行動経済学とはどんな学問か簡単に説明!マーケティングとの関係も紹介

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行動経済学とは、経済学と心理学が融合した学問です。理解することで、マーケティングや投資などさまざまな場面に活用できます。

本記事では、行動経済学とは何かを説明した上で、具体的な7つの理論や活用される具体例などを紹介します。

行動経済学とは簡単にどういう学問?

行動経済学とは、心理学の知識やデータを用いて経済現象を分析する学問です。20世紀後半から、アメリカを中心に発展しました。

イスラエル出身で主に米国で活動する心理学者、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーが、行動経済学誕生のきっかけになった人物として知られています。行動経済学の基礎理論である「プロスペクト理論」を提唱したことにより、2002年にカーネマンはノーベル経済学賞を受賞しました(トヴェルスキーは1996年に死去)。

ここから、行動経済学と、経済学やマーケティングとの違いを解説します。

行動経済学と経済学の違い

経済学とは、日常生活を取り巻く経済や経済活動の仕組みを研究する学問です。基本的に、経済学では、人間が「合理的な行動」をとることを前提とします。

それに対し、行動経済学は「人間が合理的でない行動」をとることを前提とする点が主な違いです。行動経済学では感情・意思決定のクセなど、心理学の領域も研究対象になります。

そのため、行動経済学は経済学に心理学をあわせた学問ともいえるでしょう。

行動経済学とマーケティングの違い

マーケティングとは、顧客の欲求を満たすことで自社の商品やサービスが売れるような仕組みをつくることです。マーケティングには、SNSを活用したものやダイレクトメールを送るものなど、さまざまな種類があります。

行動経済学とマーケティングは異なるものというよりも、関係性の深いものです。行動経済学を理解してマーケティングに応用することで、自社の収益を向上できることもあります。

行動経済学を理解することのメリット

投資にも活用できる点が、行動経済学のメリットです。一般的に、とくに価格変動が激しい場面では人々は合理的に判断できません。行動経済学を理解することで、価格が急変する場面などにおいて、投資とどのように向き合うべきか考えるようになるでしょう。

また、すでに紹介したとおり、マーケティングに応用できる点も行動経済学を理解することのメリットです。

行動経済学の理論を7つ

行動経済学には、ビジネスや日常生活に役立つさまざまな理論が存在します。行動経済学の主な理論は、以下のとおりです。

1. プロスペクト理論
2. ハロー効果
3. サンクコスト効果
4. アンカリング効果
5. 現在志向バイアス
6. 現状維持バイアス
7. バンドワゴン効果

7つの理論について、具体例を交えつつ解説します。

1. プロスペクト理論

プロスペクト理論は、カーネマンとトヴェルスキーが1979年に提唱した理論です。

経済学では、基本的に意思決定者が期待効用を最大化させるように選択・行動すると仮定します(期待効用理論)。期待効用とは、不確実性を伴う意思決定をする際の結果に対する満足度の期待値です。

しかし、期待効用理論だけでは、説明できないことがあります。そこでプロスペクト理論では、人は損失を回避する傾向があり、そのときの状況によって判断が変わるとしている点がポイントです。

仮に、A「何もしなくても5千円取られる」か、B「コインの表が出たら1万1千円取られるも、裏であれば何も取られない」のどちらかを選択しなければならない状況があるとします。期待値を計算するとAは5千円、Bは5千5百円(1万1千円 × 50% + 0円 × 50%)のため、本来Aを選択する方が合理的です。

しかし、一般的に実際は損失を回避するためにBを選択する傾向にあるとされています。これがプロスペクト理論の具体例です。

2. ハロー効果

ハロー効果とは、人が何かを判断する際に、見た目や一部の特徴に左右されてしまうことを表した理論です。過去の経験や直感などに認識や判断が左右される、心理学の「認知バイアス」のひとつに分類されます。

「見た目がよいから仕事もできると考えてしまう」「学歴があるから信頼できると判断してしまう」などがハロー効果の具体例です。

3. サンクコスト効果

サンクコスト効果とは、今までに費やした費用や時間が無駄になることをもったいないと考え、さらに多くのコストをかけてしまうことを表した理論です。人がサンクコスト効果状態の心理に陥ると、非合理な判断を下す可能性があります。

たとえば「赤字続きでも、いつか成功して投資金額を回収したいと考えて不採算の新規事業から撤退できない」「ギャンブルに負け続けているのに、次こそ当たるはずと考えてやめられない」などが、サンクコスト効果の事例です。

4. アンカリング効果

アンカリング効果とは、最初に提示された情報や数字を基準にして、物事を判断してしまうことです。

たとえば、「1万円の服が今なら70%オフ!」と店頭で表示されていると仮定します。本来、その服に1万円の価値があるかはわかりません。それにもかかわらず、先に提示されている「1万円」を基準にすると、「70%オフで安いから買おう!」と判断してしまうでしょう。

5. 現在志向バイアス

現在志向バイアスとは、将来得られる大きな利益よりも、今すぐに手に入る利益を優先してしまうことです。A「今10万円受け取る」か、B「1年後に11万円受け取る」か尋ねられた際、目先のAを選択することが、現在志向バイアスの具体例として挙げられます。

2023年現在、定期預金の金利は1%にも満たないことが一般的です。低金利の状況下にもかかわらず、人は高金利(金利10%)のBを差し置いて目先のAを選択することがあります。

6. 現状維持バイアス

「現在受け取れる利益を優先したい」と考える現在志向バイアスに対し、現状維持バイアスは「現在所有している利益・メリットを失いたくない」と考えることです。

現在の職場に不満を抱えていても、転職して今の給与水準や福利厚生が失われないか不安に感じてその場で働き続けることが、現状維持バイアスの例として挙げられます。

なお、企業の「無料お試しキャンペーン」は、一度試した顧客が現状維持バイアスにより継続利用することを狙った手法です。

7. バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、多数の人の発言や態度に自分の行動が左右されてしまうことです。群衆行動や同調行動と表現することもあります。

「売上◯本突破」と表示された商品がよいものだろうと判断してしまうことが、バンドワゴン効果の具体例です。近年は、「フォロワー◯十万人」のインフルエンサーが薦めるサービスを利用することも、バンドワゴン効果の一例でしょう。

行動経済学が投資に関連する具体例とは

紹介した理論は、投資にも関連します。とくにサンクコスト効果やアンカリング効果は、投資との関係が深い理論です。

株式投資でサンクコスト効果に陥ると、「せっかく投資したお金を損したくない」という気持ちになりなかなか損切りできません。サンクコスト効果を避けるためには、あらかじめ自分の中で売買のルールを決めておくことが大切です。

また、過去に株価が◯円まで上昇したのち下落に転じた際、また◯円まで上昇するのではとアンカリング効果で期待してしまうこともあります。過去の株価は参考にはなりますが、必ずしも再度実現するとは限らないことを理解しておきましょう。

行動経済学を活用する際に注意すること

行動経済学をビジネスや投資に活用するにあたって、いくつか気をつけなければならないことがあります。主な注意点は、以下のとおりです。

・理論に頼りすぎない
・一時的だけでなく継続的に観察する

各注意点を解説します。

理論に頼りすぎない

行動経済学の理論に頼りすぎないようにしましょう。

行動経済学の理論は実生活にも役立つものですが、すべての人、状況に当てはまるとは限りません。行動経済学をあてはめてもビジネスや投資でうまくいかなかったら、自分で何が悪かったのか考えながら改善を繰り返していくことが大切です。

また、ビジネスで適用する場合に行動経済学を優先しすぎると、コンプライアンス上問題が生じることはあります。法律上、倫理上問題ない範囲で行動経済学の理論を用いることが重要です。

一時的だけでなく継続的に観察する

行動経済学を活用する際、一時的ではなく継続的に観察するようにしましょう。

行動経済学を使ったキャンペーンを実施した際や、行動経済学を応用して投資した際に、最初だけうまくいくことがあります。継続的に効果がないと意味がないため、結果を数値に残して「何がよかったのか」「なぜ効果が持続できなかったのか」などを分析することが大切です。

行動経済学をビジネスや投資に活かそう

行動経済学とは、心理学の知識やデータなどを用いて、経済現象を分析する学問です。行動経済学を理解して上手に活用すれば、マーケティング・投資などの分野で役立ちます。

ただし、行動経済学の理論が必ず実現するとは限らない点にも注意が必要です。行動経済学を正しく理解して、ビジネスや投資に活かしましょう。

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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