将来の年金に影響あり?
産休・育休を取ると年金は減る?会社員とフリーランスで違うのは本当か
提供元:Mocha(モカ)
老後にもらえる年金額は、現役時代に働いて納めた保険料の金額によって変わります。では、産休や育休で働かなかった時期がある場合、将来受け取る年金額は減ってしまうのでしょうか。会社員とフリーランスのそれぞれについて解説していきます。
産休を取ると将来の年金額はどうなるか
まず、産休を取ると年金は減るのか、会社員とフリーランスに分けて解説します。
●会社員が産休を取っても将来の年金額は変わらない
産休とは、出産への備えや出産後の身体を回復させるために仕事を休むことができる制度。労働基準法では「産前6週間と産後8週間」が産休期間として定められています。
この期間中は保険料の支払いが免除されており、会社が支払う分も本人が支払う分も全額支払ったものとして計算されます。よって、産休をとっても将来の年金額は減りません。
●フリーランスが産休を取っても将来の年金額は変わらない
フリーランスは会社に雇用されているわけではないため、そもそも産休制度はありません。ただ、出産前や出産後はなかなか普段のように働けず、保険料を支払うのが難しいこともあるでしょう。
そこで、2019年4月より、フリーランスなど国民年金の第1号被保険者を対象に、産前産後合わせて4か月間の保険料が免除される「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」が導入されています。この4か月間は、保険料を支払わなくても全額支払ったものとみなして計算され、将来の年金額は変わりません。
産前産後期間の免除制度ができる前から、何らかの理由で保険料を支払えない人の保険料を免除したり、支払いを猶予してもらったりする制度はあります。ただ、この期間中は保険料を半分しか支払っていないもの(全額免除の場合)として計算されてしまうため、老後にもらえる年金額が減っていたのです。産前産後期間の免除制度によって、老後の年金額を減らさずに済むようになりました。
なお、会社員の場合は会社を通して保険料免除の申請が行われますが、フリーランスの場合は自分で手続きしなければなりません。適用を受ける場合には、国民年金被保険者関係届書を記入し、役所の国民年金担当窓口に提出してください。
育休を取ると将来の年金額はどうなるか
続いて、育休を取ると年金が減るかどうか、会社員とフリーランスに分けて解説します。
●会社員は育休を取っても将来の年金額は減らない
育休は子どもを育てるための休業のこと。法律では、原則子どもが1歳になるまで取得でき、保育所に入れない場合は2歳まで延長できると定められています。その間の保険料は免除され、会社が支払う分も本人が支払う分も全額支払ったものとみなされるため、将来の年金額は変わりません。
また、法律上の育休だけでなく、会社が独自に定めた育休に該当するような制度がある場合も、子どもが3歳になるまでであれば、その制度を利用している期間中の保険料が免除されます。
●フリーランスが育休を取ると将来の年金額が減る、ただし今後制度が変わる可能性も
フリーランスには、産休だけでなく育休もありません。ですから、育児に専念するために仕事を休み、その間の保険料が支払えないとなると、将来の年金額は減ってしまいます。収入が少ない人のための免除制度もありますが、その制度が使えたとしても全額保険料を支払ったとはみなされないため、老後にもらえる年金は少なからず減ってしまいます。
ただ、今後新しい制度ができる可能性があります。2023年6月に開かれた厚生労働省の社会保障審議会では「自営業者やフリーランスへの支援として、育児期間中の保険料を免除する制度を作る」という議論がなされ、賛成の声が多く挙がりました。対象期間や対象者は検討中ですが、この制度が導入されると、将来の年金額が減ることを心配せず育児に専念できるようになるでしょう。
まとめ
産休・育休を取ると年金が減るかどうか、会社員とフリーランスに分けて解説してきました。会社員の場合、産休中も育休中も原則保険料が免除されるため、将来の年金額は減りません。
一方、フリーランスの場合、産休中は保険料が免除されます。しかし、育児期間中の保険料を免除する制度は現在のところないため、保険料を支払えないと将来の年金が減ってしまいます。ただ、今後制度が変わり、フリーランスでも育児中の保険料が免除されるようになる可能性もあるため、国の動向に注目しておきましょう。
[執筆:ファイナンシャルプランナー 木下七夏]
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