総額ではなく「月額」を低くすることで車を持てる人が増える

車のサブスク「定額カルモくん」代表に聞く“車の持ち方”の変化

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月々定額制で車に乗れる「カーリース」や「車のサブスク」と呼ばれるサービス。購入するわけではないため、車が自分のものになるわけではないが、購入に必要な税金や手数料が月額に含まれ、初期費用がかからないなどの利点がある。

一般社団法人日本自動車リース協会連合会(JALA)が公表している「新車販売に占めるリース車比率」を見ると、2010年は10.3%、2015年は12.29%、2020年は15.51%と、車を借りる人が増えてきている。

なぜ、いま「カーリース」「車のサブスク」が盛り上がりつつあるのだろうか。カーリースサービス「定額カルモくん」を運営しているナイルの代表・高橋飛翔さんに、サービス立ち上げの経緯やカーリースの現在について、伺った。

「月額制」かつ「オンライン契約」がサービスのポイント


カーリースというと、自動車メーカーが立ち上げたサービスを想像する人も多いかもしれないが、「定額カルモくん」は自動車メーカーから独立しているため、さまざまなメーカーの車を取り揃えられるという特徴がある。

また、店舗を持たず、車やプランの選択から納車まで、すべてオンラインで完結できるところも特徴的な部分といえる。車を借りる期間は1~11年の間、1年単位で設定でき、年数が長くなるほど月額が低くなる仕組みだ。

先述したとおり、自動車メーカーから独立している「定額カルモくん」。というのも、運営しているナイルは、もともとデジタル技術を用いたマーケティング支援や業務効率支援を行っている企業なのだ。なぜ、既存事業とは異なる自動車業界に参入したのだろうか。

「これまでは水平にいろいろな会社を支援していたのですが、何かひとつ大きな産業を深掘りして変革していかないと、日本は変わらないと感じたんです。そこで選んだのが、日本におけるもっとも大きな産業のひとつである自動車でした。まったく新しいデジタライズされたサービスをつくることができたら、大きなインパクトを与えられるんじゃないかと思い、検討を始めました」(高橋さん・以下同)

社内のミーティングではEV(電気自動車)や自動運転、カーシェアリングなど、さまざまなテーマが挙げられたが、高橋さんが目を付けたのは「日本が車大国」ということ。

「日本は、人口1億2000万人超のうち、約6000万人が乗用車として自動車を持っている車大国で、車の買い方は銀行のマイカーローンやディーラーローン、残価設定クレジットなど、多数の方法があります。しかし、月額制でお得な価格、かつオンライン完結というコンセプトの買い方は出てきていませんでした。5年後、10年後の車の持ち方を考えたときに、すべての車はオンラインで気軽に契約される時代が来ているはずだと思い、その先駆けとして『定額カルモくん』を立ち上げたのです」

2018年にサービスを開始した「定額カルモくん」は、他社のカーリースではあまり見ない「11年契約」を実施している。

「リース業界でいうと掟破りの大きなチャレンジでしたが、日本人の平均的な新車の乗用期間は9年ほどになっていて、11年乗り続けている人もいるので、決して無謀な挑戦ではないと感じたんです。実際に11年で契約してくれているユーザーさんはたくさんいます」

「月額」を低くすることでより多くのカーライフを支える


「カーリース」「車のサブスク」というと、車を買うのではなく“借りる”ことに新鮮味を感じるものだが、本質は別のところにあるという。

「車を買うか借りるかは重要ではなくて、月々定額制という体系で車を持っていただくことが重要だと考えています。例えば、300万円の車があったとして、ローンにすると月々10万円の35回払いになるとします。一括なら300万円、ローンだと総額350万円なので、一括のほうが安いですが、ほとんどの人は一度に300万円を支払うのは難しい。だったら、総額は高くても月額が安いほうがいい。そこで、私たちは総額ではなく、月額を安くするサービスに焦点を当てたんです」

「月額」に焦点を当てたのは、現在の日本で展開するサービスだからこそ。

「年収が平均400万円くらいで固定されている世の中で、物価や税金は上がり、可処分所得が下がっています。10~20年前に比べると貯金しにくくなっていて、100万~200万円くらいの貯金を全部切り崩して車を買うのは現実的ではないですよね。子どもの教育費やマイホームの頭金、突発的な支払いがあるかもしれない。そうなったときに、月額を安くして長く払うという選択肢が出てくると考えました」

個々の収入やライフプランによって、支払える金額は大きく変わる。それでも車がないと生活ができないという人も多く、月額制のカーリースは需要があった。

「ユーザーの多くは、平均年収400万円くらいの中間所得層の方々。日本全国で利用してもらっていて、東京都心以外はほぼ人口統計と比例するような分散具合です。“若者の車離れ”といわれることもありますが、実際はそうとも言えなくて、東京でも奥多摩のほうに行けば車は必須。都心からほど近い足立区の辺りでも、車がないと不便だったりします。意外と、都市近郊は車の需要があるんです」

高橋さんの口から出た“若者の車離れ”。実際に起こっていることではないのだろうか。

「車から離れているわけではなく、都市部、主に東京への流入が続いているだけだと捉えています。都市部は交通機関が発達していて、駐車場代が高いので、車を持つ必然性がないというだけで、地方の若者はみんな車を持っています。だから、日本における車はまだまだ大きな市場だと思いますね」

薄くなりつつある「リース」と「ローン」の境


「定額カルモくん」の今後の展開も聞いた。

「いまは11年の長期リースという強みがありますが、今後は3年くらいの短期リースもより充実させていきたいと考えています。また、低所得層の方々に向けて、さらに安く車をリースすることも検討の余地があると感じています」

価格の面以外でも、より多くの人にサービスを届けるための変化が必要だと感じているようだ。

「与信審査(契約に当たっての審査)の枠を広げたいと考えています。いまは提携している金融機関の与信審査で進めているのですが、日本の審査基準だと、外国人や学生に承認がおりづらいんです。アグレッシブに私たち自身が審査に踏み込む商品をつくることで、より多くの方に車を貸せるようになるはずです。車の持ち方は100人に100通りのニーズがあると思うので、サービスの選択肢を増やしていきたいと思っています」

最後にカーリース業界のこれからを聞くと、「カーリースとカーローンの違いはほとんどないのではないか」という答えが返ってきた。

「カーリースを検討される方は、大抵カーローンも検討しています。月々定額で車を持つという点で違いはないので、どちらも含めて“月額で車を持ちたい一般消費者向けの自動車金融市場”と捉えられると思うんです。いずれはリースとローンの境が消えていくのではないかと。私たちはより便利なものを提供し、オンラインで売ることに注力していくだけですし、それによって車の持ち方の選択肢が増え、車に乗る人が増えていったらいいなと思っています」

企業の工夫によって、車が月々1万円台で乗れる時代。さまざまなサービスを知ることで、うまく支出を減らし、家族や自分の将来のための備えができるといいだろう。

(取材・文/有竹亮介(verb) 撮影/山本倫子)

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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