【日経記事でマネートレーニング40】資産形成編(7)FP3級資格のすゝめ ~金融教育に目標と体系的学習を

提供元:日本経済新聞社

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このコーナーでは日経電子版や日本経済新聞の記事を題材に、投資のリテラシーや資産形成力の基礎知識を身につけることを目的にしています。

これまでは株式相場や金融市場に関するテーマが中心でしたが、2023年からは資産形成全体にジャンルを広げて解説します。毎回できるだけ異なるテーマを取り上げ、読み続けるうちにぐるりと資産形成の話題を一巡して網羅的体系的に基礎リテラシーが身につくように配信していく予定です。

マネーの学習、資格試験で目標と意味と形を

サンプル記事をご覧ください。マネーの学びの一環として資格試験を受けてみてはどうか、という日経電子版記事の見出しです。結論から申し上げると私はこの提案に大賛成です。

2024年からの新NISA(少額投資非課税制度)に向けた準備という点からも、一定のスキルを身に着けておくことには大きなメリットがありますし、特に「資格試験」を活用することは方法論的にも有益です。

たとえば、マネーに強くなろうと日経電子版を漫然と読んでいても目的意識が希薄なので頭に入りにくい→成果がみえてこない→読むのが苦痛になる→日経電子版購読やめる、という良くない循環に陥ります。これが試験に合格する、スキルを習得する、というふうに目標を切り替えるととたんに勉強そのものに意味が持ち、形がはっきりとし、モチベーションもあがります。

マネーの学習範囲を知ることにも意味があります。そもそもマネーの領域ってどこまで、と問われても明確な定義や答えはなく、イメージで考えるしかなかったのです。試験を受けることによってこの境界がはっきりします。

20万人以上の会員で構成する日本ファイナンシャル・プランナーズ(FP)協会では、FPが習得すべき分野として「金融資産運用設計」「不動産運用設計」「リスクと保険」「相続・事業承継設計」「タックスプランニング」「ライフプランニング・リタイアメントプランニグ」を挙げています。ここから金融、不動産、保険、相続、税、計画策定――の6課目が「マネー」の範囲だと考えて間違いないでしょう。

では、投資・金融の初心者にとって具体的にどのような資格試験がおすすめでしょうか。私は個人的には「3級FP技能検定」(入門レベル)を推奨します。大学生から20代、30代の社会人あたりまでをターゲットにしているとみられる平易な試験です。2、3週間程度の短期集中型勉強で合格圏に達することが可能で、それでいて社会人としてじゅうぶんな金融の素養が身につきます。教材は市販の書籍で間に合いますし、通信教育も不要なのでコストはほとんどかかりません。受験料も1万円以下で済みます。

試験範囲は社会保険や公的年金、企業年金などの社会制度、生命保険や損害保険から株式、債券投資など金融商品関係、そして所得税や税額控除など税制の仕組み、不動産から相続・贈与までまさに6課目の基礎知識が薄く広く出題されます。合格レベルに達すれば社会人として最低限知っておくべき金融の常識が身に付き、資産形成のスタートラインにも立てることになります。

FPのクラスでいうとこの上にAFP(2級相当、中級レベル)があります。金融リテール営業の方や、保険のプランナーの方はこの程度までのスキルアップを目指す方が多いようです。そのうえが上級のCFPです。世界各国で通用する国際資格ですが6課目すべてで専門知識を試す試験が独立して受けないといけないので、難易度が一気に上がります。

体系的網羅的学習で様々な相乗効果

どのスキルでも同じですが体系的網羅的な学習はとても大切で、全体像がアタマに入ると理解が格段に進みます。必要な情報か不要な情報かの線引きもできるようになりますし、根幹の部分と枝葉の部分も区別できるようになります。FP 3級程度でも資産形成の学習を一通り終えると、理解の仕方が180度変わってきます。そうですね。たとえば新NISAを例にとってみましょうか。

勉強前は、新NISAが話題になっているのをみて「新NISA」そのものを学ぼうと努めます。書店に行くと所せましとばかり「わかる新NISA」的な解説書籍が平積みに置かれています。そして、指南書を読みこなし、新NISAそのものを始める――そういう行動パターンになるはずです。つまり、新NISAを学習したから新NISAだけをターゲットにするのであって、それ以外の商品や制度を活用しようという選択肢は存在しないのです。

では勉強後はどうでしょうか?
FPの基本知識として年金も保険も不動産も頭の中にはいっています。

「NISA以外に類似のイデコもあったはず」「うちの会社には企業年金も公的年金もあるようだが果たしてNISAって必要なのか」「わが家は遊休地があるので不動産という手もある」など自分で様々な運用手段を比較検討できるようになります。

資産形成にかかわる情報への理解力も深まります。金融教育サイトでは質・量で圧倒する「JPXマネ部!ラボ」「東証マネ部!」のボリュームいっぱいのコラムを楽々と読みこなせるようになるでしょう。難しいという烙印が押されっぱなしの日経電子版の記事もすいすいと読めるようになるはずです。一定の基礎リテラシーが身について情報の咀嚼力が高まると、あとはこうして独力で知識を吸収できるようになるのです。

実際の取引や売買の場面でも役立ちます。営業マンと話していても「このひとの話していることは本当だろうか?セールストークっぽいな」と疑心暗鬼になる場面が少なくなってきます。自分のリテラシーがあがることで情報の真贋が見極められるようになるからです。パンフレットやカタログをみて金融商品の目利きがきくようになり、商品のよしあしもわかるようになってきます。高校では金融教育が義務化されました。親子で金融リテラシーが身に付けば、二世代で資産設計ができるようになります。いいことづくめですね。

ちなみにわが家でもこの春、せがれが3級FP技能検定試験に合格しました。「年金制度がむずい、さっぱりわからん」とぼやいていたので合格にはずいぶん喜んでいました。せがれは大学病院の勤務医なのですが、自分の資産形成のためではなく、保険や介護などの基本知識を得ておきたいというのが受験の動機だったようです。臨床の場でも近年医療保険や健康保険、介護保険など「医学以外」の知識が求められる機会が増えているそうです。

FPの資格をとってもそれ自体、何もおカネを生みませんが、確実にあなたをおカネに強い体質に変えてくれます。いざ、チャレンジ!

(日本経済新聞社コンテンツプロデューサー兼日経CNBC解説委員 田中彰一)

日経記事でマネートレーニングが動画化!

投資や資産形成への第一歩を踏み出す時に、「経済ニュース」や「マーケット報道」の理解は、重要な“羅針盤”となります。ただ、記事を読み解くのが難しい時もあり、普段、見慣れない相場用語なども多く、途中であきらめたくなる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

東証マネ部!の人気コンテンツ「日経記事でマネートレーニング」でもお馴染みの、日本経済新聞コンテンツプロデューサー・田中彰一氏を講師にお迎えし、「投資初心者」の方でもやさしくマネーのキホンを学べる講座をシリーズ(全6回)で開催します。

日頃から日本経済新聞をはじめとした「記事」を活用されているビジネスパーソンの皆さんにも参考となる内容でお届けします。「勉強するぞ!」という感じに構えず、肩の力を抜いて学べるような講座になりますので、是非、この機会にお気軽にご視聴ください。

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