主幹事会社の規模や知名度によって新規上場株式の当選率が変わる!?
新規上場株式にも影響するらしい「主幹事会社」ってなに?
企業が上場する際に発行する「新規上場株式(IPO)」。抽選に申し込み、購入することができれば、大きなリターンを得られる可能性があったり、その企業を応援する気持ちが強まったりといったメリットが考えられる資産だ。
以前、ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太さんに新規上場株式の買い方のコツを教えてもらった際、「主幹事会社で申し込むと当選確率が上がる」と聞いた。この主幹事会社とは、どのような役割を持っているのだろうか。
主幹事会社の役割は「株式の卸売り」「上場企業へのアドバイス」
「主幹事会社とは、企業の上場や新規上場株式の発行を取り仕切る証券会社のことです。主幹事会社は1社だけのこともあれば、複数の証券会社が幹事会社を務め、主幹事と副幹事に役割が分担されることもあります」(伊藤さん・以下同)
主幹事会社は、第三者(投資家)に新規上場株式を販売する卸売りの役割を担う。
「主幹事会社自身が新規上場株式を売るのはもちろんですが、副幹事会社や株式の販売だけを行う販売会社に株式を振り分ける役割も担います。一般的には主幹事会社が株数をもっとも多く保有するため、主幹事会社で抽選を申し込むと当選しやすくなるといえます」
新規上場株式の販売に関すること以外にも、主幹事会社には役割があるとのこと。
「上場を見据えている企業に対して、上場に関するアドバイスも行っていきます。また、上場後も経営に関して助言したり、大株主が所有している株式の売買に関する相談に乗ったりすることもあります。具体的には、M&Aの紹介や増資対策のアドバイスなどを企業から求められることが多いようです」
主幹事会社の規模によって企業の成長が確約されるわけではない
上場にあたって主幹事会社の手腕が大きく影響しそうだが、企業は数ある証券会社のなかから、どのように選択するのだろうか。
「一般的には、大手の証券会社がいいとされています。大手は上場をサポートした経験が豊富なので、企業としてはそのノウハウを借りたいと考えるのが普通でしょう。投資家から見ても、ある程度名の知れた証券会社が主幹事会社としてついていると、投資先の企業への安心感につながるので、大手を望む企業は多いといえます」
ただし、希望する証券会社に主幹事会社を受けてもらえるかというと、そうともいえない。
「大手は請け負っている件数が多いため、すべての企業に対応できないという側面があります。また、証券会社に支払う手数料などのコスト面がネックとなり、大手への依頼を断念する中小企業もあります。ただ、大手にお願いしたからといって、必ず上場後も成長し続けられるわけではありません。地元密着型の小さな証券会社が幹事会社としてついている企業でも、しっかり成長しているところはあります。上場後の経営に関しては、その企業自体が事業を展開していけるかどうかが重要なのです」
幹事会社から“上場企業の特性”が見えることもある
投資家にとって幹事会社は、「当選確率を上げる」「投資先の企業に対する安心感を与える」という点以外に、影響はあるだろうか。
「名の知れた証券会社だと安心感がありますが、大手であればあるほど顧客の数が多いので、新規上場株式の抽選の倍率が高くなり、当選しづらくなる可能性があるといえます。その点、地方の証券会社が幹事会社となっている場合、そのエリアに住んでいる人が顧客の中心で数も少ないでしょうから、当選率は上がるかもしれません。あえて知らない証券会社を幹事会社に置いている企業を探すのも、ありといえるでしょう」
投資先となる企業の情報はもちろん重要だが、どの証券会社を主幹事会社に据えているかで、見えてくる情報もある。主幹事会社も、企業研究の材料にしてみよう。
(取材・文/有竹亮介(verb))