投資信託のトレンドが分かる!
2023年9月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2023年9月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「約1兆円水準の資金流入超」
流入額は約9,940億円の資金流入超と、2022年12月以来となる約1兆円水準の流入となった(前月は約7,560億円の流入超)。
資産別では、「外国株式型」(約4,330億円)、「国内株式型」(約1,750億円)、「外国債券型」(約1,540億円)の順に資金を集めた。eMAXIS Slimシリーズを始めとする「外国株式型」パッシブファンドへの継続的な資金流入や、「外国債券型」新規設定ファンドが資金を集めたことなどが寄与した。資金流出では、「不動産投信型」(▲約100億円)のみ流出超となった。不動産投信市況の悪化懸念や米長期金利の高止まりを警戒した解約などが影響した。
個別ファンドでは、「外国債券型」の新規設定ファンドである「三井住友DSワールド・ボンド・フォーカス2023-09(限定追加型)」(三井住友DS)(約750億円)が資金流入で1位となった。2位は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(三菱UFJ)(約800億円)、3位は「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ)(約760億円)が続いた。
主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
2.投信市場のパフォーマンス動向
「米長期金利上昇の影響で、全資産でリターンはマイナス」
9月の金融市場は、米長期金利上昇の影響で外国不動産投信、外国株式を中心にすべての資産でリターンがマイナスとなった。
株式市場は米金融引き締めの長期化観測などの影響で米長期金利が上昇し、日米欧の主要株価は下落した。
米国株式は、月前半から月中旬は、堅調な雇用統計や根強い追加利上げ観測などに伴う米長期金利の上昇からハイテク株を中心に売りが優勢となり、上値の重い展開となった。その後月後半は、FOMC開催後に金融引き締め政策の継続観測が強まり、長期金利は一段と上昇し月末にかけて株価はさらに下落した。
日本株式は、月前半は、外国為替市場で円安が進行し輸出関連企業を中心に株価が上昇したものの、軟調な経済指標を受けて日本経済への慎重な見方が強まり上値の重い展開となった。月中旬は、日銀植田総裁が金融政策の早期修正を示唆する発言をしたことから国内長期金利が上昇し、銀行株などのバリュー株を中心に株価は上昇した。東証株価指数(TOPIX)は一時1990年5月以来の高値水準となった。その後月後半は、米長期金利の上昇に伴う軟調な米国株式の影響などから株価は下落した。
債券市場は、日米独金利は上昇(債券価格は下落)した。米国10年国債利回りは、堅調な雇用統計や根強い追加利上げ観測を受けて、月前半から月中旬にかけて緩やかに上昇した。月後半は、米連邦公開市場委員会(FOMC)で2会合ぶりに政策金利が据え置かれるも、2024年以降も政策金利が高水準で維持されるとの観測を背景に、月初の4%台前半から月末では4%台半ばまで上昇した。
独10年国債利回りは、足許の原油高を受けてインフレ圧力が依然根強いことなどが影響し一時3%付近まで上昇し、2011年7月以来の高水準となった。
日本10年国債利回りは、月中旬に前述した日銀植田総裁の発言を受けて2014年1月以来となる0.7%台まで上昇した。その後は米長期金利につられる形で、当月末には0.7%後半まで上昇した。
為替市場は、米ドル・円は円安が進行し、ユーロ・円はやや円高となった。米ドル・円は、米長期金利の上昇に伴う日米金利差拡大から円安が進行した。米国の底堅い景気や根強い追加利上げ観測を受けて、当月はほぼ米ドル全面高となった。ユーロ・円は、欧州中央銀行(ECB)理事会にて10会合連続で利上げが実施されたものの、同理事会で利上げ打ち止めの可能性が示唆されたことを受けて、ユーロは下落した。
これらを背景に、当月はすべての資産でリターンがマイナスとなった。すべての資産でリターンがマイナスとなるのは2022年12月以来である。米長期金利上昇の影響で外国為替市場では円安が進行したものの、円安の上昇率を超える価格の下落となった。特に米長期金利上昇の影響を大きく受けた資産が外国不動産投信である。住宅関連指標も前月から大幅に低下し、外国不動産投信市況の先行き懸念が強まった。
パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「設定本数、設定額ともに前月より増加。設定本数は7年ぶりの最も多い設定」
当月の新規設定は59本と前月(18本)から増加し、設定額も約1,900億円と前月(約590億円)から増加した。新規設定本数は、2016年9月の69本以来最も多い設定となった。新規設定ファンドのうち、限定追加型が11本、新NISAを踏まえた隔月決算型は15本となった。
新規設定ファンドのうち、設定額が最も多かったのは、「三井住友DSワールド・ボンド・フォーカス2023-09(限定追加型)」(三井住友DS)(約750億円)、次いで「GS米ドル建て社債ターゲット2023-09(為替ヘッジなし・限定追加型・早期償還条項付)」(GS)(約240億円)となった。
1位の三井住友DSワールド・ボンド・フォーカス2023-09(限定追加型)は、信託期間が約4年の債券持ち切り運用による限定追加型のファンドで、世界各国・地域の米ドル建ておよびユーロ建ての債券に投資し、原則として対円で為替ヘッジを行う。
新規設定金額、設定本数の推移
最後に、9月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)