駐車場を事前予約することで「渋滞」が緩和される!?

駐車場予約アプリ「akippa」が目指すのは“困りごと”の解消

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車で出かけたとき、駐車場が見つからずに目的地周辺をグルグル回り、想定外に時間がかかってしまった…という経験をしたことがある人は多いだろう。そのような状況にならないため、事前に駐車場を予約できるアプリが「akippa(あきっぱ)」だ。

アプリに掲載されている駐車場から車を停めたいところを選び、利用する日付と時間帯を選択すれば予約完了。料金は事前決済となっているため、当日の支払いは不要で、入出庫もスムーズというサービスだ。

ありそうでなかった駐車場予約アプリ「akippa」は、どのように誕生したのだろうか。開発の経緯と今後の展開について、akippa取締役の小林寛之さんに伺った。

「akippa」誕生のきっかけは、社員の困りごと


「当社はもともと携帯回線の営業代理店や求人広告を掲載するウェブ媒体の運営などを行う営業会社でしたが、『“なくてはならぬ”をつくる』というミッションを掲げ、新たな事業に取り組むことになりました。そこでメンバーに日々の困りごとを200個出してもらったところ、『駐車場は現地に行って初めて満車とわかるから困る』という声が上がったんです」(小林さん・以下同)

駐車場に関する困りごとには、社内から共感が集まり、どのようなサービスで解消できるか考えていくことになった。

「当社代表の金谷もスポーツ観戦をする際に、駐車場が見つからずに困った経験があったそうです。そのときに使われていない空きスペースを見かけて、あの場所を予約して駐車できたら便利だと思ったことが、『akippa』のはじまりです」

メンバーの困りごとと金谷氏の経験から、アプリ上で駐車場を予約できるサービスが生まれたのだ。「akippa」には、法人が運営している駐車場やコインパーキングだけでなく、個人宅の駐車スペースや自治体が所有している空きスペースなども掲載されている。

「私たちが大手法人や自治体に空いているスペースの貸し出しを交渉するだけでなく、パートナーと呼んでいる代理店の方々にも個人宅を訪問してもらうといった方法で、地道に駐車場を開拓しています。個人宅でも、高齢者の方が免許を返納し、自宅の駐車スペースを使わなくなったため、駐車場として貸し出すといったケースが増えてきているのです。『akippa』のサービス開始から9年以上が経ち、現在貸し出している駐車場は全国に常時3万5000カ所以上あります」

駐車場の多くは首都圏や大阪圏などの都市部に集中しているが、地方でもドームやスタジアムの周辺など、一時的に駐車場の需要が高まるエリアでの開拓には積極的に取り組んでいるとのこと。

「『akippa』の特徴は、駐車場を貸し出すオーナーさんに費用面での負担がかからないところです。コインパーキングをつくろうと思うと、ゲートや精算機の設置費用、集客のための広告費などがかかりますが、『akippa』を使えばゲートも精算機も広告もいりません。また、収益性に関する審査もしていません。オーナーさんの本人確認はしっかり行いますが、収益性のあるエリアかどうかといった点は審査基準にしていないのです」

収益性が見込めないエリアの駐車場を掲載しても、『akippa』にとってはプラスにならないのではないだろうか。

「収益性も大事ですが、まずは駐車場の数と選択肢を充実させることが先決と考えています。『akippa』では、コインパーキングがつくれないようなエリアの空きスペースを駐車場として稼働できることから、『学校の近くに駐車場があったおかげで、足腰の悪いおばあちゃんが孫の運動会に行けた』『子どもの大学入試の送り迎えに活用できた』といった声につながっています。ドライバーさんのライフステージや車に乗る目的に合わせて駐車場を選べるように、営業コストをかけても駐車場の掲載数を増やしていきたいと思っています」

ユーザーが「akippa」を利用する理由


「akippa」の会員数は累計340万人(2023年9月末時点)で、年々増えている。ユーザーの「akippa」の使い方は、大きく2つのパターンに分かれているようだ。

「通勤などで頻度高く、コスパの良い駐車場を使う人と、コンサートやスポーツ観戦、旅行などのイベントの際に使う人に大きく分かれる印象です。もちろん、通勤時にもイベント時にも使ってくださる方もいます」

通勤時に利用するとなると、料金がかさんでしまうように感じるが、コロナ禍によって働き方、車の乗り方が変化したため、「akippa」の利用が増えているという。

「毎日通勤となると電車やバスを利用するほうが安いですが、コロナ禍の影響で通勤の頻度が週1回や月1回になった人もいます。また、車のほうが感染リスクも低いため、通勤でも車に乗るようになり、駐車場のニーズが高まっているのだと考えられます。『akippa』では、周辺の時間貸し駐車場の相場よりも安く駐車場を提供している場所もあるので、お得に感じていただきやすいという面もあると思います」

「akippa」は駐車場料金が事前決済となっているため、「思ったよりもお金がかかってしまった」という事態を防げるところも魅力だ。さらに、現地に行く前に駐車場の広さや目印などがわかるよう、写真を掲載するなど、安心して利用できる工夫が施されている。

「長年の運営のなかで試行錯誤しながら、ユーザーさんにとって必要な情報や写真の撮り方などのノウハウが磨かれてきています。例えば、掲載チームはオーナーさんから送られてきた写真に対して、『この辺りが見えづらいので、このような文章を付け足してみましょう』とアドバイスを行うなど、より多くの人に安心して駐車場を使っていただけるような情報提供を心掛けています」

年々会員数が増えている「akippa」だが、「駐車場の事前予約制は、まだまだこれからのサービスだと感じている」と、小林さんは話す。

「駐車場予約というカテゴリ自体をご存じない方がまだまだいると思うので、サービスをアップデートさせながら、利用したことがない方にアプローチしていきたいと考えています。日本ではシェアリングサービスに不安を抱く人が多いと思いますが、カーシェアやライドシェア(相乗り)と比べると、駐車場のシェアはハードルが低いのではないかと思っています。私たちも安心感を抱いていただけるよう、24時間365日ヘルプセンターを開く、シェアリングエコノミー認証マークを取得するといった取り組みを進めています」

自治体や企業との連携で世の中の“困りごと”も解消


「akippa」のユニークなところは、駐車場予約という新たなサービスをきっかけに、さまざまな会社や団体と提携していることだ。

「駐車場予約アプリはコインパーキングなどの時間貸し駐車場とユーザーを奪い合うと思われがちですが、実際は真逆で、時間貸し駐車場の埋まりにくい区画を『akippa』で貸し出すことができるため、協力関係にあります。コインパーキングは走りながら空所を探すオンデマンドのサービスである一方、『akippa』は目的に合わせて予約するサービスなので、若干用途が異なるのです。だから奪い合わないといえますし、コインパーキングの集客を『akippa』で補ったり、かつて利用したコインパーキングを『akippa』で予約してもらったりすることもできます」

より多くの駐車場を利用できるようにするため、akippaは暗証番号の入力で無人ゲート式駐車場のゲートを開けられるデバイスをアート社と共同で開発した。このデバイスをゲートの精算機に付けることで、「akippa」で予約した際に発行される暗証番号で入出庫できるようになっている。

Akippaとアート社が共同開発した無人ゲート式駐車場のゲートに取り付けられるデバイス
akippaとアート社が共同開発した無人ゲート式駐車場のゲートに取り付けられるデバイス

さらに、業界を超えて、地方自治体やプロスポーツチームとの提携も進めている。その一例として、2023年8月に開催された第75回諏訪湖祭湖上花火大会がある。実行委員が用意した公式駐車場を、すべて「akippa」での予約制とし、さらに周辺の駐車場を開拓したのだ。

「以前は、多くの方が駐車場を確保するために朝早くから来場し、その車をさばくために市の職員の方々も早くから駆り出されていたそうです。しかし、予約制にしたことで、これらの問題が解消し、来場者の皆さんも市の職員の方々も朝早くから活動しなくて良くなったのです。渋滞やうろつき運転の解消にもつながりました」

スポーツの試合の際にも、会場周辺の駐車場を提供している「akippa」は、プロスポーツチームとも提携。全国30以上のプロスポーツチームと連携して、会場周辺の駐車場開拓に取り組んでいる。

「開拓していただいた駐車場が稼働した際の料金の一部はチームとシェアしています。この仕組みによって、チームのファンの方々も駐車場を使う理由ができますし、もちろんスペースを貸してくださるオーナーさんにも料金が入ります。渋滞緩和や街の活性化にもつながる取り組みと考えています」

簡単かつスムーズに駐車場を借りられることによって、渋滞が解消されたり、自治体や関係企業の業務効率化につながったりと、プラスの影響を生み出している「akippa」。今後、車に乗る際の必須アプリとなっていくことだろう。

(取材・文/有竹亮介(verb) 撮影/鈴木友樹)

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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