野村證券「四季報の会」秋号を徹底解説(後編)

提供元:野村證券(FINTOS!編集部)

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野村證券の社内企画「四季報の会」。『会社四季報』(東洋経済新報社刊)を読破して分析した投資情報部のリサーチャーらが、全国のパートナー(個人投資家向け営業担当者)らに現在の日本企業の動向を伝える取り組みで、社内で長年にわたって受け継がれている。今回は「秋号」の前半に続き、後半(銘柄コード6000~9000番台)の解説の一部をお届けする。

【前編】野村證券「四季報の会」秋号を徹底解説(前編)

【6000番台】低PBR企業に対するM&A、脱中国に注目

6000番台の中心となる機械や電気機器では、4000~5000番台と同様に自動車関連の部品や機器を手掛ける企業の業績は堅調に推移しています。特にEVに関連する記述が目立ちました。一方、工作機械などを中心に、中国の景気悪化の影響を受けている企業も多くみられました。足元では、一部で需要の弱さが見られるものの、総じて成長に備えた設備投資への意欲が旺盛だと感じました。

工作機械中堅のTAKISAWA(6121)には、「ニデック(6594)が完全子会社化を目的としてTOB(株式公開買い付け)を企図」とあります。前年のPBRが0.43倍、3年前は0.39倍だったTAKISAWAに対してニデックは約2倍の株価でTOBを開始し、TAKISAWA側もこの提案を受け入れる方針を示しています。

この案件は実質的に、2023年8月に経済産業省が策定した「企業買収における行動指針」に即した最初のM&A案件です。

こうした案件は、低PBR企業の経営者に大きな影響を与えるとみられ、今後このような案件が増加していくか注目したいと思います。

ソディック(6143)では、「柱の工作機械は中華圏の需要減が想定超で大苦戦」とありました。注目したいのは2つ目の見出し「脱中国」です。「生産拠点再編の機運受け、インド、メキシコの販売体制拡充」とあります。西部電機(6144)でも、2つ目の見出しが「リスクヘッジ」で、「中国向け中心の精密機械は東南アジア、北米へ展開模索」とあります。

この2社に限らず、インド、ベトナム、インドネシアなどへの投資が増えてきている印象があります。中国に依存しないサプライチェーンを構築しようと考えている企業が増えつつあると言えそうです。

【7000番台】防衛予算の本格寄与と活況の自動車業界

ここまで見てきた企業でも、自動車関連の部品や機器が好調でしたが、自動車メーカーの業績も大変好調でした。一方、重工メーカーでは防衛関連の受注が好調だったことが印象的でした。

三菱重工業(7011)の見出しは「増額」となっており、「防衛は予算増で受注大幅拡大」とあります。そして、2つ目の見出しが「防衛」で、「スタンドオフミサイルなど防衛・宇宙事業で4~6月で6,491億円受注」とあります。

川崎重工業(7012)の見出しは「一転増益」となっていて、「防衛・民間向けに航空伸長」とあります。防衛予算の増額の影響がしっかりと業績に寄与してきていることがわかる内容でした。

次は注目の自動車業界を見ていきます。日産自動車(7201)の見出しは「増益幅拡大」、いすゞ自動車(7202)も「独自増額」となっており、四季報の記者が独自に営業利益の予想を増額しています。

そして、トヨタ自動車(7203)の見出しも「独自増額」となっており、好調さがうかがえます。

【8000番台】「消費の二極化」と変化の兆しが見えた銀行

アパレルや小売では、節約するモノとお金をかけるモノがはっきり分かれる「消費の二極化」の傾向が見られました。百貨店や高額衣料品を扱う企業と、スーパーや低価格の衣料品店などがいずれも好調です。

三陽商会(8011)の見出しは「上振れ」となっています。かつて国内で「バーバリー」を展開していた企業です。2015年にバーバリーとの契約が終了し、一気に営業利益が下がってしまったのですが、足元の業績は好調です。オンワードホールディングス(8016)も同様に中・高価格帯の製品を展開するアパレルメーカーですが、見出しは「増益幅拡大」です。高額消費が活況なことが、この2社の業績からもわかります。

また、スーパー大手のライフコーポレーション(8194)の見出しは「増額」、マックスバリュ東海(8198)も「上向く」となっていて、スーパーの業績も堅調です。低価格帯のアパレルを展開するしまむら(8227)の見出しも「連続最高益」でした。

次は、金融政策の修正に絡んで注目されている銀行です。三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)はマイナス金利の状況にもかかわらず、最高益になっています。「預貸金利ザヤ拡大」、これは海外の金利上昇で利ザヤが拡大しているということなのですが、国内の利回りも良くなっています。三井住友フィナンシャルグループ(8316)は「法人役務手数料も好調」ということで、利ザヤ以外の収益も稼げるようになってきているようです。

地方銀行も好調です。千葉銀行(8331)は「法人、個人の貸出残高が漸増」とあって、利ザヤが堅調になっています。2つ目の見出しは「利上げ」で、「市場金利の上昇を受け金利更改に本腰、固定の貸し出しの実効金利を引き上げへ」とあって、実際に貸出残高がかなり増えています。富山銀行(8365)の「利回りが改善、貸出金利伸長」、滋賀銀行(8366)の「預貸金利ザヤが反発」など、変化の兆しが見えています。

【9000番台】アフターコロナ、インバウンドの好影響

鉄道各社の堅調な業績が確認されました。

西日本旅客鉄道(9021)の見出しは「大幅増額」となっています。「新幹線の旅客数が想定超える伸び」「ホテルは観光軸に復調」で四半期の営業利益進捗率も45.4%です。東海旅客鉄道(9022)も「独自増額」という見出しに「レジャー需要好調、インバウンドの伸びが想定超える」とありました。

都市部の私鉄もJR各社と同様です。東武鉄道(9001)の見出しは「独自増額」で、ホテルは訪日客需要の回復は想定を上回り、鉄道も行楽など定期以外の利用が増加しているとのことです。小田急電鉄(9007)も「絶好調」で「箱根観光需要復活」とあります。西武ホールディングス(9024)でも「ホテルは訪日客回復で客室単価上昇」とあり、四半期進捗率は40.7%と高くなっています。

プロ野球・阪神タイガースのセ・リーグ優勝で沸く阪急阪神ホールディングス(9042)は「一転増益」で、こちらもホテルの訪日客などが回復しているようです。

電力会社は料金値上げの効果がかなり大きく出ています。ただ「前号比増額」の企業を探してみると中国電力(9504)だけでした。同社は四半期進捗率が82.5%と高く、「復配」の予想となっています。

空運はコロナ禍が落ち着き、活況期を迎えています。日本航空(9201)は見出しが「独自増額」です。ANAホールディングス(9202)の見出しも同じく「独自増額」でした。空運に関しては、四季報の記者は強気で見ていることがわかります。

総じて、日本企業はコロナ禍が終わり、勢いを取り戻してきている印象です。真の実力が問われるのはこれからと言えそうです。

(FINTOS!編集部)

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