年金にも税金・社会保険料はかかる
年金を平均額もらえる人の手取りはいくらになるのか
提供元:Mocha(モカ)
年金を「平均額程度」もらえたら、人並みの生活ができると安心するかもしれません。実際のところ、平均額程度の年金の手取りとはどれくらいなのでしょうか?今回は、年金の平均受給額や手取りについて説明します。
年金の平均受給額は?
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2017年度(平成29年度)から2021年度(令和3年度)の厚生年金第1号受給権者(民間企業のサラリーマンだった人)の平均年金月額は、次のとおりです。
●厚生年金の平均年金月額(国民年金を含む)
上の表の金額には、厚生年金だけでなく、国民年金(老齢基礎年金)も含まれています。会社員だった人の平均的な年金額は月額14.4万円と考えてよいでしょう。
年金からも天引きされるお金がある
年金額が月額14.4万円と言っても、その金額をそのままもらえるわけではありません。年金からは以下のようなお金が差し引きされます。
●所得税
年金は雑所得となります。65歳未満で年金年額108万円超、65歳以上で年金年額158万円超の人は、所得税及び復興所得税が年金から源泉徴収されます。
●住民税
年金には住民税もかかります。年金額18万円以上で特別徴収の対象となり、年金額から住民税が天引きされます。
●社会保険料
公的医療保険(国民健康保険または後期高齢者医療制度)の保険料及び介護保険料は、年金から天引きされます。
年金が平均額程度の人の手取り額は?
東京都渋谷区在住、67歳で年金が月額14.4万円、単身世帯、他には収入がないものとして手取り額を大まかに計算してみます。
年金月額14.4万円の場合、年額では約173万円です。公的年金等控除110万円を差し引きすると、雑所得は63万円となります。この場合、社会保険料、所得税、住民税の計算方法及び手取り額は次のとおりです。
(1)国民健康保険料
国民健康保険料の基礎控除は43万円なので、所得額63万円から43万円を差し引いた20万円をもとに算定します。「令和5年度特別区国民健康保険一覧表」より、以下のようになります。
【基礎賦課分】
均等割4万5000円、所得割7.17%
→4万5000円×1人+20万円×7.17%=5万9340円
【後期高齢者支援金等賦課分】
均等割1万5100円、所得割2.42%
→1万5100円×1人+20万円×2.42%=1万9940円
【国民健康保険料の合計】
5万9340円+1万9940円=7万9280円(年額)
(2)介護保険料
第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料は条例で定められており、住民税の課税状況によって変わります。合計所得金額63万円の場合、7万2200円(年額)となります。(渋谷区の令和5年の介護保険料額より)
(3)所得税及び復興所得税
雑所得63万円の場合、5.105%が源泉徴収されるため、源泉徴収額は
63万円×5.105%=3万2161円
となります。
なお、所得控除の額は次のとおりです。
・基礎控除 48万円
・社会保険料控除
7万9280円(国民健康保険料)+7万2200円(介護保険料)=15万1480円
所得控除合計 48万円+15万1480円=63万1480円
所得控除額が所得金額63万円を上回っているため、所得税はかかりません。源泉徴収された税金は、確定申告により全額還付を受けられます。
(4)住民税
住民税の基礎控除は43万円、社会保険料控除が15万1480円なので、所得控除は58万1480円となります。
63万円(所得金額)-58万1480円(所得控除)=4万8520円
所得割額 4万8520円×10%≒4800円
均等割額 5000円
住民税合計 9800円
以上より、年金の手取り額(年額)は
173万円-15万1480円(社会保険料)-9800円(住民税)=156万8720円
となります。1か月あたりで考えると13万720円です。
なお、所得税・復興所得税は確定申告により還付されるものの、源泉徴収されますので、考慮しておく必要があります。年額3万2161円なので、1か月あたり2680円となり、1か月の手取りは13万円を下回ります。
まとめ
年金の平均受給額は月額14.4万円ですが、手取りにすると13万円を下回ることもあります。また、年金の振込は2か月に1回です。年金生活になると、給料を毎月もらっていたときとは事情が変わってきます。老後資金を増やすことも大事ですが、生活費の管理方法を工夫することも必要です。
[執筆:ファイナンシャルプランナー 森本由紀]
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