アメリカでは1ドル札が必須!? シンガポールではクレカで電車に乗れる!?

海外旅行前に知っておきたい! 世界各国の“支払い”事情

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2023年5月5日、WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスに関する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を発表したことを受け、多くの国で出入国に関する制限がなくなり、海外旅行がしやすくなっている。

日本でも、5月8日から帰国時の新型コロナウイルスワクチン接種証明書の提示、旅行先でのPCR検査の陰性証明書の取得が不要となり、コロナ禍以前と同じように海外旅行ができるようになった。

夏休みを利用して、さっそく海外に行こうと考えている人もいるのではないだろうか。しかし、多くの人にとって3年以上ぶりの海外旅行。変化している部分も多いことだろう。特に決済方法は、日本国内も含めて変化が著しい。そこで、これまで120カ国以上を旅してきたトラベルジャーナリストの橋賀秀紀さんに、各国の支払い事情について聞いた。

※記事内の情報は2023年7月現在のものです。

海外旅行の支払いのキホンは「クレジットカード」

「国によって決済の状況は異なりますが、大前提としていえるのは、オールマイティな決済手段はクレジットカードだということ。大体のシーンで使えます。ただし、日本と同じように、クレジットカードが使えない店舗や施設もあるので、現金をはじめとしたほかの選択肢も用意しておくと、スムーズに旅行を楽しめるでしょう」(橋賀さん・以下同)

海外でクレジットカードを使うことを想定した場合、どのブランドでも問題ないのだろうか。

「クレジットカードは、ブランドによって為替レートが異なります。VISAやマスターカードはレートがいいので、海外で使うメリットが大きいといえます。レートが少し違うだけで、日本円になったときの金額が大きく変わるからです」

海外で現金が必要になった際に、海外のATMで現金を引き出す海外キャッシングを利用する人もいるだろう。このときに便利なカードもあるという。

「海外キャッシングを利用する際、下ろす額が5000円相当でも10万円相当でも、一律のATM手数料が発生します。つまり、少額だと損なのです。ただ、クレジットカードをメインの決済手段にするから、現金はわずかでいいというケースもありますよね。私が使っているセディナカードはATM手数料が発生しないので、少額を下ろすときに重宝します。ほかにも、ATM手数料が発生しないうえにレートもいいアコムACマスターカードがありますが、こちらは繰り上げ返済をしないと金利が高くなりやすいので、マメに返済できる人に向いているでしょう」

紹介してもらった2つのカードは、どちらも海外キャッシングの際のATM手数料無料というメリットがあるが、国内で使う分には特に大きなメリットはないそう。「頻繁に海外旅行に行って、海外キャッシングをする人にはおすすめ」とのこと。

アジア、アメリカ、ヨーロッパ…国&地域別“支払い事情”

ここからは、海外旅行先として人気の国やエリアの支払い事情について、聞いていこう。

●韓国
「韓国ではスマートフォン決済アプリ『カカオペイ』がメジャーですが、韓国の携帯電話や銀行口座がないと使えません。ただ、2023年4月に『PayPay』が『カカオペイ』と提携したので、近いうちに韓国で『PayPay』が使えるようになるかもしれないのです。それまではクレジットカードと現金が、決済手段のメインとなるでしょう」

韓国では、日本の「Suica」「PASMO」のような交通系ICカードも存在するそう。

「外国人旅行者向けの交通系ICカード『WOWPASS』があり、空港や駅などで日本円または韓国ウォンでチャージできます。これがあれば公共交通機関に乗れるので、『現金が足りなくて切符が買えない』という事態を避けられます。現金でないとチャージできないという難点はありますが、コンビニなどでも利用できるので、1枚持っておくと便利です」

●台湾
「台湾も基本的にクレジットカードと現金がメインとなりますが、実は『LINE Pay』が使えます。クレジットカードと紐付けるという条件はありますが、日本で使っている決済手段をそのまま使えるのは便利です」

韓国と同様に、台湾にも交通系ICカードがあるとのこと。

「『悠遊カード(Easy Card)』という交通系ICカードがあり、日本の『Suica』『PASMO』などと同様に公共交通機関の乗降時やコンビニでの支払いなどで利用できます。チャージは現金(台湾ドル)のみですが、空港や駅、コンビニなどで手に入りますし、有効期限もないので、使い勝手がいいと思います」

●アメリカ(ハワイ)
「アメリカは基本的にクレジットカード社会なので、どこに行くにもクレジットカードさえあれば問題ありません。ただし、多少の現金も必要になります。というのも、アメリカにはチップ文化があるからです。たくさん用意する必要はありませんが、両替する際に『細かい紙幣を入れて』と、お願いしましょう。1ドル札などを用意してもらえるので、チップとして使いやすくなります」

ちなみに、アメリカでのチップの相場はどの程度なのだろうか。

「かつては15%といわれましたが、現在はそれなりのランクのレストランで18~20%が一般的なようです。物価の高騰に加えて、チップも上がっているといえます。アメリカ国内でもチップを払うべきかという議論はありますが、基本的には必要なものだと思って用意しておくことをおすすめします」

日本人に人気の観光地・ハワイでは、アメリカのほかの州とは少し違う部分があるようだ。

「ハワイもクレジットカードがあれば過ごせるという点は一緒ですが、JCBカードが使える店舗や施設が多いという特徴があります。JCBカードは日本のカード会社なので、日本人フレンドリーといえるでしょう」

●ヨーロッパ
「国によって状況が違うので一概にはいえませんが、基本的にクレジットカードは普及しています。ある程度のレベルのホテルやレストラン、美術館などであれば、使えると思って問題ありません。ただ、北欧のようにキャッシュレス化が進んでいる国もあれば、イタリアなどのようにクレジットカードだけだと心配な国もあります。日本と同じで、地方の庶民的な店舗やタクシーなどでは使えないことがあります。ユーロはEUの国をまたいで使えるので、多少多めに両替しておいてもいいでしょう」

ヨーロッパのチップは、アメリカほど大きな額にはならないそう。

「ヨーロッパにもチップ文化はあるといわれますが、レストランでサービス料として10%上乗せしたり、端数を切り上げて支払ったりするイメージで、アメリカのように現金で手渡しするシーンはほとんどないといえます。ハイクラスのホテルでポーターに渡すといった場面はあるかもしれませんが、ほとんど遭遇しないケースです」

●東南アジア
「昔に比べるとクレジットカードが使える国や地域が増えてきていますが、日本と同程度、もしくは日本より使える店舗が少ないので、現金も用意しておきたいところです。シンガポールのように開発が進んでいる国ではクレジットカードが使えますが、インドネシアやタイだと、都市部であっても店舗によっては使えない可能性があります」

東南アジアにも、日本と同じように交通系ICカードがあるという。

「シンガポールには『ez-link』、タイ・バンコクには『ラビットカード』という交通系ICカードがあり、旅行者でもつくれます。海外旅行で『現金がなくて困った』となることが多いのが公共交通機関なので、あらかじめ現金(各国の通貨)でチャージしておいた交通系ICカードを持っておくと、スムーズに移動できます」

シンガポールやバンコクでは、より簡単に公共交通機関に乗れる方法が出てきているという。

「いままさに状況が変わってきていて、タッチ決済機能が付いたクレジットカードで公共交通機関の改札を通れるようになってきています。現状ではまだ対応していない駅もありますが、近いうちにクレジットカードだけで済むようになる可能性があります。シンガポールの場合、クレジットカードで公共交通機関を利用すると、1日一律0.6シンガポールドルの手数料がかかるので、1日に何回も乗る人には特におすすめです」

必要な現金の目安は「タクシーに乗れるくらい」

どの国に行くとしても、多少は現金が必要になるといえそうだ。では、どの程度用意していくといいだろうか。

「額が大きなものは大抵クレジットカードで決済できるので、非常手段としてある程度の現金を用意しておきたいところです。金額の見極めは難しいのですが、現地のタクシー料金を調べて、タクシーに乗らなければいけなくなったときに支払えるくらいの現金は持っておくと安心です。私の経験上、日本円で5000~1万円くらいあれば、なんとかなるかと思います」

結果的に使わずに余った現金は、「あえて日本円に戻さない選択肢がある」と、橋賀さんは話す。

「現状、日本円の為替レートは良くないので、あえて米ドルやユーロに変えるという方法があります。米ドルやユーロであればさまざまな国で使える可能性があるので、年1回以上海外に行く人であれば、そのまま封筒などに入れて保管しておくのもいいでしょう。再び旅行に行く際に、両替する手間が省けます。海外に行く予定がない人は、日本円のレートが良くなってから両替するという方法もあります」

国によってキャッシュレス化の進み具合や決済方法などは異なるが、クレジットカードと現金が必須という点は変わらない。旅行先の物価やレートなどを調べると、必要な金額のイメージがつきやすくなるだろう。
(取材・文/有竹亮介(verb))

お話を伺った方
橋賀 秀紀
トラベルジャーナリスト。「3日休めれば海外」というルールを定め、コロナ禍以前はほぼ月1回のペースで海外旅行に出かけ、これまでに訪問した国は127カ国にのぼる。著書に『エアライン戦争』など。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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