就職に役立つのはどれ? 独立・開業に必要な資格は?

学生のうちから知っておきたい「お金にまつわる資格」9選

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世の中にはさまざまな資格があり、就職活動で強みになるものもあれば、ビジネスの現場に出て役立つものもある。そのため、学生のうちに何かしらの資格を取っておこうかな、と考える人は多いだろう。

しかし、多種多様な資格があふれているため、何を取ればいいか迷ってしまって決めきれず、結局取得できなかった…ということにもなりかねない。そこで、キャリアコンサルタントの資格を持つファイナンシャルプランナー・氏家祥美さんに、お金にまつわる資格について教えてもらった。

資格を選ぶポイントは「種類」と「目的」

「資格を選ぶ際のポイントはいくつかあります。そのひとつが、資格の種類です。『国家資格』『公的資格』『民間資格』の3つに分けられます」(氏家さん・以下同)

●国家資格
国が認めた資格で、資格の信頼度が高いといえる。公認会計士や税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士など、業務独占資格と呼ばれるものも国家資格の一部。業務独占資格を取得することで、特定の業務が行えるようになる。

●公的資格
文部科学省や経済産業省などの大臣や官庁が認定する資格で、民間団体や公益法人が認定試験を実施する。簿記検定や証券外務員などが、公的資格にあたる。

●民間資格
民間の企業や団体が試験を行い、認定する資格のこと。国家資格または公的資格に該当しない資格はすべて民間資格となり、多様なものが揃っている。金融関係の資格だと、年金アドバイザー、相続アドバイザーなどが民間資格にあたる。

「資格は、その分野への興味や勉強した事実の証明となるため、時間やお金に余裕があれば、積極的に取りたいところです。ただ、就職の役に立てたい、将来的に独立・開業したいなどの目的によって、取っておいたほうがいい資格は変わってきます」

就職活動で強みになり得る「簿記」「FP」

就職に役立つ資格として、氏家さんが挙げてくれたのが「簿記」と「FP(ファイナンシャルプランナー)」。

●簿記
企業のお金の出入りを記録するスキルを認定する資格。簿記の認定試験はいくつかの種類があるが、もっとも規模が大きいのは、日本商工会議所が認定試験を実施している日商簿記。1級、2級、3級、初級、原価計算初級の5つのレベルに分けられている。

「どのような企業でも経理の仕事はありますし、営業職でも会社のお金の動きを理解していることは強みになります。企業の経済活動に関する知識の証明となる簿記の資格はどの会社でも活かせるため、業種を問わず、就職に役立つといえるでしょう」

●FP(ファイナンシャルプランナー)
税金、保険、年金などに関する知識を持ち、お金に関する相談やライフプランの設計などを担うお金の専門家の資格。日本FP協会が認定しているAFP資格、CFP(R)資格は民間資格で、2年ごとの継続教育が義務付けられている。1級から3級に分けられているファイナンシャル・プランニング技能士は、国家資格。FPに関しては、民間資格も国家資格も学習のレベルは同等とみなされる。

「簿記よりもお金の色が濃くなるのがFPの資格です。資格を取得するには、『ライフプランニングと資金計画』『金融資産運用』『タックスプランニング』『リスク管理』『不動産』『相続・事業承継』という6つの科目を勉強する必要があります。銀行、証券会社、保険会社などの金融機関や不動産会社を目指す人は、FPの資格を取っておくと強みになるといえるでしょう」

簿記もFPも、1級や2級、AFP、CFP(R)など、レベルごとに分けられているが、どのくらいのレベルであれば就職時にアピールできるのだろうか。

「簿記もFPも、まずは3級を目指しましょう。3級が就職時の強みになるかというと、そうとは言い切れませんが、入門編といえる3級の勉強に苦手意識を持たないようであれば、簿記やFPに向いているといえます。その場合は、2級の取得を目指しましょう。2級は、就職活動でアピールできるレベルといえます。FPに関しては、技能士2級とAFPが同等のレベルです」

独立・開業に必須となる国家資格

独立を目指すにあたって必要になる資格は、業務独占資格と呼ばれるもの。資格を所有していないと、業務ができないからだ。

「業務独占資格のほとんどは知識レベルが高く、実務経験が必要になるものが多いため、学生のうちに取得するのは困難といえます。実際に取得している人は、就職してから経理や総務、人事などの仕事を通じて資格に興味を持ち、勉強したケースが多いようです。学生の時点で業務独占資格に興味がある場合は、その資格を目指しやすい業界や業種に就職し、働きながら勉強して取得するという道筋が現実的でしょう」

お金や経済にまつわる業務独占資格の例として、次のものが挙げられる。

●公認会計士
会計監査の専門職で、会計に携わる資格の最高峰。資格を取得することで、財務諸表監査が行える。公認会計士試験(短答式試験、論文式試験)の合格、2年以上の実務経験、原則3年の実務補習後の修了考査合格を経て、公認会計士の資格が与えられる。

「公認会計士は監査業務が許されるので、資格を取った後、監査法人に就職する人がほとんどです。そこで経験を積んでから、会計士として独立する道や、企業の経理の支援やコンサルティングなどを行う道が考えられます。公認会計士は、税法に関する研修を受ければ税理士の資格も取得できるので、税務業務も行えます」

●税理士
税金の専門職で、納税のアドバイスや税務書類の代理作成など、税金に関する業務は税理士だけに認められた業務となっている。税理士試験は11科目中5科目の合格を目指す科目選択性で、1科目ずつ受験できる。また、通算2年以上の実務経験も必要。

●社会保険労務士(社労士)
人事労務の専門職で、社会保険や労働保険の手続き、労務管理の指導、書類作成の代行など、人事労務管理業務は社会保険労務士だけに認められた業務。資格取得には、社会保険労務士試験の合格、2年以上の実務経験が必要となる。

●宅地建物取引士(宅建士)
不動産取引の専門職で、不動産取引における重要事項の説明や契約書への記名、押印といった業務は、宅地建物取引士だけに認められている。資格取得には、宅地建物取引士試験の合格、2年以上の実務経験が必要となる。

「不動産の取引に関する業務を行う拠点を設置する際には、一定数以上の宅地建物取引士の設置が義務付けられています。例えば、従業員5名以下であれば、宅地建物取引士1名の設置が必要です。そのため、不動産業での独立・開業を考えている場合は、宅地建物取引士の取得が必須となります」

●中小企業診断士
中小企業の経営に対して診断・助言を行う専門職。経営に関する国家資格で、業務独占資格ではないが、企業の経済活動に限らず、人材育成や顧客管理、知的財産の法律など、企業の経営に関する幅広い知識が必要となる。1次試験、2次試験の合格後、15日以上の実務補習または実務従事によって、資格取得となる。

「中小企業診断士は経済活動を見るだけでなく、企業の事業課題を洗い出したり、ビジネス戦略を立てたりする役割も担います。そのため、企業内で活躍するだけでなく、経営コンサルタントとして独立する際に強みとなる資格といえるでしょう」

特定の業種で必要になる民間資格

紹介してきた資格以外に、金融業界で働くにあたって、持っておくことで業務の幅が広がるであろう資格も教えてもらった。

●年金アドバイザー・相続アドバイザー
銀行業務検定協会が認定している民間資格。年金アドバイザーは公的年金に関する知識や年金相談の実践応用力、相続アドバイザーは相続に関する手続きや相続税の知識などが必要となる。検定試験の合格で、資格取得となる。

「銀行に勤めている方が取得する資格というイメージです。FPなどの資格に加えて、年金アドバイザーや相続アドバイザーの資格を持っていると、相談に来たお客さんに『年金に詳しい人なんだ』『相続の相談をしてみよう』と思ってもらえるでしょう」

●証券外務員
日本証券業協会が認定している民間資格で、金融商品の販売や勧誘を行う際に必須となる。一種外務員資格と二種外務員資格の2種類があり、どちらも外務員資格試験の合格で取得可能。実務経験がなくても取得できるため、学生でも受験しやすい。

「証券を扱う際に必須となる資格なので、証券会社や銀行に勤めたいと考えている人は、証券外務員の勉強をしてみるのもいいでしょう」

お金にまつわるものに絞っても、さまざまな分野やレベルのものが存在する資格。自分の将来を思い描くことで、必要になる資格が見えてくるだろう。
(取材・文/有竹亮介(verb))

お話を伺った方
氏家 祥美
ファイナンシャルプランナー、セカンドキャリアアドバイザー。ハートマネー代表。共働き家族やリタイアメント世代向けに幸福度の高い家計作りを支援するほか、教科書執筆など中立な立場での金融リテラシー教育に力をいれる。Zoomを使ったオンライン家計相談が好評。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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