抽選に当たるコツは「複数応募」と「日頃のコミュニケーション」?

証券取引所での売買とは違うらしい?「新規上場株式」の買い方

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企業が上場すると、証券取引所でその企業の株式を売買できるようになる。では、上場するタイミングで株式を購入するには、どうすればいいのだろうか?

新たに証券取引所に上場する株式のことを「新規上場株式(IPO)」と呼ぶのだが、実は上場の直前に購入することができるのだ。ただし、証券取引所の売買とは異なる購入方法となる。どのように購入できるのか、ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太さんに教えてもらった。

抽選で当たった人だけが買える「新規上場株式」

「新規上場株式は、企業が上場する前の段階で購入するものなので、証券取引所の市場での取引ができません。証券会社を経由して買うことになるのですが、基本的には抽選制で、当選した人が購入できます」(伊藤さん・以下同)

新規上場株式の上場が証券取引所に承認されると、公開価格を決めるブックビルディングが行われる。ブックビルディングで投資家が提示した希望株価などをもとに公開価格が決定し、新規上場株式の抽選申し込みが開始となる。

「基本的には、新規上場株式を扱う証券会社が決めた期間に申し込み、抽選結果を待ちます。証券会社の多くでは、申し込みの時点でお金を証券口座に入金しておく必要があります。申し込み時に希望する購入金額を記入するのですが、値段を高めに設定しているほど抽選に当たりやすいというケースが増えているようです」

「抽選に当たりやすいケース」があるということは、落選することも多いのだろうか?

「申し込んだからといって、必ず当選するわけではありません。特に最近は新規上場株式の人気が高いので、銘柄によっては倍率100倍、200倍というものもあるようです。当てるほうが難しいと思っておいたほうがいいでしょう」

なぜ、いま新規上場株式の人気が高まっているのか。その理由は、株式市況にあるという。

「中長期的に見ると、日経平均も含めて株式市況が好調だからです。株式市況がいいと上場を考える企業が増えるので、新規上場株式の数自体が増えると考えられます。また、日本は金融緩和が継続していますし、インバウンドの需要や円安も重なり、注目が集まっているので、そのなかでこれから上場して成長するであろう企業に期待が集まるのは自然な流れだといえます」

特に注目されているのは、「中小型株」と呼ばれるベンチャー企業の新規上場株式だという。売上も規模も小さいものの、新たなビジネスに乗り出している企業や特許を取得している企業は伸びしろがあり、注目を浴びやすいとのこと。

新規上場株式がもたらすメリット

日本企業に注目が集まっている背景はわかったが、そもそも新規上場株式はリターンを得やすいといったメリットがあるのだろうか?

「必ずしも儲かるとは限りませんし、若干リスクが高い資産ではありますが、その分リターンも大きいといえます。なかには株価が10倍、20倍に上がる銘柄もあり、過去には100万円ほどで購入した新規上場株式が20億円になったケースがありました。ただし、ごく稀なケースで、100社のうち1社か2社あったらすごいというレベルです」

もうひとつ、新規上場株式を購入することでのメリットがあるそう。

「新規上場株式の購入は、新しく頑張る企業を支援する行為ともいえます。一般的な株式投資にもいえることではありますが、特に新規上場株式を持つと、その企業を応援したい気持ちが強まると思います。上場して会社を大きくしていこうという姿を、株価という実感を伴って見ることで、その企業の製品やサービスを使おうという気持ちになるでしょう」

リターンも大きく、希望にあふれた新規上場株式への投資だが、注意点もある。

「上場する企業は玉石混淆で、残念ながら上場をゴールと捉えているところもあります。そういう企業だと最初の株価が最高値で、上場後は右肩下がりということにもなり得るのです。新規上場株式は必ず儲かるということはないと覚えておきましょう」

できる限りマイナスを防ぐため、新規上場株式においても一般的な株式投資と同様にリサーチが重要になるという。

「上場にあたって企業が目論見書を公開するので、しっかり読み込むことが大切です。業績などの数字の部分だけでなく、その企業のビジネスモデルや将来性、役員や従業員の動向なども把握できるといいでしょう」

「ネット」と「対面型」で異なる当選のコツ

新規上場株式を購入する際の注意点を教えてもらったが、購入の権利は抽選となるため、どれだけ準備しても絶対に買えるという保証はない。

「ネット証券の多くは、完全抽選の形式を取っているので、運任せです。目論見書をしっかり読み込んで、その企業を研究したとしても、当たらないときは当たりません。ただ、SBI証券などの一部のネット証券では、新規上場株式の抽選に外れるとポイントがもらえて、そのポイントが増えると当たりやすくなるという制度を導入しているところもあります」

一方、対面販売を行っている証券会社では、運以外の要素が影響する可能性もあるようだ。

「対面型の証券会社では、新規上場株式のすべてが抽選とは限りません。なかには、お得意様に配ることもあります。どうしても新規上場株式を買いたいという場合は、日頃から証券会社の担当者とコミュニケーションを取り、株式や投資信託などの取引も重ねておくと、気になる新規上場株式が出るときに融通してもらえる可能性があるかもしれません」

そのほかにも、新規上場株式の当選確率を上げるコツをいくつか教えてもらった。

「その企業の新規上場株式を仕切っている主幹事会社と呼ばれる証券会社で申し込むと、当選確率が上がるといえます。主幹事会社は、配布する株式をもっとも多く持っているはずだからです。また、あらかじめ証券口座に入れるお金が必要にはなりますが、複数の証券会社で申し込むことでも可能性が広がります」

ここまで新規上場株式の買い方について教えてもらってきたが、投資初心者に新規上場株式はおすすめといえるだろうか?

「新規上場株式を購入するのはいい経験になると思いますが、事前に口座に入れるお金が必要になるので、使う予定のない余裕資金があるなら申し込んでみてもいいでしょう。例えば、貯金が100万円あったら、20万円くらいを入れるイメージで考えましょう。2024年から始まる『新しいNISA』の成長投資枠でも新規上場株式は購入できるようになるはずなので、ある程度資金や投資の知識が増えてきたら、NISAでチャレンジしてみるのもいいと思います」

10倍、20倍のリターンと聞くと、夢のある新規上場株式だが、倍率は極めて高い。余裕資金があったら、当たればラッキーくらいの気持ちで申し込んでみるのもいいだろう。
(取材・文/有竹亮介(verb))

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お話を伺った方
伊藤 亮太
スキラージャパン取締役、ファイナンシャルプランナー。慶應義塾大学大学院商学研究科経営学・会計学専攻を修了し、在学中にCFPの資格を取得。証券会社にて営業・経営企画・社長秘書・投資銀行業務に携わった後、独立し、現在は個人のマネー・ライフプランの提案、策定、サポートなどを行うかたわら、資産運用に関連するセミナーの講師や講演を多数行っている。著書に『はじめてのNISA 知識ゼロからの始め方・選び方』など多数。
著者サイト:http://www.skirr-jp.com/
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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