知ってるようで知らない!
大人こそ知っておきたい!「おかねの知識と未来をひらくヒント」
2024年からはじまる新しいNISAに向けて、投資に対する注目度が高まっていますが、投資に取り組むにあたり、ご自身の収支管理の必要性に気づく方も多いのではないでしょうか。単に収支管理といっても、家計簿をつけるだけではなく、「使ったおかね」を色分けすることで、削減できるコストを見つけることが重要です。
そこで、今回は、「おかねの価値観」、「おかねの使い方」、「おかねを稼ぐ」、そして「金銭管理」といった観点から、幅広い世代に『おかねの基礎教育』を行ってきた、金融教育ディレクター兼横浜銀行行員の橋本長明氏に、金融教育元年と称される2005年から金融教育の最前線を歩んでこられたご経験をもとに、「おかねの使い方」による区分手法や、それを活用した「浪費」の見分け方など、知っておきたい「おかねの知識」についてわかりやすく解説いただきました。
おかねの基礎を学ぶ、その前に・・・
今回は資産形成の基本として重要である、「おかねの基礎教育」について学んでいきますが、まずはあらためて資産形成とは何ぞやということをご説明させていただきます。
資産形成とは、人生で「おかね」が不足しないために、「おかね」を貯める(貯蓄)、増やす(投資)ことを言います。これは一般的には預貯金や投資信託などの金融商品を活用して金融資産を貯蓄・増加させることを指します。
そしてこの資産形成に際して、皆さんが意外と見落としがちなのが、資産形成の目的です。資産形成には次の3つの目的があるのですが、みなさん意識していますでしょうか?
・夢や目標をかなえるために必要な手段
・突然の出費に対応するための備え
・人生100年時代と呼ばれる超高齢社会に対応するため
つまり、「おかね」を増やすこと自体が目的ではないのです。上の3つの目的をもって「おかね」を増やすことが、資産形成を行ううえで大切なのです。
また、資産にもさまざまな種類がありますが、預貯金や投資信託、不動産、車、アート作品などの「有形資産」と、知識、技術、健康、人脈、評判などの「無形資産」に分類できます。金融資産を形成し、そこで得た金銭によって無形資産を形成して、この無形資産を活用してさらなる金融資産をはじめとした有形資産を形成するというサイクルができると、より豊かで、すてきな人生になるのではないでしょうか。
そして、この資産形成を行う前に必ず実施していただきたいのが、「金銭・家計管理」です。資産形成をするためには、まず自身の収支を把握し、収支がプラスであることを確認しておくことが大前提です。そして、夢や目標を含めたライフプランニングを計画し、自身がどれだけの金額を資産形成にまわそうかと考えるというプロセスが大切になります。
では、ここから本題の「おかね」の基礎について学んでいきましょう!今回は、『おかねの基礎教育』の4つの切り口、「おかねの価値観」、「おかねの使い方」、「おかねを稼ぐ」、「金銭管理」のうち、資産形成を行う際に学んでほしい「おかねの価値観」、「おかねの使い方」、「金銭管理」についてお話しさせていただきます。
おかねの価値観
みなさんにとって「おかね」とは何でしょうか?
現代社会は良くも悪くも経済社会です。何をするにも「おかね」が掛かります。この経済社会全体が人間の体だとする、「おかね」は血液であり、体内をグルグル巡るものです。そして、この血液である「おかね」を送り出している心臓が日本銀行や銀行であるといえます。血液が体をきちんと巡らないと不健康になるのと同様に、経済社会も「おかね」が巡らないと景気が悪くなる(=不景気)のです。
経済の血液でもある「おかね」には次の3つの優れた機能があります。
・価値交換機能…モノやサービスの購入、労働の対価としての賃金支払いなどが「おかね」を通じてなされること
・価値尺度機能…「おかね」は値段という同一尺度で様々なモノやサービスの価値を示すこと
・価値保存機能…モノを「おかね」に換えることにより、「おかね」という同一価値で保存
ここで、このような3つの機能を有する「おかね」の価値について考えてみるのですが、「おかね」というのはあくまでも信用で成り立っています。
というのは、日本の貨幣で一番価値のある一万円札の製造コストは実は1枚たった約20円なのですが、世界中の人々が、日本という国を信用し、そしてこの一万円札を「おかね」として認識してくれているからこそ、先述の3つの機能を有するのです。
言い換えれば、「おかね」自体に価値はなく、信用を失ってしまえば、一万円札もただの紙切れ同然となってしまうのです。第一次世界大戦後のドイツや近年のジンバブエ、ベネズエラなどがまさに貨幣価値が暴落してしまった例ですね。
「おかね」は人生に寄り添う便利な道具
ここまでの内容を整理すると、「おかね」は私たちが生きていくため、そして夢や目標をかなえるために必要な「人生に寄り添う、便利な道具」であると言えます。つまり、「おかね」がたくさんあるから幸せになれるわけではなく、幸せに生きていくために「おかね」という道具があるのです。そのため、目的もなく「おかね」を稼いだり貯めたりするのではなく、目的をもって「おかね」を稼ぐ・貯めるといった価値観を持つことが重要なのです。
おかねの使い方
「おかね」を使うといっても、実は次の3つの使い方があります。
・消費…現在の満足のために「おかね」を使うこと
・投資…将来の自分のため、未来の満足感を高めるために「おかね」を使うこと
・浪費…必要以上に「おかね」を使うこと
どのように「必要以上」を判断するの・・・?
1つの判断基準となるのが、「ニーズ(必要なもの)」なのか「ウォンツ(欲しいもの)」なのかです。「ウォンツ」であるということは、言い換えれば、必要ではないが「欲しいもの」であり、削減可能な支出といえます。「浪費」を減らすためには、「おかね」を使う時に常に「必要なものなのか?」「欲しいものなのか?」を自問自答する癖をつけるとよいでしょう。浪費を減らすことで、消費や投資に回す「おかね」を増やすことができ、人生が豊かになることにつながるはずです。
「おかね」は使うための道具!
とはいえ、「おかね」は使いすぎもよくないのですが、使わなすぎも問題です。あくまでも「おかね」は道具ですから、この道具を使わないのは本末転倒です。逆に言えば、道具なので使わないのはおかしいですね。きちんと使うことも大切なのです。
また、日本のGDPにおける個人消費は5~6割程度を占めており、経済社会における個人消費のウェイトは高いのです。極論を言えば個人消費が増えれば増えるほど景気はよくなり、個人消費が落ち込めば落ち込むほど景気が悪化するとも言えるのです。
金銭管理
前項で、「浪費」を減らすことが重要であるとご説明しましたが、具体的にどのように管理していけばよいのでしょうか。管理方法としては一般的な家計簿(アプリを含む)やおこづかいちょうを使用すればよいのですが、その際、「簡単に記載して継続すること」、「自分なりのルールを決めること」が重要だと思います。
例えば、支出項目を細分化しすぎないこと、金額を1円単位ではなく10円単位とするなど、ざっくりで構いませんので、まずは負担なく継続できるように工夫してみてください。また、クレジットカードは決済日ベースではなく使用日ベースで記入するなど、自分なりのルールを作っておくといいでしょう。
ちなみに、自身は11年間おこづかいちょうをつけ続けて、「おかね」の動きを見える化することで、支出が半分以下となりました!
なお、横浜銀行では「こどもも大人も学んで使えるおこづかいちょう」を作成しており、こちらのウェブサイトからダウンロードいただけます。
まとめ
ここまで、「おかねの価値観」、「おかねの使い方」、そして「金銭管理」について解説してきましたが、要点をまとめると以下のとおりです。
・金銭管理は経済社会を生きていくうえでは欠かせない行為であり、資産形成やライフプランニングの大前提!
・「おかね」を見える化する(収支を把握する)
・目標や計画を立てて、「おかね」を使ったり貯めたりする
・モノを大切にする
・「ニーズ」と「ウォンツ」、「消費」「投資」「浪費」を自問自答する癖をつける
・浪費を減らし、消費や投資、そして資産形成に回すことで、より豊かな人生を!
・家計簿やおこづかいちょうは、正確さよりも継続して記録することが大事!
重要なことは、「金銭管理」によって「おかね」の流れを見える化することで浪費を減らし、これによって生じた余裕資金で有形資産・無形資産を問わず資産形成を行っていくことです。
また、「おかね」の流れが見える化されたことによって、「同じモノ」への度重なる支出が見つかる場合もあります。例えば、自身の経験では、不注意からの破損などによって何度も同じものを購入していました。このような場合、モノを大切することを心がけることによって、支出を減らすこともできます。
最後に
現代では、気候変動やSDGsといった地域・社会・地球規模の問題に直面する世の中となり、他者のことを考えることがより大切な時代となってきており、「おかね」を介した他者への関わり方はさらに増していくと考えられます。
また、経済社会である以上、人生の多くのことには「おかね」が掛かりますが、「おかね」はあくまでも生きるため、夢や目標を叶えるために必要な道具です。「おかね」がたくさんあるから幸せなのではなく、幸せに生きるために「おかね」があるのです。
皆さんも「おかね」を意識して、すてきな人生を送ってみてはいかがでしょうか。
詳しい内容は「JPXマネ部ラボ!セミナーマネ部!」で配信中ですので、ぜひご覧ください。
前半(35分)
後半(29分)
(東証マネ部!編集部)
また、個人では「金融教育ディレクター」として、テレビ・ラジオ・雑誌ほか各種メディア出演や講演など金融教育の普及に向けて邁進するほか、ブランディングディレクター・選曲家など、人や社会が楽しくなり、何かを考えるきっかけを創る活動をしている。
文化服装学院特別講師、日本FP協会会員。著書に「すてきな相棒!おかね入門」(リトルモア)。