2023年8月号「投資環境レポート」
好調な日本株の背景と持続可能性
提供元:野村アセットマネジメント
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野村アセットマネジメントでは、毎月、世界経済や金融市場の注目点を投資環境レポートとしてお届けしています。
8月の投資の視点は、「好調な日本株の背景と持続可能性」です。
<注目点>
●日本株は東証株価指数(TOPIX)が年初から7ヵ月連続で上昇するなど、極めて堅調な推移をしている。株価上昇率は主要国・地域の中でも上位となったが、背景には国内外の多岐に亘る要因がこの期間に集中した点が挙げられる。
●日本株の上昇の要因が多数あったことは、株価上昇の持続性や、幅広い業種・銘柄の上昇にも寄与したとみられる。米国株の上昇がハイテク株に一極集中したような状況であったのに対し、日本は内需関連株や割安株なども底堅く推移した。
●これまでの株価上昇は、賃上げや、株価純資産倍率(PBR)の底上げなどのガバナンス改革への期待が先行した面が大きい。今後はそうした政策の持続性が注目されていくだろう。
上期は多数の上昇要因が重なる
日本株はTOPIXが年初から7ヵ月連続で上昇するなど、極めて堅調な推移をしている。日経平均やTOPIXの7月末までの年初来上昇率は+20%を超え、また他の国・地域と比較可能なMSCI株価指数では先進国・地域の中で最も好調な市場の一つとなった。
日本株市場が他の国・地域の市場の中でも好調だった背景は、多岐に亘る要因がこの期間に集中した点だと考えられる。グローバル環境の改善といった世界共通の要因に加えて、日本固有の要因、さらにはグローバル要因の中でも他の国・地域と比べて有利だった条件がそれぞれ複数件挙げられる(図2参照)。
グローバル共通の上昇要因の中では、世界的なインフレの鎮静化と、それに伴う利上げ局面終了の期待による部分が大きいだろう。国内外の株式市場は、米国の政策金利の引き上げが依然継続しているにも関わらず、昨年後半以降、その引き上げペースが低下した頃から上昇に転じた。
日本株に相対的に有利に働いた要因には、今年3月以降、米国などの複数の銀行が破綻した際、日本の金融機関は同様のケースにはほぼ当てはまらないと判断された点が挙げられる。また、中国株の低迷と日本株の加速が同時に進んだことから、中国の政治・経済のさまざまなリスクを嫌気した投資家が日本株にシフトしてきたことが示唆されている。
日本固有の要因は数多く、この期間の上昇に特に寄与した部分といえるだろう。
長年停滞に近い状態であった賃上げが、今年度は非常に幅広い企業で実施された。国内外の投資家には、企業の人件費上昇というマイナス面よりも、国内経済の活性化というプラス面が評価された。東京証券取引所のPBR1倍割れ企業への改善要請なども新たな取り組みであり、企業が時価総額を引き上げるための努力を行っていく効果が期待された。
株価は崩れにくい構造に
日本株固有の多数の要因は、株価の上昇が持続したという点でも有効であったと思われる。例えば、「コロナ規制の緩和」と「賃上げによる消費拡大期待」にはそれほど強い相関関係はない。つまり、一つの要因の効果が薄まったとしても他の効果が有効であり続ける可能性や、効果の恩恵を受ける業種や銘柄は異なる可能性により、株価が崩れにくい構造が作られていったと考えられる。
実際に、日本株の年初来の上昇率は、米国に比べバランスが取れたものとなっている。この間、米国株の上昇はハイテク株に支えられ、それらの多くが含まれる成長株(グロース株)の上昇率が割安株(バリュー株)と比べて圧倒的であった。一方、日本株はバリュー株を含め幅広い銘柄が上昇した(図3参照)。
仮に今回、日本に株価上昇につながる要素が少なく、米国のようにハイテク株に偏重した環境だった場合は、今より米国株に左右されやすい市場特性となっていただろう。半面、今回のように賃上げや低PBR企業の改善の政策が同時進行した環境であったことが、内需関連株や低PBR企業などを含めた幅広い上昇につながったとみてよいだろう。
グロース株に偏った米国株とバランスの取れた日本株では、2023年の業績見通しも対照的となっている。米国株の2023年の見通しは、ハイテク株の業績が鈍化するとの見方により下方修正の傾向が続いている。一方、日本株は昨年終盤以降は上方修正が続いており、ハイテク株の減速が補われたような状況となっている(図4参照)。
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(提供元:野村アセットマネジメント)