投資信託のトレンドが分かる!
2023年8月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2023年8月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「前月に引き続き、当月も資金流入超」
資金流出入は約7,570億円の資金流入超と、前月(約7,070億円の流入超)から増加した。
資産別の資金流入では、流入額の大きい順に、外国株式(約4,200億円)、国内株式(約1,400億円)、エマージング株式(約1,140億円)となった。当月は、米長期金利上昇の影響を受け国内外株式の株価は下落したが、eMAXIS Slimシリーズを始めとする外国株式型パッシブファンドへの資金流入が継続した。また、エマージング株式は11ヵ月連続で資金流入超となった。主に景気が堅調に拡大しているインドに関連するファンドを中心に資金が流入した。
資産別の資金流出では、不動産投信(▲約110億円)、国内債券(▲約100億円)エマージング債券(▲約14億円)が流出超となった。不動産投信は、米長期金利上昇が嫌気されたことや不動産投信市況の悪化が懸念され売りが優勢となったことなどが影響した。
個別ファンドでは、前月に引き続き「インベスコ世界厳選株式オープン(ヘッジなし・毎月決算型)」(インベスコ)(約800億円)が資金流入で1位となった。2位は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(三菱UFJ国際)(約740億円)、3位は「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ国際)(約690億円)が続いた。
主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
2.投信市場のパフォーマンス動向
「円安の影響でハイイールド債券、外国債券のリターンが上位」
8月の金融市場は、米長期金利上昇の影響で国内外の株式を中心に上値の重い展開となったが、外国為替市場で円安が進行したことから円換算ベースでリターンはプラスとなった。
株式市場は米金融引き締めの長期化観測などの影響で米長期金利が上昇し、日米欧の主要株価は下落した。米国株式は、月前半は米大手格付け会社による米国債の格下げに伴うリスク回避の動きや堅調な雇用統計を好感した米長期金利の上昇を受けて下落した。月中旬は、米金融引き締め長期化への警戒感が強まり株価はさらに下落した。その後月後半にかけて、軟調な米雇用関係指標などを受け米長期金利が低下したことに伴い株価は小幅に反発したが、月初の水準までは回復せず上値の重い展開となった。
日本株式は、月前半は米国債の格下げや日銀の金融政策修正などによる国内長期金利の上昇への警戒感から利益確定売りが優勢となり下落した。月中旬は米金融引き締め長期化懸念に伴う米国株式の下落や中国経済の先行き懸念が影響し株価は下落した。その後月後半にかけては、2023年4月-6月期の好調な企業決算の影響により株価は反発したが、月初の水準までは回復せず上値の重い展開となった。
債券市場は、日米金利は上昇(債券価格は下落)、独金利は小幅に低下(債券価格は上昇)した。米国10年国債利回りは、月前半から月中旬にかけて、米国債の格下げや堅調な雇用統計、米金融引き締めの長期化観測などから4.34%付近まで一時上昇し、2007年11月以来の高水準となった。その後は軟調な雇用関連指標を受け、当月末には4.09%まで低下した。
独10年国債利回りは、月前半から中旬にかけて米長期金利の上昇に伴い一時上昇するも、月後半はユーロ圏の景況感の悪化などが影響し低下した。日本10年国債利回りは、米国の金利上昇や日銀による長短金利操作の運用柔軟化などを受けて月後半にかけて0.68%超まで一時上昇し、2014年1月以来の高水準となった。
為替市場は、米ドル・円、ユーロ・円ともに円安が進行した。米ドル・円は、米長期金利の上昇に伴う日米金利差拡大に加えて、景気低迷が懸念される欧州や中国とは対照的に米国は比較的底堅い景気を維持していることが影響した。ユーロ・円は、根強いインフレ圧力を背景に欧州中央銀行(ECB)が金融引き締め姿勢を維持していることが影響した。
これらを背景に、当月はハイイールド債券、外国債券がパフォーマンス上位となった。両者ともに米長期金利上昇の影響で価格自体は下落しているものの、外国為替市場で円安が進行し、円換算ベースでリターンはプラスとなった。そのほか、不動産投信市場では、国内不動産投信が堅調な国内景気を好感し小幅に上昇、海外不動産投信は米長期金利の上昇を嫌気し下落したが、円安がプラスに寄与しリターンは上位となった。
パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「設定本数、設定額ともに前月より減少」
当月の新規設定は18本と前月(29本)から減少した。設定額も約590億円と前月(約1,160億円)からほぼ半減し、3ヵ月ぶりに1,000億円を下回った。設定額は1位の外国株式型ファンドで全体の約5割を占めた。
新規設定ファンドのうち、設定額が最も多かったのは、「ウエリントン・企業価値共創世界株ファンドB」(野村)(約300億円)、次いで「みずほ日本オールキャップ株式ファンド」(AM-One)(約160億円)となった。
1位のウエリントン・企業価値共創世界株ファンドBは、新興国を含む世界各国の企業から、高い自己資本利益率(ROE)を維持する企業の株式に投資を行うアクティブファンドである。また、投資対象銘柄の選定にあたっては、企業のESGに対する取り組みを評価する。
新規設定金額、設定本数の推移
最後に、8月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)