一つとして捉えている企業が多いようです。

そこで、福利厚生等の社内制度の充実といった切り口からユニークな取り組みをしている企業をご紹介!新しい働き方改革に合わせた魅力的な制度導入の背景や現在までの経緯、裏話に至るまで、ご担当者様にセキララに語っていただきました。

今回は、ソフトバンクグループ株式会社を親会社にもつ、日本を代表する通信・IT企業である「ソフトバンク株式会社」のユニークな福利厚生制度をご紹介します。

聞き手・執筆:ファイナンシャルプランナー 高山 一恵

――では、本日はよろしくお願いします。早速ですが、御社が健康経営を導入した背景について教えていただけますか?

2016年度に経済産業省が特に優良な健康経営を実践している法人を認定する制度である「健康経営優良法人認定制度」を創設したのですが、その数年前あたりから「健康経営」というワードをよく聞くようになっていて、当社でも気になっていました。

当時、人事内の安全衛生担当という立場からさらに社員の健康をサポートできることはないかと考え、「健康経営」について体系的に取り組みをしていこうと思ったのが、導入の背景です。

――実際にどのように「健康経営」を構築されたのですか?何かの事例を参考にされたのでしょうか?

当時、今ほど「健康経営」というものが世の中に浸透していなかったので、具体的な取組事例もないですし、誰かが詳しく説明してくれることもなく、手探りの状態から始まりました。

そこで、当社のグループ会社に人事・労務関連のサービスを提供する「SBアットワーク株式会社」があるのですが、そちらの「ウェルネスセンター」に協力を仰ぎまして、ウェルネスセンターの皆さんと協業で一緒にやらせていただきたいとお願いしました。そしてウェルネスセンターのみなさんのご協力のもと、「ウェルビーイングプロジェクト」を立ち上げました。

今や「健康経営」と検索すれば、食、運動、喫煙、メンタルヘルス、女性の健康・・・といった具合に、健康経営のテーマやカテゴリーがわかると思うのですが、当時は検索してもほとんど情報がありません。もちろん、セミナーや講習のようなものもありませんでしたので、プロジェクトを立ち上げたものの、何から始めたらよいのかわからないという状況でした。

ですから、自分達で社員の健康について体系的に考えるにはどうしたら良いのか、テーマやカテゴリーについて意見を出しあって、それに基づいて進めてみるといった具合に、試行錯誤の中で本当にゼロベースから始めました。

――そうだったんですね。最初から健康経営のイメージが明確にあって導入したのかと思っていたので意外でした。

経営陣も社員の健康を推進するのはとても良いことだということは理解してくれていましたが、いきなり社員にトップダウンで健康経営だ!と打ち出しても、上滑りしてしまうのではないか、まずは草の根運動的に健康に関する施策や啓発を増やしていって、会社が健康について力を入れ始めているということが伝わってから大々的に打ち出してはどうかとの意見をいただき、ベースを作っていくことにしました。

――ゼロベースから作っていくのは本当に大変ですよね。さまざまなご苦労があったと思いますが、特に大変だったところを教えていただけますか?

特別な予算がなかったことでしょうか(笑)。予算がない中で、健康経営を推進していく必要がありましたので、とにかく、やれることはやってみよう、無料でできる取り組みはないかと必死に考えました。

しかも当社の社員数は、2万人弱おりますので、地域に関係なく、健康情報を確認することができたり、体験できたりするものを考えるのは、本当に大変でした。当社の創業者、孫正義は、「脳がちぎれるまで考えろ」という人なのですが、本当に考え抜きましたね(笑)。

みんなで考えたテーマやカテゴリーに則って、それに関係のある当社とお取引のある企業様にお声がけをして無料でセミナーをしていただいたり、グループ会社のサービスで良いサービスがあれば活用したりしました。

運動習慣を促進するために、ヨガやストレッチなどを取り入れるのはどうかという案が出た時に、ちょうど私が副業制度も担当していたので、副業でヨガのインストラクターをやっている社員に、社員向けにヨガの講座をやりたいので協力してもらえないかとスカウトしに行きました。すると「ぜひ協力させてください!」と前向きに引き受けてくれて。本当にありがたかったですね。

皆さんのご厚意に甘えながら、なんとか内製でできるものからやっていきました。

――本当に地道にやってこられたんですね。

これまでお話してきたように、本当に少しずつ始めてきたのですが、やっていく中で健康経営とはどういうものなのかを掴んできた感じですね。

経済産業省がおこなっている健康経営の取り組みを調査する「健康経営度調査」に回答していく中で、設問事項にチェックできる項目を増やしていくことが、本質的に健康経営ができる状態になるということに、1、2年経った頃に気がつきました。ずいぶん時間がかかりましたね(笑)。

そこで、「健康経営度調査票」に沿って、自分達がやっていること、考えていることとずれていないかを確認しながら少しずつ構築してきて、現在の形になっています。

おかげさまで健康経営の取り組みが特に優秀だった大企業が認定される「ホワイト500」を2019年度に初めて取得し、以降毎年取得するまでになりました。さらに、2022年度には「健康経営銘柄2023」の選定を受けることができました。

――本当にすごいですね!そんなご苦労の甲斐があって、御社のウェブサイトを拝見すると、健康経営の制度が充実していますね。

ありがとうございます。社員が健康の改善をしたいと考えるテーマを「食生活の改善」「運動の習慣化」「喫煙率の低減」「メンタルヘルスの向上」「女性特有の健康課題改善」「ヘルスリテラシーの向上」の6つに分け、情報発信や取り組みの場を提供するなどのサポートをしています。

例えば、「食生活の改善」では、「遺伝子検査付き食事ダイエットプログラムの実施」やスマートミールの審査・認証を受けた弁当の販売や社員食堂でヘルシーメニューの提供を行なっています。

また、「運動の習慣化」では、ウォーキングイベントの開催や全社朝礼前にヨガを開催したり、他にもZOOMで月に1回朝ヨガ、2カ月に1回夜ヨガを開催したりしています。

全社朝礼前のヨガには、社長を始めとした経営陣も参加し、ライブ配信にて全国の社員も参加しています。社長が実際にヨガをやっている姿を見ることによって、社員のモチベーションも上がると思いますし、大きな促進になると思います。

今でこそ、当たり前のように全社朝礼の前にヨガをやっていますが、当初は、3カ月だけお試しでやらせてくれないかと時間をもらって実施する限定のプログラムだったんです。それが、社員のリクエストもあって半年に延長になり、ついに経営陣から全社朝礼の前だったらずっとやっても良いのではないかと言っていただけるようになり、現在に至ります。

他にも「喫煙率の低減」では、移転に伴い本社の喫煙室を撤廃し、就業時間内は禁煙にしたり、メンタルヘルスの向上では、メンタルヘルスの動画を社内展開したり、睡眠改善プログラムを提供したりしています。「女性特有の健康課題改善」では、大塚製薬様と女性の健康セミナーをコラボで実施したりしています。

「ヘルスリテラシーの向上」では、当社のグループ会社であるヘルスケアテクノロジーズ株式会社が提供するヘルスケアアプリ「HELPO(へルポ)」を導入しています。オンライン健康医療相談チャットやオンライン診療、病院検索、一般用医薬品などの購入が可能です。

また、「歩数計機能」もあり、歩いた歩数と距離、消費カロリーをわかりやすく表示してくれます。昨年実施した社内の「ウォーキングイベント」では、このアプリさえあればどの地域の方でも参加できますので、多くの社員に参加してもらうことができました。

――どれも素晴らしいプログラムだと思いますが、ご担当者様の一押しのプログラムを教えていただけますか?

社内の新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」で事業化を検討中の「Genofit Maps」と連携したプログラムである「遺伝子検査付き食事ダイエットプログラム」です。

事務局として参加しましたが、遺伝子検査を低価格で受けられるというのはもちろんのこと、生活習慣、食習慣を見直すコツを掴むプログラムとして本当に良かったです。

以前から2、3キロ痩せたいと思っていたのですが、年齢的なこともあり全然痩せなかったんですね。ところが、このプログラムで食べ方のコツを教えてもらって実践したところ希望どおり痩せることができました。3カ月のプログラムでしたが、受講してから1年以上経った今もキープできています。

すごく健康的になりましたし、この経験で健康に対する知識を得て、ヘルスリテラシーを高めることがとても大切なんだということがわかりました。

健康経営を推進していく上で、最初は闇雲に食をテーマに何かやれば良いのではないか、運動をテーマに何かやれば良いのではないかと、課題に対して打ち手ばかり考えていました。

でも結局は、自分で情報を取捨選択すること、そしてプログラムに参加するための時間を捻出するために働き方に興味を持つこと、自分の体について知りたいと思うこと、自分に合う健康法を実践してみたいと思うこと、つまり、ヘルスリテラシーを高めることが最初にやるべきことだったんだと、銘柄選定された今だからこそよくわかるようになりました。

こんなにたくさんのプログラムがありますと提供したところで、仕事が忙しくてそもそもプログラムに参加する時間が取れないという社員は多いと思います。まずはさまざまな健康に関する情報を知ってもらい、その上で、自分自身が興味を持ち、自分の意志で自分に合ったやり方を選択するということをしないと長続きはしないと思います。

実際、ダイエットプログラムを体験してみて、体が健康になっていくと嬉しいので、これまで全くやってこなかった運動をやってみようって思うようになりました。以前はなるべく動かずに生きたいと思っていたくらいなので、自分でもすごい変化だと思っています。

ダイエットで成果が出てくると、今度は睡眠改善も試してみたいと次々に興味が湧いてきました。社員の皆さんには私のようになってほしいですね。ぜひ私を真似してほしいです(笑)。

私のように、何か1つでもきっかけがあれば、おそらく時間も捻出しようと思えるでしょうし、誰から言われることなく、働き方も自分で見直すようになると思うんです。ですから、どのプログラムに参加してほしいというよりは、ヘルスリテラシーが高まるような成功体験を1つでもしてほしいと思います。

――これまで健康経営について真摯に向き合ってきたご担当者様だからこそ、とても実感がこもっていますね。社員の方に変化はありましたか?

年に1回、「健康意識調査」というのを実施しています。その調査結果を見ると、会社が健康経営を推進しているのはわかっている、健康経営銘柄に選定されたのもわかっている、けれど、それを自分の働き方に反映して健康的な生活を送っている、健康な体になっている、と私のように実感している社員は、まだ多くはないというのが現実です。実感されているのは全体の6割くらいかなと。

もともと健康意識の高い社員が積極的に様々な情報をとって、自分が好きなプログラムに参加していくという形になっているのが今の実態なのかなという印象を持っています。それが口コミで広がっていけば良いのですが、まだ健康数値が優れない人や課題を抱えている人たちにまできちんと行き届いていないように思います。ここが課題ですね。

――意識が高い人だけではなく、全体に浸透させるというのは難しいものですね。

もっと根本の問題から解決しないとなかなか全体に浸透させられないのかなと思います。

例えば、プログラムを受講するための時間を捻出するためには、働き方改革のチームと連携していかないと進まないと思いますし、もっと言えば、ダイバシティーや女性の健康推進チームなどとも連携して健康経営を進めていく必要があると思います。
究極的には、全社員がもれなく、ソフトバンクにいたらいつの間にか健康になってしまっていた、という状況を作りたいですね。

――社外からの評価はいかがでしょうか?健康経営銘柄をとって変化はありましたか?

本当に色々お声がけをいただく機会が多くなりました。法人部隊のお取引先様から健康経営について具体的にどんな事をやっているのか聞かせてほしい、ぜひ面談させてほしいというご依頼を受けたりします。

登壇のオファーがあれば、当社の健康経営の内容や、現在の形に至るまでの経緯、具体的な取り組みなどについてお話しています。

人事部は管理部門ですから、直接会社の売上に貢献することはできません。ですが、例えばヘルスケア事業で事業化を検討中のサービスがあれば、試験的に健康経営のプログラムの一環として社内で試した上で、もし成果が出れば、その成果をもとに営業してもらうことはできると思います。

また、健康経営銘柄やホワイト500に選定されたことが、社外へのPRにもつながったり、自治体の入札で評価ポイントの一つになったりもしているようです。微力ですが、法人部門の取引に貢献できているところもあるようなので、健康経営を推進してきてよかったなと思っています。

――健康経営に対する熱い気持ちがとてもよく伝わってきました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。では、最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

当社の健康経営の理念は、「社員一人一人が心身ともに健康で、常に活力にあふれた集団であること」です。この健康経営の理念に則って、社員が仕事もプライベートも幸福度が上がる生活ができる事を目標に推進していきたいと思います。

おかげさまで、健康経営銘柄・ホワイト500にも選定されましたが、先ほどお話したように、そのことを実感している社員は、まだ6割程度です。ここを最終的には全ての社員が実感できるように、さらに頑張っていきますので、今後のソフトバンクにもぜひご期待ください。

著者/ライター
高山 一恵
(株) Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP®)
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株) エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。「マンガと図解でしっかりわかる はじめてのNISA&iDeCo(成美堂出版)」など多数の書籍を出版。

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