ユニークな福利厚生や魅力的な制度を導入している企業のご担当者様にインタビュー

サッポロビールの人財育成ビジョン「自分のキャリアは自分で切り拓く」を実現させる、社内インターン制度、社内副業制度の魅力に迫る!

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少子高齢化や働き方改革が進む中、多くの企業にとって優秀な人材を安定的に確保していくことは大きな課題となっているのではないでしょうか。

そんな中、社員の満足度を上げ、求職者にとっても魅力的な企業として選ばれるために、職場環境や福利厚生等の制度を充実させることを重要ミッションの一つとして捉えている企業が多いようです。

そこで、福利厚生等の社内制度の充実といった切り口からユニークな取り組みをしている企業をご紹介!新しい働き方改革に合わせた魅力的な制度導入の背景や現在の制度までの経緯、裏話に至るまで、ご担当者様にセキララに語っていただきました。

今回は、「サッポロ生ビール黒ラベル」「ヱビスビール」といった日本を代表するビールでお馴染みの総合酒類メーカー大手「サッポロビール株式会社」のユニークな制度をご紹介します。

聞き手・執筆:ファイナンシャルプランナー 高山 一恵

――では、本日はよろしくお願いします。早速ですが、御社のユニークな取り組みに「社内インターン制度」、「社内副業制度」があると伺ったのですが、導入の背景を教えていただけますでしょうか?

まず、サッポロビールの人財育成のビジョンとして「自分のキャリアは自分で切り拓く」を掲げています。北海道開拓時に設立した「開拓使麦酒醸造所」でビール造りを始めたことが当社の起源となっていることから、当社には開拓者精神が受け継がれています。

通常、キャリアは、会社側の人事異動により形成されていくと思いますが、これからお話します当社の主な課題2点を解決するために、人事異動以外の方法でのキャリア形成もできないかと考えたところが導入の背景としてありました。

1点目は、若年層に多いのですが、キャリアの悩みを抱いている社員が多いということです。

当社は、全国転勤型が基本の会社ですので、同期に入社した社員はさまざまなエリアに配属になります。その「配属先によって培われる視点が違う」ことで若年層の悩みがよく起こります。例えば本社に配属になった社員は会社全体の業務が見えやすい一方、地方の業務やお客様の顔が見えにくい傾向があります。また地方に配属になった社員はお客様との接点が多い一方、会社全体の業務が見えにくい傾向があります。

この異なる経験を持つ同期社員が会話をした際、自分が知らない世界を同期が経験していて、「自分のキャリアはこのままでよいのだろうか・・・」とお互いがそれぞれ焦りを感じてしまうことはよく起こります。

入社後の短い期間でお互いそこまで多くのことを経験できるわけではないのですが、同期同士での情報交換が気軽かつ活発になっている現在、以前よりもキャリアに対する悩みが多くなってきているなと感じます。そこで、人事異動という方法以外にも、若い社員のキャリアを促進させられる制度がないかと考えたのが大きな背景です。

もう1点は、仕事に対する「モチベーション」です。当社は従業員エンゲージメントが高く、愛社精神が強い社員が多いと感じています。また福利厚生や研修などの制度がかなり充実していると自負しており、社員からの不満はあまりないのですが、満足度はまだまだ向上できるのではないかと思っています。その満足度を上げる大きなポイントと捉えているのがモチベーションであり、その更なる向上に取り組んだことが背景です。社員が抱える課題点を少しでも多く取り除いていけば、もっともっと社員のモチベーションが上がり、その結果、会社としても成長できると思っています。

――愛社精神がある社員が多いとは素晴らしいですね!今伺った課題を解決する方法が「社内インターン制度」「社内副業制度」ということでしょうか。

はい。そもそも「人財公募制度」は20年ほど前からありました。自身の興味ある部署の業務で人財が公募されている場合には自ら手を挙げることができ、マッチングすれば希望の部署に異動できる制度ですが、この方法では部署も利用する社員も限定的になってしまうため、もっと気軽に人事異動に依存しないキャリア経験ができないかと考え「社内インターン制度」「社内副業制度」が生まれました。

「社内インターン制度」「社内副業制度」を2つに分けたのは、社員のやる気に繋がるニーズが個別の成長度によって変化することに注目したからです。

2つの制度のポイントは、「社員一人一人異なる内発的動機付け(満足度)に対し、いかに焦点を当てられること」と考えています。社員のモチベーションをアップさせるやる気のスイッチは、様々な年齢や成長度の差によりニーズが変化するということに着目し、制度としての選択肢を増やすことで、どの年代にも幅広くチャレンジできる環境を整えたかったからです。

タイプAは主に若年層を想定しています。キャリアに不安を感じるのは他の業務を知らないことが原因であるケースが多いため、色々な部署の業務をまずは知りたい!学びたい!といった意欲をくすぐることができる「社内インターン制度」がマッチしています。これにより、大きくモチベーションが上がっていくと考えています。体験を重視しているので、これからの自分のキャリアを考える上で、体験入学的に気軽に学んでみる感じです。

タイプBは、ある程度キャリアを経験した上で、どんどんチャレンジしたい!成長したい!という社員を想定しています。ただ体験するだけはなく、実際に業務としてミッションを果たすべくチャレンジできるのが「社内副業制度」です。

また、タイプCのように、もっと大きく改革していきたい、新たな事業を立ちあげたい、といった時にも「社内副業制度」を活用することでチャレンジのハードルを下げることに繋がります。

なお「社内副業制度」は、募集の段階で「このような課題を一緒に取り組んでいただける方」とかなり詳しく業務内容を提示します。受け入れる部署としても、業務に必要な知識や経験を学んでもらう余裕がないことも多いため、意欲があってもある程度の条件が揃っている社員でないと、残念ながら応募をお断りすることもあります。社内副業は、結果にコミットしなくてはならないので、その点の重さが社内インターンとは全く異なると思います。

――実際の募集はどのようにして行なっているのですか?

受け入れ部署が「こういう人に来てほしい」という募集を、社内インターンは年に1回、社内副業は募集する業務の発生都度(通年)、必要に応じてイントラネット上に掲載します。社員はその募集要件を読み込み、希望する場合は応募書を記載して人事へ提出します。その後、人事と受け入れ部署で選考を行い、応募者へ結果を通知します。

――どちらの制度も所属している部署に席を置いたまま応募するのですか?

はい。どちらもそうです。
「社内インターン制度」は、在籍できる期間が最大5日間と短い期間になっています。ただし、連続して5日間でなくても大丈夫です。受け入れ部署が「今日は会議があるから来てね」「今日はイベントがあるから来てね」など体験して欲しい日を提示します。

一方、「社内副業制度」は、募集案件ごとに受け入れ部署が自由に期間を設定することができます。応募者と相談し、短縮や延長となるケースもあります。

――インターンや副業を体験して、その後の異動希望に繋がるのであれば良いですね。

体験せずに部署異動となると、実際働いてみてイメージと違ったと思っても、そう簡単には異動できないですよね。

まず「社内インターン制度」や「社内副業制度」で特定の期間だけ働き、この仕事にチャレンジしたいと思えば、人事に異動の希望を出せばよいですし、少し違ったなと思ったのであれば、希望しなければよいわけです。

「自分のキャリアは自分で切り拓く」というビジョンは、入社時から度々耳にするので、他社と比べると、社員がキャリアに悩む時期は早い傾向にあると思います。他社の場合、入社後5年目あたりからキャリアについて悩みだすという話をよく聞きますが、当社の場合は2~3年目あたりからキャリアの悩みが尽きません。

キャリアの悩みを持っているということは、仕事に対してポジティブに取り組もうとする姿勢だと捉えているので、このようなキャリア作りができる土台を構築できたことはよかったと思っています。

――これまで応募者はどれくらいらっしゃいましたか?

「社内インターン制度」は、2019年に試験的に5部署で始めたのですが、2020年はコロナ禍の影響で募集を見送りました。2021年は14部署で募集があり、40名の社員が手を挙げましたし、2022年は11部署で募集があり、28名の社員が手を挙げました。受け入れ部署の数が多くなってくると、より参加者も手を挙げやすいと思いますので、受け入れ部署にも協力を仰ぎながら拡大していきたいと思っています。

「社内副業制度」は、2021年に先行版として本社だけで募集を行い、募集案件は15件でマッチングしたのは18名でした。2022年は年間で合計26案件あり、マッチングしたのは18名でした。今年は1回目の募集が終わり、3案件で6人がマッチングしています。現在はさらに12案件の募集があり、合格者は未定ですが応募者は40名以上きています。

――実際に制度を利用した社員からのお声はいかがでしょうか?

どちらの制度も、利用した社員からは“業務を学べる”、“キャリアが広がる”と、ポジティブな感想が多いです。基本的に興味があるから応募しているので、ポジティブな回答ばかりになるのかなと思います。

受け入れ部署側は、受け入れ体制を作るのは大変という面はあるのですが、それ以上にポジティブな効果があったという部署がほとんどです。

例えば、“本業のメンバーだけでは出てこなかったアイディアがでてきてすごく良かった”という声や、“専門性が高いため業務内容を知らない社員も多く、応募がないかもしれないと当初は思っていたが、モチベーションが高い人からの応募が複数名あった。ポジティブに働いている姿を見て、うちの部署にこんなに興味を持ってくれている方がいるのであれば、もっと業務内容をきちんと伝えていこうと思った”などの声が挙がりました。

――モチベーションが高い人材を見つけるのはなかなか難しいと思うので、受け入れ側も制度のメリットがあるのは良いですね。

そうですね。先程も申し上げた通り「社内インターン制度」は「社内副業制度」と違い、結果にコミットするわけではありません。業務内容を教える止まりになるので、最初は受け入れ部署にとってはメリットが少ないのではないかと思っていました。ところが、実際に始めてみると、受け入れ部署からの意見もポジティブな内容が多いという結果でした。

他にも、“自分が所属している部署の業務内容が、想像していたよりも知られていないことに気がついた”、“営業担当者から現場の生の声が聞けて参考になった”、“自分の部署の業務内容を説明するにあたり業務の整理ができた”、“人に説明することを通してメンバーのスキル向上につながった”など、とてもメリットがあることがわかりました。

――お話を伺っていると、とても良い制度だなと思いますが、制度を作るにあたりご苦労されたことなどはありますか?

「社内インターン制度」を2019年にスタートした際、首都圏から離れたエリアに勤務している社員は参加しづらく、首都圏に勤務している社員を中心に盛り上がる傾向がありました。このままでは、エリア限定の制度になってしまうのではないかと課題を感じていました。

ところが、コロナでテレワークやオンラインが普及しましたよね。そのことにより、インターンや副業もオンラインを前提に進めることができるようになったので、懸念していた課題を解消するチャンスとして「オンラインだからこそ、どこからでもどの業務でも出来る」ということを強調したことで一気に広がりました。今では日本全国にとどまらず海外駐在員からも応募があります。

本社に興味を持っている地方勤務の社員ほど、これらの制度に応募してくれて、オンラインで経験できることにより、エリアを超えて応募できる状態になったのは本当によかったと思います。

オンラインでの体験が中心になりますが、一方で所属している部署が許可をすれば、実際にインターン先や副業先の部署に来てリアルで仕事をすることも認めています。

――今後、この制度をどのように進化させていきたいですか?

「社内インターン制度」は、導入当初は入社3年目から中堅社員に向けての制度としていたのですが、昨年から年齢制限を撤廃しました。

今、シニア層のキャリアの活かし方やリスキリングも重要なテーマになっていますが、セカンドキャリアとして、自分の知識や経験がどこに活かされるのかを試してみる機会を提供することは、とても意義のあることだと思っています。

まだ「社内インターン制度」は若者向けと捉えている社員が多く、50代以上の社員からの応募が少ない状態ですが、もっと周知を行い、ベテラン社員たちからの参加も増やしていきたいと思っています。

「社内副業制度」は、先ほどの表のタイプB(中堅社員で成長したい・挑戦したい層)が多いのですが、今後はタイプC(改革したい層)も増やしていきたいと思っています。

例えば新規事業を立ち上げたいと思った時に、社内で挑戦できる機会があれば、社員は他の企業に転職することなくその思いを実現でき、企画が具体化した場合、本業として取り組むチャンスが生まれます。会社にとっても、社員がモチベーション高く働き続けることができ、新たな価値創造に繋がればお互いWin-Winの関係になります。

――ご担当者様の熱い想いが伝わってきました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。では、最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

現在、日本は少子高齢化が加速しており、企業の採用もどんどん厳しくなってくると思いますし、企業間で優秀な人財を取り合うことにもなると思います。その環境下であっても、社員一人一人の可能性を広げられる制度が充実する企業になれれば、優秀な人財をこれからも獲得し続けることができると考えています。

当社の人財戦略は「多彩な“らしさ”を輝かせ 未来をカイタクするイノベーション集団となる」を掲げています。自律した社員一人一人が仲間達と自らを磨き合い、お互いの“ちがい”を認め、一人一人の強みと専門性を発揮できる環境を整えることが私たち人事部のミッションです。

「社内インターン制度」「社内副業制度」を活性化させて、社員が自分のキャリアを自分で築くことができれば、活躍していく社員が増え続け、その結果が会社の大きな飛躍に繋がります。皆様に期待、そして応援していただける企業で在り続けられるよう、今後も取り組んでいきます。

著者/ライター
高山 一恵
(株) Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP®)
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株) エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。「マンガと図解でしっかりわかる はじめてのNISA&iDeCo(成美堂出版)」など多数の書籍を出版。

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