ミクロ経済学とは何かわかりやすく説明!何に役立つかも解説
ミクロ経済学とは、家計や企業の行動、意思決定について分析する学問です。学ぶことで、市場経済をより深く理解できるようになります。
本記事では、ミクロ経済学とは何か説明した上で、ポイントとなるキーワードについてもわかりやすく解説します。
そもそも経済学とはどんな学問?
経済学とは、理論的に、お金やモノのやり取りの流れを説明しようとする学問です。さまざまなデータを扱ったり、数理的にモデル化したりするため、経済学を理解するためには統計や関数など数学に関する知識が欠かせません。
なお、大学の経済学部で学ぶ教科は、ミクロ経済学・マクロ経済学・理論経済学・応用経済学・計量経済学・経済学史・経済政策論・統計学など、さまざまです。その中でも、ミクロ経済学とマクロ経済学は経済学のコアとなる科目とされています。
ミクロ経済学とは?
ミクロ経済学とは、各自の行動や意思決定がどのようになされるかを分析する学問です。ミクロ経済学では、家計(個人)や企業を最小単位として、商品の価格や取引量に与える影響を考えます。狭い視点で経済を分析することが、「ミクロ」と呼ぶ由来です。
ここから、ミクロ経済学の起源や、マクロ経済学との違いについて解説します。
ミクロ経済学の起源
一般的に、ミクロ経済学の起源は古典派経済学に由来するとされています。古典派経済学は、主に18世紀から19世紀前半にかけて活躍した経済学者による、「基本的に自由な市場の方がうまくいく」という考え方です。古典派経済学の考え方は、1870年代以降に新古典派経済学へと受け継がれました。
古典派経済学を代表する人物が、アダム・スミスです。アダム・スミスの具体的な考えについては、以下の記事を参考にしてください。
「アダム・スミスとはどんな人物?経済学との関係や経済思想を解説」
ミクロ経済学とマクロ経済学の違い
ミクロ経済学と並び、経済学の中心となる学問がマクロ経済学です。ミクロ経済学では「狭い(ミクロ)」視点で分析するのに対し、マクロ経済学では「巨大な(マクロ)」視点で分析する点が主な違いです。
マクロ経済学では、政府・企業・家計を一括りにした経済社会全体の動きを考えます。そのため、GDP(国内総生産)のように、一国レベルで集計した経済の状態を診断するのはマクロ経済学の役割です。
ミクロ経済学を木にたとえると、マクロ経済学は森といえるでしょう。経済学を正しく理解するためには、ミクロ経済学の考え方もマクロ経済学の考え方も両方大切です。
ミクロ経済学は何に役立つ?
ミクロ経済学を理解することで、商品を買ってもらうために適当な金額はいくらかなどを検討するのに役立ちます。なぜなら、ミクロ経済学で扱う需要曲線・供給曲線によって、家計の財やサービスへの需要と、企業側の供給の関係性を理解できるようになるためです。
ミクロ経済学では、買い手・売り手の間で希望する値段が異なっていても、最終的に多くの人が満足する部分の価格(需要曲線と供給曲線が交わる部分)が市場価格になると考えます。
消費者行動理論と生産者行動理論がポイント
ミクロ経済学には、消費者行動理論と生産者行動理論の理解が欠かせません。消費者行動理論と生産者行動理論の内容を紹介します。
消費者行動理論とは?
消費者行動理論とは、家計(消費者)は財やサービスを購入する「効用最大化」を目的に行動するという考え方です。効用最大化とは、財・サービスの消費に対する満足度を最大限に高めることを指します。
消費者は、購入する財やサービスの量が増えるほど、効用も高まります。ただし、消費量を1単位増加させたときの追加的効用(限界効用)は、量が増えるにつれて減少する点に注意が必要です(限界効用逓減の法則)。
消費者行動理論は、需要曲線にも関係します。需要曲線とは、横軸を商品量、縦軸を価格で示したグラフです。価格が下がれば買いたい人が増える(買われる商品量が増える)のに対し、価格が上がるにつれて買いたい人が減る(買われる商品量が減る)ため、需要曲線のグラフは右下がりになります。
生産者行動理論とは?
生産者行動理論とは、企業は財やサービスを提供(供給)するにあたって、利潤の最大化を目的とするという考え方です。利潤は総収入 – 総費用で計算するため、企業は費用の最小化を目的とするとも考えられます。
生産者行動理論から導いたグラフが、供給曲線です。供給曲線も、横軸を商品量、縦軸を価格で示します。
価格が下がれば売りたいと考える人が減る(売られる商品が減る)ことに対し、価格が上がれば売りたいと考える人が増える(売られる商品が増える)ため、供給曲線のグラフは右上がりです。
ミクロ経済学を理解する上で大切な用語
消費者行動理論・生産者行動理論以外に、ミクロ経済学を理解する上で大切な用語が、以下のとおりです。
・市場均衡
・市場の失敗
それぞれの概要を解説します。
市場均衡
市場均衡とは、財やサービスの価格や数量が、消費者の行動(需要量)と生産者の行動(供給量)が合致するように定まることです。市場均衡が取れている部分を均衡点と呼び、そのときの価格を均衡価格と呼びます。
市場均衡を判断する際に使うのが、需要曲線と供給曲線です。右下がりの需要曲線と左下りの供給曲線を引き、交わった部分が市場均衡となります。
市場価格が高すぎると買い手が現れず、安すぎると売り手が現れません。そこで、最終的に売り手と買い手も一番多くの人が満足できる部分(市場均衡)に落ち着きます。
たとえば、需要曲線と供給曲線の交わった部分の価格が「1,000円」であれば、均衡価格は1,000円です。
なお、自由競争の結果到達した均衡点では、理論上モノやサービスの不足・ムダが生じません(資源の効率的配分)。
市場の失敗
市場の失敗とは、需要と供給のバランスが崩れることで、資源が最適に配分される「市場メカニズム」や、「価格の自動調節機能」が十分に働かない状態のことです。
市場の失敗が起きる原因のひとつとして、「独占」や「不完全競争」が挙げられます。一部の企業が市場を独占すると適正な競争が働かず、価格がつり上がってしまうでしょう。
そのほか、売り手と買い手の間で商品・サービスに関する知識に差が生じる「情報の非対称性」、また公園や道路などの「公共財」なども、需要があるにも関わらずうまく供給ができないとして、市場の失敗を引き起こす例に挙げられます。
ミクロ経済学との関係が深い分野
ミクロ経済学の知識は、そのほかの経済学を学ぶ際にも役立ちます。とくに、ミクロ経済学との関係が深い分野は、以下のとおりです。
・国際経済学
・労働経済学
・公共経済学
各経済学の内容を簡単に紹介します。
国際経済学
国際経済学とは、多国間にまたがる経済現象を主に分析する経済学です。一般的に、国際経済学には国際貿易論が含まれます。
国際貿易論(学)は、国際金融・貿易システム論・消費者行動論など、国際貿易の理論や実践について学ぶものです。ミクロ経済学で需要曲線や供給曲線を通じて消費者と企業の行動を分析するように、国際貿易論では輸入関税をかけることが自国の消費者や企業にどのような影響を与えるかなどを分析します。
労働経済学
労働経済学とは、労働市場の仕組みを分析する経済学です。労働経済学を学ぶにあたって、ミクロ経済学やマクロ経済学の知識が求められます。
たとえば、労働経済学で労働市場の均衡を出すにあたって、(労働)需要曲線や(労働)供給曲線を使用する点がミクロ経済学との共通点です。労働需要曲線と労働供給曲線が重なる部分を見れば、均衡点(均衡実質賃金と均衡雇用量)がわかります。
公共経済学
公共経済学とは、医療・福祉政策・公共事業・補助金など、政府の活動を主な分析対象とする経済学です。財政学では主に政府の活動の収入面を分析するのに対し、公共経済学では主に政府の支出面を分析します。
公共経済学では、市場の失敗に対してどのような政策を打ち出すべきかも分析の対象です。そのため、公共経済学にはミクロ経済学の知識が欠かせません。
ミクロ経済学は経済を理解するために必要な学問
ミクロ経済学とは、家計や企業の行動、意思決定について分析する学問です。「巨大な(マクロ)」視点で一国の経済全体を分析するマクロ経済学と異なり、ミクロ経済学は家計・企業などをより「狭い(ミクロ)」視点で経済を分析します。
ミクロ経済学のポイントのひとつが、市場均衡です。ミクロ経済学では、需要曲線と供給曲線が交わった部分で、取引量や価格の均衡が取れると考えます。
ミクロ経済学を学べば、家計と企業の関係を理解しやすくなる点がメリットです。また、国際経済学や労働経済学などを新たに学ぶ上でも、ミクロ経済学の基礎知識が欠かせません。
今までミクロ経済学について学んだことがない方は、まず需要曲線と供給曲線の理解から始めるとよいでしょう。
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ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。