有効求人倍率とは厚生労働省が発表する指標!計算をわかりやすく解説

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有効求人倍率とは、有効求職者数に対する有効求人数の割合を指します。毎月、厚生労働省が取りまとめて公表する指標です。

本記事では、有効求人倍率とは何かをわかりやすく解説した上で、失業率との関係性や現状の数値についても説明します。

有効求人倍率とは

有効求人倍率とは、有効求職者に対する有効求人の割合のことです。毎月厚生労働省が公共職業安定所(ハローワーク)における求人・求職・就職の状況をとりまとめ、「一般職業紹介状況」の中で数値を発表しています。

また、有効求人倍率は雇用動向を示しているため、さまざまな場面で用いられる指標です。ここから、計算式や有効求人倍率が高いことの意味と低いことの意味を説明します。

有効求人倍率の計算式

有効求人倍率の計算式は、以下のとおりです。

・有効求人倍率(倍) = 月間有効求人数/月間有効求職者数

仮に月間有効求人数が250万人で、月間有効求職者数が200万人の場合、有効求人倍率は1.25倍(250万人 ÷ 200万人)です。また、月間有効求人数が200万人で月間有効求職者数が250万人の場合、有効求人倍率は0.8倍(200万人 ÷ 250万人)と算出できます。

なお、有効求人倍率の数値を見れば、(月間有効)求職者に対してどれだけの(月間有効)求人があるかがわかります。有効求人倍率が1.25倍であれば、100人の求職者に対して125件の求人、0.8倍であれば100人の求職者に対して80件の求人があるということです。

有効求人倍率が高い・低いことの意味

一般的に、有効求人倍率が高ければ企業が積極的に雇用を進めており、求職者は職にあぶれにくいです。それに対して有効求人倍率が低ければ、企業が雇用する余裕がないため、求職者が職につきにくい傾向にあります。

有効求人倍率を分析する際の目安になる数字が「1」です。一般的に、1を超えていれば、求職者に有利(求人者に不利)な「売り手市場」、1を下回っていれば求職者に不利(求人者に有利)な「買い手市場」といえます。

有効求人倍率の関連用語

有効求人倍率には、以下のようにさまざまな関連用語があります。

・月間有効求人数・月間有効求職者数
・新規求人数・新規求職申込件数
・新規求人倍率

それぞれの概要を確認していきましょう。

月間有効求人数・月間有効求職者数

月間有効求人数とは、前月から繰り越された「有効求人数」に、当月の「新規求人数」を加えた数値です。それに対して月間有効求職者数は、前月から繰越された有効求職者数に当月の「新規求職申込件数」を加えた数値を指します。

有効求人数は、前月末日現在で求人票の有効期限が翌月以降にまたがった求人の数です。有効求職者数は、前月末日現在で求職票の有効期限が翌月以降にまたがった、就職未決定の求職者の数を指します。

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和5年4月分)」で2023年4月の月間有効求人数は2,490,496人(前年同月比2.8%増)、月間有効求職者数は2,000,988人(前年同月比3.4%減)でした。

新規求人数・新規求職申込件数

新規求人数とは、新たにハローワークで当月受け付けた求人の数です。一方、新規求職申込件数は、新たにハローワークで当月受け付けた求職の申込数を指します。

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和5年4月分)」によると、2023年4月の新規求人数は841,369人(前年同月比0.9%減)、新規求職申込件数は501,142件(前年同月比3.2%減)でした。

新規求人倍率

新規求人倍率は、有効求人倍率と同様に求職者に対する求人の割合のことです。以下の数式で計算します。

・新規求人倍率(倍) = 新規求人数/新規求職者数

新規求人倍率ではその月に受け付けた数字のみを用いるため、有効求人倍率を使う場合よりも直近の雇用動向を把握できます。

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和5年4月分)」によると、2023年4月の新規求人倍率は1.68倍(前年同月比0.04ポイント増)でした。

有効求人倍率と失業率の関係

有効求人倍率は、失業率との関係が深い指標としても知られています。失業率(完全失業率)の概要を説明してから、関係性について説明します。

失業率(完全失業率)とは

失業率(完全失業率)とは、15歳以上で働く意欲のある人のうち、求職活動をしても仕事に就けない人のことです。以下の式を使って計算できます。

・完全失業率(%) = 完全失業者数/労働力人口 × 100

たとえば、労働力人口が7,000万人で完全失業者数が200万人の場合、完全失業率は約2.9%と計算できます。

労働力人口とは、15歳以上人口から非労働力人口を引いた数です。非労働力人口とは、就業意思のない学生や専業主婦(夫)、高齢者などの数を指します。

また、完全失業者とは、労働力人口のうち、求職活動を行っても仕事に就けない人のことです。失業率が高ければ、仕事を探している失業者が多いことを意味します。

景気・有効求人倍率・失業率は連動しやすい

一般的に、景気・有効求人倍率・失業率は連動しやすいです。景気が回復すると、有効求人倍率が高くなり、完全失業率が低下する傾向にあります。その反対に、景気が後退すると一般的に有効求人倍率が低くなり、完全失業率が上昇する傾向にあるでしょう。

たとえば、2019年平均で有効求人倍率は1.60倍、完全失業率は2.4%でした。その後2020年に感染症の影響で景気が後退すると、有効求人倍率が低下し(1.18倍)、完全失業率が上昇(2.8%)しました。

有効求人倍率の注意点

有効求人倍率を確認する際は、以下の点に注意が必要です。

・全求人を網羅しているわけではない
・正規・非正規の判断ができない

各注意点について、詳しく解説します。

全求人を網羅しているわけではない

雇用動向を判断する際は、有効求人倍率が全求人を網羅しているわけではない点に注意が必要です。有効求人倍率を算出する際に用いる有効求人数と有効求職者数は、全国のハローワークでカウントした数を計算しています。

ハローワーク(公共職業安定所)とは、全国500か所以上に所在する国の総合的雇用サービス機関のことです。そのため、民間企業の求人サイトなどを利用して職を求める転職希望者や新卒者の数はカウントできません。

正規・非正規の判断ができない

有効求人倍率では正規・非正規の区別がされておらず、まとめてカウントされている点にも注意が必要です。たとえ有効求人倍率が増加していたとしても、一時的な需要で非正規雇用が増えたことが要因であれば、景気回復と連動しない可能性があるでしょう。

なお、厚生労働省が発表しているデータの中には、「正社員」の有効求人倍率はあります。しかし、計算で使う「パートタイムを除く常用の月間有効求職者数」には派遣労働者や契約社員を希望する者も含まれるため、厳密に正社員のデータを示したものとはいえないでしょう。

有効求人倍率や完全失業率の現状

有効求人倍率の数値は厚生労働省の「一般職業紹介状況」、完全失業率の数値は総務省の「労働力調査」で把握できます。ここから、有効求人倍率や完全失業率の現状を確認していきましょう。

有効求人倍率の現状

「一般職業紹介状況(令和5年4月分)」によると、2023年4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.32倍で、前月と同水準でした。前年同月と比べると、有効求人倍率(季節調整値)は0.07ポイント増加しています。

2023年4月の職業別有効求人倍率(含パート)を確認すると、事務従事者は0.43倍(前年同月比0.04ポイント増)、サービス職業従事者は2.82倍(前年同月比0.26ポイント増)でした。また、建設・採掘従事者は5.02倍で前年同月比0.38ポイント増加しています。

なお、季節調整値とは社会習慣や制度などによる変動の癖(季節的要因)を除去する方法です。

完全失業率の現状

「労働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)4月分結果」によると、2022年平均完全失業率は2.6%(前年比0.2%減)でした。また、2023年4月の完全失業率(季節調整値)も2.6%で、前月に比べて0.2%低下しています。

なお、産業別の失業率は発表されていませんが、「労働力調査(基本集計)」によると農業・林業の就業者数は前年同月比で6万人減少、建設業は10万人減少、製造業は38万人増加しているとのことです。

有効求人倍率とは有効求人の割合

有効求人倍率とは、厚生労働省が毎月取りまとめて発表する、有効求職者に対する有効求人の割合です。有効求人倍率が高ければ求職者が職にあぶれにくく、低ければ求職者が職につきにくい傾向にあります。

ただし、有効求人倍率を分析に活用する際は、全求人を網羅しているわけではない点に注意が必要です。有効求人倍率の特徴を理解した上で、完全失業率とともに最新の数値を確認してみましょう。

参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年4月分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計):集計結果(用語の解説)」
参考:知るぽると「完全失業率とは」
参考:厚生労働省「令和4年版 労働経済の分析 -労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-(HTML版)」
参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)4月分結果」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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