普段の買い物にも「社会への投資」という意識を

「新たな投資は『上限』を決めて実験的に」モーリー・ロバートソンからのアドバイス

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テレビのコメンテーターやラジオパーソナリティとして活躍するモーリー・ロバートソンさん。幅広いジャンルに詳しく、独特の視点も併せ持つモーリーさんは、お金や投資に対してどのような考えを持っているのでしょうか。

お金に対する向き合い方を聞いた前編記事では、かなり“堅実派”な一面を持っていることがわかりました。そしてこの後編記事では、「投資」についてのスタンスを聞いてみたいと思います。

「私は株式投資などは行いませんが、自分自身や社会に対する投資という意味では、いくつかのこだわりを持っています」。取材前にこう語っていたモーリーさん。その“こだわり”がどういうものなのか、じっくり聞いてみました。

ハーバード大を3年間休学したときに学んだ「大切な投資」


――モーリーさんは「投資」についてどんな考えを持っていますか。

モーリー:株式投資などはやりませんが、もっと広い意味での投資であれば、2つのことをしています。

1つは、自分自身の生活や人生に対する投資です。自分が一生のうちにしたいことや、求める心と体のありようを考える中で、お金をかけて力を注ぐものは変わってきます。これは大切な投資です。

その意味で、私の人生における最初の投資は、東大を中退した後、ハーバード大学に入学したことだと思います。いまほどハーバードの学費は高騰していなかったとはいえ、当時でも相当な金額でした。ただし、このとき投資したのは私の親ですが(笑)。

――ハーバードでの経験が、その後に生きたということですか?

モーリー:最初はそんなことまったく思いませんでしたけどね(笑)。日本の大学と違って、ハーバードでは1年生から猛勉強、全力疾走をさせられます。図書館に行って、膨大な資料の中から「○○年の判例を調べてこい」と言われたり、新聞の社説を読み比べてどちらが秀でているか議論しろと言われたり。そうこうしていると、だいたい何人かは挫折して休学するんです。

私も2年目を終えたときに3年間休学しました。そして、この決断がとても人生に役立ったのです。これも自分に対する大切な「時間への投資」だったのかもしれません。

――どういうことでしょうか?

モーリー:休学してからは、大学では絶対にやらないことに挑戦しました。前衛的な音楽のライブを見たり、アーティストと交流を重ねたり。自分でもバンドを組みましたね。この時期が自分の視野を大きく広げましたし、いまの人生や仕事にも生きています。

その経験もあり、大学を出た後も自分の専門外のことをあえて勉強してきました。たとえば、ヨガの先生にマンツーマンで教えていただくなど。知らない分野に触れるのは、知的にも肉体的にも、自分の基礎体力をつけてくれるのです。現在も続けている自分への投資ですね。

――最初に「投資については2つのことをしている」とおっしゃっていました。1つはこれまでに話していた「自分への投資」だと思いますが、もう1つはどのようなものでしょう?

モーリー:社会や環境という大きな対象への投資です。みなさんご存じのように、さまざまな地球レベルの問題が起きており、これらに対しては、株式などの金融資産以外でも日常的に環境や地球に投資する姿勢が必要でしょう。

たとえば、日頃から環境に良いものを意識して買うことも地球への投資です。遠くから運ばれたものはその分、燃料を使っているので、地場のものを買うとか。こうした日々の買い物も十分な効果を持っていて、自分の消費行動が社会の悪影響を加速させる可能性もあれば、社会のためになるお店や企業、人への買い支えにもなるでしょう。そういう投資的な意識を持って買い物をしていますね。

資産に余裕が出てきた若者は「次のスキル習得に向けた投資を」


――お金や投資について、若い人はどのようなスタイルを築いていけば良いと思いますか。

モーリー:自分への投資という意味では、20代の若い人はまず「体力づくり」に投資してほしいと思います。若いときは経験もコネもないので、仕事をするにも夢に挑戦するにも、何事も体力勝負になります。運動習慣をつけて、すぐにバテない体を作るのが第一歩でしょう。

一番良くないのは、SNSやネットに依存すること。一日中ネットを見ていると、体も弱くなりますし、メンタルも鍛えられません。なるべく外に出て、少しでも体力をつけることが大事です。

次に、若い人の中でも少しずつ仕事がうまく行って、資産に余裕が出てきた人にアドバイスしたいのは、現状に満足してはいけないということです。いまの環境、たとえば自分の仕事やスキルの価値が、数年後には落ちている可能性があることを忘れてはいけません。

たとえばITエンジニアも、時代の中で求められるスキルはどんどん変わってきました。数年前には求められたプログラムのコードが、いまは別のものに置き換わっています。若い方はそういう未来が自分にも来る可能性をつねに想定して、資産に少し余裕が出たなら、次のスキルを得るための投資をしてほしいと思います。

――お金にせよ、スキルにせよ、新しいことに投資する上では失敗も怖いと思いますが、何かアドバイスはありますか?

モーリー:新しく何かをするときは、失敗しても痛くないように、最初から上限となる「枠」を決めてやることです。いくらまでなら失ってもOKと決めて、その上限に達してダメならやめてみる。まずは限定的に始めて検証し、その中で価値があると感じたら徐々に広げるのがいいのではないでしょうか。

失敗するのは仕方のないことですが、そのときに痛手を負わないように枠を決めておくこと。これが大切だと思いますよ。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2023年10月現在の情報です

お話を伺った方
モーリー・ロバートソン
日米双方の教育を受けた後、東京大学とハーバード大学に現役合格。ハーバード大学を卒業後、タレント・ミュージシャン・国際ジャーナリストとしてTV・ウェブコンテンツを中心に幅広く活躍中。著書「悪くあれ!窒息ニッポン、自由に生きる思考法」も好評発売中。
著者サイト:http://officemorley.com
著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。
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