電子契約ならいらないって本当?
登録免許税や手数料を払う際に貼り付ける「収入印紙」のキホン
不動産売買契約書や株券、為替手形、保険証券などに貼る「収入印紙」。切手と似た見た目だが、額面は切手よりも幅広く、最高10万円のものもある。
日々の生活のなかで収入印紙を見ることは稀だが、何のために必要なものなのだろうか。アディーレ法律事務所の一宝雄介弁護士に教えてもらった。
税金や公的な手数料の支払いに必要な証書
「収入印紙とは、税金の支払いや行政関係の手数料などを支払う際に使用する証書です。例えば、印紙税や不動産登記の登録免許税、国家試験の受験手数料、免許の交付手数料などを納付する際に、貼り付ける必要があります。印紙税法で定められた課税文書には収入印紙が必要で、5万円以上の領収書も課税文書のひとつです」(一宝弁護士・以下同)
印紙税法で定められている課税文書は、次のようなものが挙げられる。
●課税文書の代表例
・企業間契約書
・秘密保持契約書(NDA)
・不動産売買契約書
・土地賃貸借契約書
・金銭消費貸借契約書
・売上代金における金銭または有価証券の受取書
・約束手形、為替手形
・株券、出資証券
・預貯金証書
・保険証券
・工事契約請負書
納付する収入印紙の金額は、文書に記載される契約内容や金額などによって異なる。例えば、不動産売買契約書や土地賃貸借契約書などが含まれる第1号文書の印紙税は、次のように定められている。
●第1号文書の印紙税額
収入印紙はコンビニでも購入できる
不動産登記の登録免許税、国家試験の受験手数料、免許の交付手数料などを支払うにあたって、収入印紙が必要になることもあるだろう。その場合は、次のような場所で購入することができる。
・郵便局、法務局、役所
・コンビニエンスストア
・金券ショップ
・たばこ屋
「ほとんどのコンビニで購入できますが、基本的には200円の収入印紙に限られるようです。郵便局や法務局、役所であれば、必要な額面の収入印紙が確実に手に入るといえるでしょう」
たとえ数百円だったとしても、金銭の代わりとなる収入印紙。間違えて貼り付けてしまった場合や所定の金額を超えて貼り付けてしまった場合には、還付の対象となることもあるようだ。
●還付の対象となるもの
(1)請負契約書や領収書などの印紙税の課税文書に貼り付けた収入印紙が過大となっているもの
(2)委任契約書などの印紙税の課税文書に該当しない文書を印紙税の課税文書と誤認して収入印紙を貼り付けてしまったもの
(3)印紙税の課税文書の用紙に収入印紙を貼り付けたものの、使用する見込みのなくなったもの
「還付の対象となるのは、印紙税の納付のために課税文書に貼り付けた場合です。登録免許税や手数料の納付のために貼り付けた場合は、還付の対象とならないので、間違えないように注意しましょう。ちなみに、貼り付けていない収入印紙であれば、手数料5円はかかりますが、郵便局でほかの額面の収入印紙と交換してもらえます。金額を間違えていた場合は、交換してもらいましょう」
「電子契約では収入印紙が不要」の理由
契約書は課税文書に当たるため、印紙税が発生するが、電子契約だけは例外的に印紙税が発生しない。
「近年、増えてきている電子契約においては、収入印紙は必要ありません。なぜかというと、電子契約では課税文書を作成することがないため、印紙税が課せられないからです」
課税文書の作成とは、印紙税法基本通達44条1項で「単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使すること」とされている。つまり、文書をつくったときではなく、契約内容を紙に記載・印刷し、契約の目的に従ってその文書を使用することが『作成』とされているのだ。
「印紙税法基本通達44条2項では、相手方に交付する目的で作成される課税文書は交付のときが作成時期となり、そこで納税義務が発生するとされています。このことから、電子契約においては、紙の契約書を相手方に交付することがないため、『作成』に当たらず、印紙税は発生しないといえます。ちなみに、電子契約の契約内容を印刷したとしても、その書類は契約書のコピーなので、課税文書には当たりません」
たまに目にする機会がある収入印紙だが、今後、電子契約がますます増えていくと、より一層触れる機会の少ないものになるかもしれない。
(取材・文/有竹亮介(verb))