子育てにまつわるお金の話

「親の役割は、子どもの知的好奇心を引き出し、目標や夢を応援すること」

米国公認会計士が実践する教育法「子どもの判断を見守る寛容さがカギ」

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成年年齢が18歳に引き下げられたことや高校の授業に資産形成や投資に関する内容が盛り込まれたことを受け、学生に対する金融経済教育の注目度が高まっている。家庭でもできることがあるかもしれない、と思っているパパやママもいるのではないだろうか。

小学1年生と3年生の男の子の親である米国公認会計士・午堂登紀雄さんに、家庭での金融経済教育について聞いてみると、思いがけない回答が返ってきた。

「お金について教えなきゃと思うと肩に力が入りますし、親から教わることは子どもには説教にしか聞こえないので、逆効果になりかねません。大切なのは教育ではなく、子どもとの対話だと思っています」

午堂さんが大切だという“対話”について、教えてもらった。

子どもに与えたいものは「親子の対話」と「多様な経験」


まずは、午堂さんのお宅で実践している子どもとの会話や設定しているテーマを聞いた。

「うちの子は小学1年生と3年生なので、まだ金融の話をしても理解しにくいと思っています。なので、お金にとらわれず、テレビで流れているニュースを取り上げて『どう思う?』と聞くようにしています。例えば、海での事故のニュースを見ているときに聞いてみると、子どもから『なんで溺れちゃうの?』という疑問が出てくるので、『急に深くなって足を取られるんだよ』と説明したり、一緒に理由を考えたりします。そういう会話をしていると、実際に海に行ったときに、子どもが『離岸流があるから、ひざより深いところには入らないんだ』と自発的に危険を回避するようになるんです」

大切なのは、子どもと向き合い、興味を持たせるような促し方をすること。「教えられたことは受け身だから記憶に残りにくいが、自分で考えたり取り組んだりしたことは覚えている」とのこと。

「高校生になったら、奨学金について親子で話してみるのもいいと思います。『奨学金=借金』という論調も高まっていますが、子どもの価値を高める投資とも捉えられます。大卒男性の生涯賃金の平均は2億6190万円、高卒だと2億500万円(※)です。400万円の奨学金を借りて大学に進学したら、400万円の投資で5000万円以上を得られることになります。このような話をしたうえで、子どもに考えさせることが大切です。『借金までして大学に行かせるのはかわいそう』といった、親の価値観や固定観念を押し付けるのは避けましょう」

※出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2022」

子どもの知識や発想の幅を広げていくため、午堂さんは対話以外にも心掛けていることがあるという。

「子どもにさまざまな世界を経験させることです。家と学校の往復だと狭い世界しか知らずに育ってしまうので、休日はいろいろなところに連れていくようにしています。出かけることで子どもの知的好奇心を引き出すサポートをして、興味の芽が出るのを待つイメージです。そして、子どもが夢中になれることが見つかったら、応援するのが親の役割だと思っています。うちの子は2人とも昆虫に夢中なので、千葉県のびーとるランドに連れていったりしています」

さらに、小学生のうちから「高校生になったら起業するんだよ」「高校を卒業したら1人暮らしするんだよ」と、伝えているそう。

「私も妻も自営業なのでビジネスを起こすのが普通というところもありますが、金融経済教育という観点でも、起業がもっとも勉強になると感じています。起業といっても、自分の知識を他人に教えるコンサル業的なことをしたり、SNSで配信して稼いだりといったことも含みます。自分で稼ぐことや独り立ちが当たり前のものとして、育ってほしいのです。下の子は『僕は18歳になったら中国に行って、カミキリムシを捕まえるんだ』って言っていますね(笑)」

「子どもの判断」を親が受け入れることの大切さ


子どもとのコミュニケーションの仕方で、親が意識するべきところはあるだろうか。

「論理的な会話です。知り合いの成功者に幼少期の話を聞くと、多くの人が『親が論理的だった』と話します。論理的な親と会話をすると、子どもも自然と論理的に考えるようになるのだと思います。論理的とは筋道を立てることで、論理的思考が身に付くと、将来の目標に向かって計画を立て、努力できる人になるでしょう」

論理的な会話の一環で、午堂さんは子どもに対しても難しい言葉を使って話しているそう。わからない言葉が出てきたときに、子ども自身が考えたり調べたりする習慣を付けることができるからだ。

「子どもが『その言葉どういう意味なの?』と聞いてきたら、最初のうちは親が教えてもいいですし、ある程度年齢が上がったら『ネットや辞書で調べてみたら』と促すのもいいでしょう」

ここまで教えてもらった対話のなかで、午堂さんが共通して大切にしているのが、「子ども自身に判断を任せ、その判断を親が受け入れること」。

「自分の頭で考えて判断できる大人に育てるには、自分で判断する経験を積ませないといけないと考えています。親に『こうしなさい』と言われて、自分で決める必要がなかった子は、指示待ち人間になってしまうと思うのです。だから、学校で使う文房具などの小さなことでも、子どもに決めさせるようにしています。そして、子どもの考えを否定せずに認める。自分の判断が尊重された子は自己有能感が育ちますが、否定された子は『自分にはできないんだ』と感じ、やらずして諦めるマインドになってしまう。子どものためにも、親の関わり方は重要です」

「申告制おこづかい」で育つ発展的な思考


子どものおこづかいは、家庭での金融経済教育の教材と捉えられることも多いが、午堂家では月額制ではなく申告制にしているという。

「子どもが『お金が必要』と言うときは、その理由をプレゼンさせて、その都度あげるようにしています。プレゼンさせることによって、なぜ必要なのか考えるようになりますし、そのお金で買ったものを大事にしてくれます。息子がNintendo Switchを欲しがったときは、『友達と一緒に遊べるし、マインクラフトで創作もできる』というプレゼンをしてくれたので、おこづかいをあげました。雨の日は服のなかにSwitchを入れて、『濡らさないようにしなきゃ』って大事にしていますね」

ここで重要なのは、プレゼンの内容が『Switchが欲しいから』といったように、きちんとした理由がないときにはおこづかいをあげないというメリハリをつけること。

「プレゼンの内容によっては却下、再チャレンジのときもあります。特に1万円を超える高価なものは厳しくしていて、子どもにはタダではもらえない、努力してこそゲットできるものと思ってもらいたいです。今後『スマートフォンが欲しい』と言ったときに、どのようなプレゼンをするかが楽しみであり、悩ましくもあります(笑)」

一般的には「おこづかいを月額制にすることで、お金の使い方が身に付く」と言われることが多いが、午堂さんが申告制にしている理由は、別の観点にあった。

「決まった金額のなかでやりくりする力も大切だと思いますが、私はそれ以上に『足りないから貯金して待とう』とタイミングを逸する発想になるのは避けたいと感じたのです。仮に留学費用が200万円かかると想定したときに、『貯めるのに2年かかるから、留学を遅らせよう』と考えるのではなく、『教育ローンを借りて留学し、その成果で稼いで返済しよう』という発想を持ってほしい。だから、欲しいものがあったときに、努力をすれば手に入る申告制にしています。家庭によって考え方は変わると思いますが、午堂家ではこのように実践しています」

子どもの将来を考え、接し方を工夫している午堂さん。大切なのは、一方的な教育ではなくコミュニケーションだ。子どもとの日々の会話などを振り返り、改めてどのような人に育ってほしいか、考えるきっかけにしてみよう。
(取材・文/有竹亮介(verb) 撮影/鈴木真弓)

お話を伺った方
午堂 登紀雄
米国公認会計士。中央大学経済学部卒業後、東京都内の会計事務所、ミニストップ本部を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルに経営コンサルタントとして勤務。2006年に不動産仲介を手掛けるプレミアム・インベストメント&パートナーズを設立し、2008年にはボイストレーニングスクール「ビジヴォ」を開校。個人投資家、ビジネス書作家、講演家としても活動。著書に『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』などがある。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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